見出し画像

子どもは国の発展のための数字合わせの道具じゃない。

政治家というのは「失言しかしない生き物なのか?」と言いたくなるほど、毎度こういうニュースが出ますが…。

自民党の二階幹事長が「産まない方が幸せなんて考え方は身勝手」的なニュアンスの発言をして物議を醸しました。

この発言、またメディアが都合のいいところだけを切り取って悪意のある報道をしたのではないかという声もありますが、全文読んでもそのまんまんでしたね。

もともとは、「自民党と政府が一体になって、早く結婚して早く子どもを産むように促進してもらいたい」という質問に対する答えのようです。

二階幹事長:大変、素晴らしいご提案だと思います。そのことに尽きると思うんですよね。しかし、戦前の、みんな食うや食わずで、戦中、戦後ね、そういう時代に、「子どもを産んだら大変だから、子どもを産まないようにしよう」といった人はないんだよ。この頃はね、「子どもを産まない方が幸せに送れるんじゃないか」と勝手なことを自分で考えてね。国全体が、この国の一員として、この船に乗っているんだからお互いに。だから、みんなが幸せになるためには、これは、やっぱり、子どもをたくさんを産んで、そして、国も栄えていくと、発展していくという方向にみんながしようじゃないかと。その方向付けですね。みんなで頑張ろうじゃないですか。食べるに困る家は実際はないんですよ。一応はいろいろと言いますけどね。「今晩、飯を炊くのにお米が用意できない」という家は日本中にはないんですよ。だから、こんな素晴らしいというか、幸せな国はないんだから。自信持ってねという風にしたいもんですね。

ツッコミどころはたくさんあるんですが、毎度すぎてあほらしいので、いちいち指摘するのはやめます。

ひとつ言いたいことは「子どもを産まない方が幸せ」と言われちゃうような政府を作ったのはあんたがた政治家じゃないのか?ということ。

だからって誤解しないでいただきたいのは、こういう言葉尻を責めたてて、本質とは違う議論をしがちな日本の野党とは違いますよ。

以前も書きましたが、「貧乏子沢山」なんてのは事実と反しているわけでして、今は経済的に余裕がないと子どもを2人以上産めないのですよ。そして、おかしなことに裕福であればあるほど子どもを産まなくもなっている。

上記の記事の結論ですが、引用します。

夫婦それぞれ、それこそ夫婦の数だけ事情はあるし、環境も違えば、子どもに対する思いや考えも様々でしょう。「たくさん子を産んだ人間だけが偉くて、産まない人間は価値がない」なんてことはないんです。


ですが! こういう発言にも賛同者というものいるもので、

「産むも産まないも自由だ」とか「産めは無責任」も結構ですが、しかし産まない幸せ語る人も老後は誰かが産んだ子供たちに支えられて生きていく訳です。お忘れなく。

これ、この人だけではなく、巷でよく言われることですよね。要するに、フリーライダーを許さない思想。言いたいことはわかりますが、でもそれって、結局「家族が家族しか頼れないという究極の自己責任社会」を目指すことになってしまい、社会というもの自体の存在を無意味にすることと一緒じゃないのかな、と思うわけです。

血のつながった自分の子だけしか頼れない社会なんて社会じゃない。コミュニティとは言えない。

子のあるなしに関わらず、それこそ未婚者であっても、私たち大人はすべての子どもたちの未来に責任があります。「将来、自分を支えてもらうために子どもがいる」なんて古い昭和的な発想は捨て去るべきです。自分たちの老後のために子どもたちは機能として生まれてくるわけじゃねーぞ、と。むしろすべての大人が、すべての子どもたちを支える社会であるべきではないでしょうか。

もうひとつ、二階氏の発言には間違いがあります。この部分。

食べるに困る家は実際はないんですよ。

本当にこの人は政治家なんだろうか?事実、年収100万円未満の世帯収入で暮らしている家が6%もいます。数にしたら300万世帯です。年収100万未満ということは、多い人でも月8万円程度しかないということです。

単身でもきついのに、これで、一人親と未成年の子世帯も大勢いるわけです。成長期なのに、お腹いっぱい食べられない子どもたちがたくさんいることを忘れてはいけないと思います。

どうしてそういう事態になるかというと、貧困の一人親世帯のほとんどは若年層で結婚出産したあげく、経済的理由(夫が働かないなど)で離婚した場合がほとんどです。

子を産めというのはいいですが、産んだだけで終わりじゃない。むしろ、育てることの方が大変なわけです。産め産め言う前に、今生きている子どもたちをちゃんと育てる。優先されるべきはそっちです。

子どもは国の発展のための数字合わせの道具じゃない。



長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。