コンテンツビジネスの今後に関して『AKIRA』から学べるもの
映画に埋もれて生きていたい、清田です。
基本的には数字を見て情報を分析したいタイプなんですが、好きなコンテンツについて書くとなると、分析よりも熱量が全面に出てしまいます。
そう。今回は、AKIRAについて書きたすぎる。
大学に入ってすぐの頃に初めて映画を見たんですけど、金田がカッコよくて、あのバイクに乗りたくて、街の光と影に生命を感じて、鉄雄は自分だ!なんて思って...
もう到底noteでは書き切れないぐらい細かく語りたいんですが、文字数の都合上「海外の反応」を「映画版の話」のみに限定します。
AKIRAは今の僕たちに、どんな学びを与えてくれるものなのか。
1. 記事の前提
ご存知の方も多いとは思いますが、まずは簡単にAKIRAの概要から。
AKIRAは1982-1990年に週間ヤングマガジンで連載されていた大友克洋原作の漫画。1988年には大友自らが脚本と監督を担当し映画化。崩壊した近未来の「ネオ東京」を舞台に、超能力者をめぐる軍と反政府勢力の争いを描いたディストピア的SF作品。「サイバーパンク」と呼ばれるジャンルの代表的な作品であり、その後の日本アニメの海外への伝わり方を変えた作品の一つ。
概要の通り、AKIRAの最大の功績は海外への影響でしょう。
前の記事でも書いたのですが、僕自身が海外に邦画を持ってくインターンをしてた経験があり、そこでも新作映画の売り込みをしてると大体「〇〇と〇〇を足して2で割ったような作品だよ」みたいな説明をするのですが、AKIRAなら大体伝わる。伝わるし、いい反応が返ってきます。
実際ファンはまだまだ多いです。その証拠に今年ビッグニュースが...
ハリウッドで実写映画化 & 2021年公開決定!!
デジタルリマスター版発売決定!!!
ヤバいヤバいヤバいヤバい。 ヤバい!
めちゃめちゃ楽しみです。絶対見ます。
(まあ発表から2ヶ月後くらいの「やっぱ延期」という報道に大落胆させられた訳ですが...)
とにかく、何故AKIRAがそんなに海外で評価されたのかを考えていきます。
2. 30年前に海外で流行った理由
i. 大人向けANIMEの衝撃
ii. 日本の近未来イメージ
iii. とんでもないカッコよさ
この3つの観点から読み解いていきます。
本当は他にも「VHSの浸透」とか「フォーディズム Vs. トヨティズム」とか色々語りたいのですが、文字(略
まず一番大きいのが他のアニメ作品との差別化でしょう。
ちょっと調べてみたらAKIRAの前は『鉄腕アトム』とかの手塚治虫作品が渡米してるらしいです。
これはアメコミ的な勧善懲悪の概念が分かりやすかったので、比較的スムーズに受け入れられたそうです。
ただ、やっぱりあまりに分かりやすい物語、デフォルメされたキャラクターは「子供向け」のレッテルを貼られて上の年代にはイマイチ評価されませんでした。
そんな中、AKIRAがスゴイのは、登場人物がどこか汚くて善悪が分かりづらいんです。
金田は鉄雄を倒さないと話は完結しないのに元々二人は友達だし、アキラも脅威だけど、彼をそうさせたのは軍の大人たちです。
「大人が一番悪い」みたいな発想ってどうしたってティーンから上の世代は共感してしまうのに、そこに抗う術があんまり無い事も知ってるんです。
この悔しさを登場人物に託して見ていると、没入してしまいます。
しかもこれを当時では異例の10億円という制作費と、他のアニメ制作が滞ると言われた程の一流のアニメーターを結集して作っているため、映像のクオリティが高い。
ネオ東京の高層ビル群が無機質で恐ろしいのに、どこか荘厳で美しい。
ちょうどバブル期のど真ん中だったので、おそらく海外から日本はこう見えてたのでしょう。
「無機質なエコノミックアニマルが街に美しさと悲しみを産んでるに違いない。でもやっぱりジャパンのテクノロジーはすごいな、あのバイク見たかよ。」みたいな。
元々SFは人気のジャンルなので、この近未来的な世界観がバブルの日本によって一定の説得力を持たされた訳です。
あのバイク、あの音楽、あの金田、どれも説得力があって恐ろしく、だけどめっっちゃカッコいいんです。これはもう考察とか関係ないんですけど、世の中の大半の鉄雄たちはあの世界観と金田に憧れたはずなんです。絶対!
