綺麗
最新のファッションに身を包み、真っ赤な口紅でくっきりと縁取られた唇を動かしながら彼女が言う。
「世の中綺麗事ばかり、と思うかしら。
私は綺麗なもの好きよ。
だって綺麗だもの。響きがいいわ。
でもやっぱりちょっと不完全な方がいいわね。
完全なものは空っぽに見えるもの。
結局綺麗事って、見た目や語感の良さに酔いしれてるだけじゃないかしら。
綺麗なせかいって、ちょっと影があるものじゃない?
あかるすぎるものは眩しいわ。誰かサングラスをちょうだい。
影があるから美しいの。完璧な美しさって、だからおかしな表現ね。
私は完璧になりきれないそのままの貴方が好きよ。」
彼女の勢いに圧倒され何も言えなかった私は、ただただ彼女を綺麗だなと思った。
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