【歴史小話】文字の偉大さ【超短編】
ムスタファ=ケマル(ケマル=パシャ)
トルコ共和国、初代大統領(在任1923〜38年)
〔Mustafa Kemal(1881〜1938年)〕
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第一次世界大戦前から、既に弱体化していたオスマン帝国は西欧列強から「瀕死の病人」と揶揄されていた。
当然、第一次世界大戦という未曾有の危機の前に為す術もなく、亡国も秒読みであった。
そのような危機の中、立ち上がったのがムスタファ=ケマルである。
彼はオスマン帝国を打倒してトルコ共和国を建設し、諸改革を行ったトルコ革命を指導した。
これにより、トルコは亡国の憂き目を回避したのである。
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彼が行った諸改革には、政教分離や文字改革(ローマ字採用)が含まれる。
この時行われた近代化政策・政教分離によって、今でもトルコはイスラーム国の中では最も世俗化した国となっているのだ。
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本日注目したいのは、ムスタファ=ケマルが指導した文字改革(ローマ字採用)である。
文字改革とは、即ちアラビア文字を廃止してローマ字へ転換したことである。
この狙いは国民の識字率を上げることであった。
アラビア文字は難解で、自分の名前を書くことはおろか読むことも出来ない国民が大勢いたのだ。
それに比べローマ字は、造りが簡単で覚えやすいので採用された。
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ムスタファ=ケマルは、自ら黒板を片手にローマ字を教えてまわった。
〔文字を教えるムスタファ=ケマル〕
彼は訪れた場所で民にローマ字を教えると、覚えのいい人を黒板の前に立たせ、自分の名前を書かせた。
今まで自分の名前すら読めなかった人が、わずか30分たらずの授業で自分の名前を書けるようになる。
これに人々は歓喜し、興奮した。
自分たちも学びさえすれば、文字を読み・書けるようになるのだと。
人々はこぞって文字を学んだ。
こうして文字改革は成功し、トルコは近代化への大きな一歩を踏み出すこととなった。
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人は機会があれば誰しも学び、成長したいという想いを抱いていることの証明であろう。
文字はその入り口である。
(終わり)
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