探しもの

夢の中で、何かを探していた。
最初に追いかけていたのは頭にネズミをのせた虎であった。
しかし、その先に何か大切なものがある気がして必死になって虎を探し続けた。

ついぞ虎は見つからなかった。
目が覚めて、なんだか不思議な夢を見たものだと思いながらその日を生き始めた。
部屋の片付けをしていた時、ふと夢の中で私が探していたのは頭にネズミをのせた虎などではなく、今春旅立った愛犬であったと気がついた。
夢の中でモヤモヤとまとわりついていた曖昧な喪失感が、急に形をもって向かってきた。

手遅れの真実を知った私は、蓋をしていた、彼に会いたいという思いを宥めつつ、目を閉じてその形をそっとなぞった。

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