実際にAKIRAとその作品世界に影響を受けたって公言している作家は多くて、簡単に並べただけでこんなにいます。
映画監督 / スティーブン・スピルバーグ (ジョーズ / E.T.)
映画監督 / ジェームズ・キャメロン (タイタニック)
映画監督 / ジョージ・ルーカス (スターウォーズ)
映画監督 / ギレルモ・デル・トロ (シェイプ・オブ・ウォーター)
俳優 / レオナルド・ディカプリオ (ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド)
歌手 / カニエ・ウエスト (Stronger)
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こう見るとかなり壮観なリストになっています。
それも上記の人物だけで、AKIRAが様々な生活レベルであったりスタンスの人間に影響を与えていることが分かります。
また、SF全体の特徴に、比較的幅広い層が共感出来るというものがあります。
良質なSF物語がアニメの力によって更に表現の幅を広げ、ハリウッドにも負けない作品となったのです。
3. 今後のコンテンツビジネスはAKIRAから何を学べるか
さて、ここからが本題になります。
これほど人気を集めたAKIRAから学ぶことは多いとは思いますが、あえて一つに絞るとするならば「潜在層へのリーチの重要性」でしょう。
当たり前のようですが、やはりAKIRAの功績により日本のアニメ市場が海外に開き、それが今や国を代表する産業となっています。
現状顕在化しているビジネスは正直誰にでも思いつけるものなので、儲かるかもしれませんが、ベンチャーでやっても業界大手に追いつくのはかなーり難しいです。
例えばフーモアがイラスト付きカップのタピオカ屋を原宿に開いたら瞬間的には売れても、長期的なビジネスにはなり得ません。半年もてばいい方、ぐらいの企画です。
ですが例えばこれを巣鴨で開いたら意外と長持ちするかもしれない。
いや、落ち着いてください。例えばの話です。実際に巣鴨にはタピオカ屋は一店しか存在していないため、マーケットとしては微妙でしょう。
難しいのが単純に裏をかくだけじゃなく、ちゃんとハマるかもしれない理屈とマーケティングプランが必要だという点です。ワンピースだって国外に出たらサンジはタバコの代わりに飴を咥える、みたいなとこです。
ただ一方分かりやすいのは、顕在化していない層もモノが良ければ文脈を無視して気に入る場合が多々あります。
自分の話に戻りますが、映画祭などで営業をしているとやたら売れる映画があるんです。お国柄とか関係なく、面白いから売れてるとはっきり分かる作品です。
そういった作品で少しずつテストしていくことは可能だと思っています。
最低限回収できるラインの作品で、です。
もし潜在層へのリーチで事業領域の拡大を目指すのであれば、無駄打ちでもクラシックと言われる作品でテストして、マーケットが存在するのかを確認する。コストは掛かりそうですが、VOD時代ですよ!
テストしたい地域の広告費を少し上げて、市場調査とすることは無謀ではないのかなと感じます。
実際ディズニー・ピクサー以外は全くアニメコンテンツを見ない人も多いかと思うので、まだまだ市場はこじ開けられるのでは、なんて思ってしまいます。ビジネスとしてはニッチな層を取りに行く事にコストを割くのが難しいのも分かるのですが...
そのニッチって、本当にニッチですか?
大人向けANIMEを開拓してくれたAKIRAに見習って、市場規模の試算を書き直すぐらいの事がやってみたいです。
あーあ、いっそ国がポケモンとマリオとサンリオとAKIRAに全振りしてくんないかなぁ
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