笑う米津玄師に福来たれ。「喜怒哀楽」の心もよう
「米津玄師の歌詞を因数分解して分かったこと」<第11章>
*プロローグと第1章〜10章は下記マガジンでご覧ください。
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アイドルのアー写には多いが、J-POPミュージシャンのアー写で極端に少ないのが「笑顔」だ。多くのミュージシャンやバンドがシリアスな表情を浮かべる中で、星野源や瑛人のように爽やかな笑みが眩しいアー写は希少だ。
米津玄師も例外ではなく、「挑むような鋭い視線」「遠くを見つめる横顔」「物憂げに俯く姿」。。。そのニコリともしない無表情は、男性アーティスト撮影のフォーマットを忠実にトレースしている。
だからこそ、感電のMVでいきなり大写しになった満面の笑みはメガトン級の破壊力で多くの視聴者を撃破した。おそらく公式の画像・映像で笑顔を披露したのはこれが初めてだろう。
米津と言えば、初めてのテレビ出演だった紅白歌合戦で、一言挨拶しただけで「米津さんが喋った!」と驚かれ、苦笑いした顔が印象的だったが、、
歌の中ではめちゃめちゃ笑っていた
米津の歌詞のなかで喜怒哀楽などの感情を表す言葉は述べ255回使われている。全88曲の集計なので単純計算で1曲あたり約3回使っていることになる。
その中でダントツで多いのが、微笑む、ゲラゲラなどの関連語含む「笑う」で、全体の64%に当たる56曲で述べ85回も登場している。
中には「笑えない」「作り笑い」などネガティブな意味合いの言葉も含まれる。
あくまでも私の解釈だが、diorama収録の5曲で使用している「笑う」は、屈託のない笑いとは言い難い。
Caribou「笑えてくる」=皮肉
首無し閑古鳥「笑って見せてみろよ」=挑発
ゴーゴー幽霊船「急に笑うので」=幻惑
心像放映の「笑うのだ」=寂寥
乾涸びたバスひとつの「笑った」=孤独
明るく楽しそうに笑っている描写はBremenに多く、「笑い合う」と言う愛情や友情が感じられる言葉が実に5曲に登場する。
喜怒哀楽で言うと「喜」「楽」に当たる「嬉しい」「楽しい」関連の言葉に前述の「笑う」と合わせるとポジティブ感情の表現ワードは述べ102語にのぼる。
心から楽しそうで嬉しそうな笑顔というものは、老若男女、国籍、顔立ちの好き嫌いを超えて、人の心を無防備に開放する。
時に「君のその笑顔で 絆された夕暮れ」とPLACEBOでも歌っているように、一瞬で身も心も縛られてしまうほどの危険性を孕んで。
怒らないけど、悲しくて寂しくて泣いている
「怒り」と言う言葉はわずか5曲のみ。それも2017年2月を最後に姿を消した。
米津は子供の頃の自分は「誰かの思い通りに生きてなんかやるものかという怒りで日々を生きていた( Cut誌2017年9月より)」と手記に綴っている。20代前半頃のTwitterでも何かと怒りを滲ませた呟きが目に付く。
さほど怒りは感じなくなったのか?
あるいはコントロールしているのか?
怒りが消えた後に、関連用語含め「寂しい」(19回)、「虚しい」(9回)などの寂寥感、虚無感を表す言葉がやや増加傾向にあり、STRAY SHEEPでは5曲で「寂しさ」、3曲で「虚しい・詫びしい・やるせなさ」を使用している。
「ひまわり」の歌詞にある「侘び戯れ(ワビザレ)」とは”困り果てた末にする、気をまぎらすための冗談ごと”の意であり、蜻蛉日記にの一節で使用されている。空っぽの心を埋めようとして埋まらない虚しさが4文字から伝わってくる。
鳴き声 かんかん照りの街路で 侘び戯れ
平安時代の古典を、あの激しいロックチューンに乗せてくるセンスはやはり並の才能ではない。
喜怒哀楽の「哀」にあたる「悲しい」は35回、「憂い」は8回、「泣く」は29回、それぞれ関連用語も含み述べ72回使用されている。
「笑う」の85回よりは少ないものの、寂しい・虚しいを足すと100回、さらに「涙」が14曲で登場することを加味すると、ネガティブな感情表現の方が若干多いという結果だった。
男は女の涙に弱いというけれど
米津の歌詞に出てくる女はあまり泣いていない。アイネクライネの彼女が生まれた瞬間に泣き喚いたくらいだ。
米津玄師は役者ではないので、今までもこれからも、彼の涙が一般に公開されることはないだろう。彼はどんな時に泣くのだろうか?
感動や喜びの涙であるようにと願いたい。
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