見出し画像

ショートショート構想中|グロス

記憶にある限り、彼女からもらった、恐らく最初で最後になるであろうまともなプレゼント。彼女はいつも、私の期待を裏切る贈り物を、誕生日はもちろん、なぜか日頃からくれた。

彼女のプレゼントは多くの人が想像するような「わあ~」となるようなものじゃない。例えば、マクドナルドでもらえるハッピーセットとか、フエラムネのおまけとか、がちゃがちゃの中身を抜き取ったカプセルだけとか。夏になると、2日に1回のペースでセミの抜け殻をくれる。まるで小学生だ。

だけど私の中では、何がもらえるかはそんなに重要ではなかった。

それよりも、彼女がからもらう、ということが私の中で大きな理由を占めていた。それがわかったのは、きちんとした友人から、きちんとしたデパコスのアイシャドウをもらったときに、「ああ……」と思ってしまったからだった。

私はデパコスのアイシャドウよりも、彼女がくれるセミの抜け殻を、スポンジを敷き詰めた彼女お手製の箱の中に1匹ずつコレクションするほうが心が躍った。フエラムネのおまけを空いたガチャガチャのカプセルに入れて、飾り棚にインテリアとして飾った。その部屋が好きだった。

私は一度だけ、なぜ彼女がなんでもない日に、そんなにいろんなものをくれるのか、その理由を聞いてみたことがある。その日は、3日前に当たったというガリガリ君のアタリの棒を私にプレゼントしてくれた。

「絶妙に嬉しいけど、きたな「きたなくない」

「食い気味」

「私は、こんな木の棒に洗浄力のJOYを使ったんだよ」

「じゃあ、まあ……」

「もっと喜びたまえよ」

「いやに上からね。ていうか、なんでいつもなんでもない日にいろいろくれるの?」

「そんなの」

あげたいからに決まってる、と彼女は言った。あげたいから。上げたいから?

「好感度を?」

「あんたに私の好感度をあげてどうするんだい」

「いつか、この0.1ぐらいの恩を10にして何かを要求されるんじゃ」

「んなわけあるかい。なぜか私はあんたに、何かを贈りたいんだよ。それはどうしてなのか私もわからない。ただ、あげたい。ただ、渡したい。そうしたい、という衝動に近いのかもしれない」

(続く)


”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。