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ミツバチ?スズメバチでしょ

ーハチの一刺し(番外編)

「ハチの一刺し」という言葉について調べていくうち、小ネタが思い浮かんだので書き留めておく。いつか披露する機会があるかもしれない。ただ、うんちくを傾けているようにも受け取られそうなので、話せるのは限られた人だけになるだろう。例えば、奥さん。話を聞き流すのが上手な人くらいがちょうど良いかもしれない。

前回の話:「持っている人

語源

この言葉は流行語にもなった。「ハチは一度人を刺したら死ぬと言われています。今のわたしはハチと同じ心境です」という元首相・田中角栄の秘書官の前妻、榎本三恵子の記者会見での発言が語源だ。背景には、戦後最大の疑獄事件とされるロッキード事件がある。

「(榎本は、裁判で)田中被告側が必死に無罪を主張している最中、検察側証人の切り札として東京地裁に出廷し、重大発言を繰り返した」(夕刊フジ)。田中被告の5億円受領を裏付ける内容についても証言し、その覚悟をマスコミに問われ、"ハチの一刺し"発言につながったようだ。

画像2

不適当

千葉県立中央博物館によると、「一度刺したら死ぬハチはミツバチのみ」とのこと。榎本は自分をミツバチに例えたかったかもしれないが、"刺す"ような重大な発言を繰り返したことを踏まえると、適当ではない。刺しても死なないスズメバチなどがふさわしい。

ましてや、榎本はその後、突然雑誌に自身のヌード写真を披露したり、タレントや女優に転身してバラエティ番組やテレビドラマに出演したりするなど、さまざまな話題を提供したそうだ。ミツバチのように死ぬどころか、ますます存在感を発揮したと言える。

ミツバチ

見方によれば、ミツバチは可愛らしいところがある。体長も小さいし蜂蜜も美味しい。決して害をなすとは思えない。榎本はそこにあやかりたかったのかもしれない。一人のか弱い女性が、強大な権力を持つ政治家に立ち向かうという印象を与えたかったとも受け取れる。

ミツバチの働きバチの針にはのこぎりの歯のような「逆棘」があり、皮膚を刺すと逆棘が引っかかって針が抜けなくなります。しかし、働きバチは無理に針を抜こうとします。すると針が抜けずに、腹部の末端がちぎれてしまうのです。ハチは自由になりますが、腹部がちぎれてしまったので、その後10分から20分程度で死んでしまいます。一方、皮膚には針とともにちぎれた腹部の末端が残ります。毒を蓄めている毒嚢も針とつながったまま残っています。この状態で毒嚢は、収縮と弛緩を繰り返して、毒を針に送り続けます。この作用により、相手に対して毒をたっぷりと注入することができるのです。(千葉県立中央博物館)

榎本の姿を追っていけばいくほど、ミツバチが浮かばれない気がする。そして、この話を披露するときは、きっとうんちくを滔々と語っているように見えるだろう。聞き上手の奥さんも途中で音をあげる恐れがある。この小ネタはお蔵入りにすべきだろうか。(敬称略)

(写真〈上から順に〉:ハチの一刺し=写真ACの素材を基にりす作成、「ハチの一刺し」で一躍時の人になった榎本三恵子=グーグル画像の素材を基にりす作成、お金を運ぶミツバチのイメージ=写真AC)

関連リング(前回の話):

「ハチの一刺し」シリーズ:


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