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「成分表」を読んで、私の成分を見つけてみる

本の話が多くて恐縮なのだけれど、今読んでいる本について書かせてほしい。

私が今読んでいるのが、漫画『あたしンち』の共作者にして俳人、漫画家のオットでもある上田信治さんのエッセイ本。

1章、たった900文字。400字詰め原稿用紙2枚ちょっとの上田さんのエッセンスが59章並んでいるエッセイ集だ。

この本はCDでいうジャケ写買い、つまり表紙とタイトル買いした本だった。表紙のマヨネーズが「なんかいいな」と思ったし、そのマヨネーズカラーの表紙も「なんかいいな!」と思った。

それに昔、私の実家にはお母さんが好きだったからあたしンちの漫画をところどころ持っていた。ところどころ、というのは全巻揃っていたわけじゃなくて、1巻~3巻はあるのに4巻がなかったり。次の5巻はあるのに、その次が7巻になっていたり、というところどころで持っていた。

おでこがひろくて怪獣みたいな髪型のお母さんと、何も話さないぼーっとしてるお父さん、娘のみかんと、弟のゆず、4人家族が織りなすハートフルコメディ。

そんなあたしンちの共作者という帯にも惹かれた。

読み始めて2日目。「なんかいいな!」が「買ってよかった!!!!」に変わっている。

どんなエッセイもそうなんだけど、私にもあったような出来事、当たり前すぎる出来事がずらずら書かれていてとてもいい。書かれている出来事は当たり前。とくに驚くようなことがないし、とても日常的。でも、当たり前すぎて、私はそんなことに気づけていない。「あ~あるある」と思うのに、私はそれを見過ごしてしまっていたことに気づかされる。

それから、この上田さんのエッセイは上田さん独自の世界の見方が面白い。

一番初めのエッセイが「泡」というタイトルなんだけど、一瞬のきらめきみたいな話が出てくる。

新社会人になって部署の人たちとした会話で(会話内容は忘れてしまったけれど)げらげら笑った上田さんは、先輩から「こういうとき、生きてて良かったって思わない?」と聞かれてうまく答えられなかったのだという。でも今思うと、先輩が言っていたことはほんとうにそうで、どうしようもなくげらげら笑って一瞬しかない泡のようなきらめきがはじけていた、という話が1章目に出てくる。実はここにもうひとつ、泡の話が出てくるのだけれど、「あ~わかるな」なのだ。

痒かった背中が掻かれた、ではなくて、書かれた感覚。

あ、なんか今ちょっといいことを書いてしまったような気がするな。

今、この上田さんの「成分表」を読みながら「いいな」と思った章のページ上を折りっとしている。この折りっとが私の「いいな」の結晶になると思う。

”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。