米津玄師の服・靴・アクセサリーは何を表現しているか?
「米津玄師の歌詞を因数分解して分かったこと」<第18章>
*プロローグと第1章〜17章は下記マガジンでご覧ください。
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米津玄師がマスメディアに登場するたびに、纏っている衣装が話題となるが、それはスタイリストが用意したものだ。よっぽどのファッショニスタか私服へのこだわりが強い人を除いて、ほとんどの芸能人がそうであると言って過言ではないだろう。
基本的にはリースだが、本人が気に入れば買い取ることも、ブランドやスタイリストから提供される場合もある。
モデル並みのスタイルに、レアで高額なハイブランドでも簡単に手に入る人脈と経済力があれば、ゴリゴリのファッショニスタと化しても不思議ではない。しかし、私服は気に入っている服を何年も何回でも繰り返し愛用しているようだ。
特にこのカニエウエストブランド「YEEZY」のニットは2017−18AWコレクションのモノだが今なおヘビロテ中だ。
そもそもファッションへの興味関心は高い?低い?
米津は「アウトフィット(服や靴など身に付けるもの全般)」関連の言葉を14曲の歌詞に使用している。
靴が5回、服が5回、アクセサリーが2回登場し、裾や袖など、服の一部分を表す言葉も使われている。
靴はだいたい脱げている
オシャレは足元からと言うことで、まずは「靴」から見てみよう。”スニーカー”や”ブーツ”、”ハイヒール”など、靴の種類には一切触れず、ただ「靴」と言う表現が4回出てくる。
そして、その全てが「脱げ落ちて」いる。
靴を片方 茂みに落として
探し回った
(灰色と青)
片っぽの靴脱げて
どこかに消えた
(ディスコバルーン)
靴が脱げ落ちて夜の魚に
食べられた
(笛ふけども踊らず)
ガラスの靴も
似合わなくて
(シンデレラグレイ)
歌詞では言及していないが、シンデレラのガラスの靴と言えばお城に落としたものである。
「はしゃぎ過ぎていたり」「酔っ払っていたり」良くも悪くも精神のバランスが崩れた状態を「靴が脱げる」と表現している。
米津自身は「サンダルが好き」とか、「靴下が嫌い」と言う通り、友人宅や飲み屋の座敷で裸足でいる写真をよく見かける。一方で、2015年にはラジオで「靴を集め始めた」とも発言しており、ケンドリックラマーモデルのスニーカーやFENDIのエスパドリーユなど、一癖あるデザインがお気に入りのようだ。
ワゴンで2足半額のコンバース(TeenageRiot)は買ったのだろうか?w
アクセサリーは日本語で
また、米津と言えば、いつもオシャレなピアスを耳と鼻にしており、ネックレスやブレスレットもよく着用している。
しかし、歌詞に出てくるアクセサリーはわずか2つ。
“唐紅の髪飾り(フラミンゴ)”と“枯れた井戸の縁にあった見知らぬ首飾り(旅人電燈)"だけだ。曲全体が和テイストの「フラミンゴ」、宮沢賢治から着想を得たと思しき「旅人電燈」だけに、あえての日本語なのだろう。
ラブソングにありがちな「指輪」や「リング」は一回も使われていない。本人はFlower Wall リリースの頃に、かなり太いリングを左手の人差し指と中指にはめている。
服はサイズが合っていない
NYLONのインタビューで「細身のものとかジャストサイズのものを着るのがすごい嫌だったんですよ。それを着ると丈が足りない感じになるんです」と語った言葉は歌詞にも反映されている。
袖丈が覚束ない夏の終わり
(灰色と青)
袖の足りない服を
まだ着続けている
(懺悔の街)
「自分の成長スピードに合ってないものを着ているような、貧困に見える感じになる」と本人は語っていたが、歌詞にすると切なく淡い郷愁を醸し出す。
「袖」という言葉はまた、こんなロマンチックな歌詞にも溶け込み甘い香りを放っている。
解れた袖の糸引っ張って
ふっと星座を作ってみたんだ
お互いの指を星として
(orion)
「”あやとり”のことですよ」とボソっと照れたように呟いた米津の声が蘇る。この情景描写はどこから生まれてきたのだろうか?実体験だとすればあまりにもピュアで可愛らしく、創作だとすれば信じられないほどに美しい。
”PLACEBO”の「袖が触れてしまった」は、”袖振り合うも他生の縁”だ。
歌詞に使われた具体的な服のアイテムは「スカート」「レインコート」「シャツ」の3種類である。
自分の姿形が嫌いで「シルエットが隠れる、オーバーサイズのもので自分を隠すというか。(中略)ただ、ここ最近はなんでもいいじゃんって感じにはなってるんですけど。」と語っていた米津玄師。
30歳を迎えた今、大人っぽいスーツをこんな感じでサラッと着崩してもらいたいものだ。きっと似合うと思う。
セリーヌ オム 2021SSコレクションより
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