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上海の高学歴社会ぶりと20代後半のしんどさ

中国の受験戦争が激しい、というのは日本でも有名な話であろう。今日は、中国の学歴競争とその結果若者の生活がどのような影響を受けているかについて、私の周りをサンプルに書いてみようと思う。

私は上海の小さな(20名以下)のコンサル会社に勤めている。私ともう一人を除いてはすべて中国籍だが、コンサルタントで学部卒は一人もいない。理工系の専門でない人も多いが、総じてMBAや会計学などの大学院を修了している。私が上海で新卒を見ている3年ほどの期間中、学部卒の人はおそらく見たことがない。面接まで進む人の殆どは、大学院卒+外国留学経験数年(日本または欧米)という学歴が90%以上を占めている感覚である。こちらは学部卒でも優秀な人なら採用する気満々なのだが、単純にそういう人が応募者の中に見当たらないのだ。

コンサルという業界フィルターもあり、学歴が高い人が応募してくることが多いのかもしれないが、他業界の人の話を聞いても日本の状況と比べると差が大きいことを耳にする。私が新卒活動をした15年前には、ある程度人気のある会社の選考であっても文系で院卒は周りに殆どいなかった。現在でも大学院への進学率が急速に上がったという話は聞こえてこない。

なぜ大学院に進学するのか同僚や友人に聞いたが、やはり「大多数が大学院まで出ているので、自分が学部卒だと競争力に劣る」という回答が返ってきた。まさに流行りの”内巻“である。下記、中国情報局さんの解説を引用させていただく。内巻は一晩語りあかせるほど面白いトピックだが、今回は高学歴化が進んだ都市圏の(ある程度の)エリート若者の20代について書くことにしよう。

私が見てきた何人かの新卒学生をもとに、勝手に一般化した若者像を描いてみた。
<経歴>
  学部‥211大学のあまり就職で有利でない学部(文学部など)卒
  大学院‥2年弱の語学学校を経て日本の有名私大でビジネス修士取得
  インターンや留学先で短期就業後、家の事情()などで帰国し就活 

※業種にもよるが、大体月1万元くらいの固定月収で就職する。(現在の上海戸籍取得のための最低ラインが月1万元程度)

留学準備などで結構時間をロスすることも多く、上記のような経歴パターンだと26歳くらいになっていることが多い。そうすると、彼/彼女のその後5年間での人生ToDoがえらいことになってくる。下記に挙げたToDoはどれも、新卒社員同士のお喋りで毎日のように聞かれる話題である。

 - 26歳で初めて正式就職、社会人生活に慣れるのも大変
 - 30歳までには結婚して子供を産まないといけないらしい
 - 結婚するとなると家を買わなければならない
 - 出来れば家は上海か北京に買いたい
 - すると就職してすぐに戸籍の取得に取り掛からなければならない
  (大都市は戸籍の数を制限、外者の戸籍取得はハードルが高い)
 - 就職時点で彼氏彼女がいなければ早急に見つける必要がある
 - 人によっては30前で更に学位取得を狙うことも

上海か北京にまずまず住めるマンションを購入しようとすると400万元~となるため、親に半分弱援助してもらうとしても、ローン額は膨大なものになる。まだ学生気分の抜けきらない可愛らしい25歳が「500万のマンション買いました。ローン返却頑張ります。」と言っているのは、上海ではわりと日常茶飯事だ。

彼らが向き合わざるをえない金額の大きさや20代後半の短期間でこなす人生重大イベントの多さを理解せず、「最初の数年は先輩の背中を見て社会人マナーを学ぶ」という日本企業のノリを適用すると、彼らはあっという間に離れていってしまう。入社してすぐでも資格取得やプロジェクト経験獲得に貪欲に励み続ける彼らを見て、「外国人」特別待遇にある種守られている自分に甘えがあると反省することも多々ある。学歴が能力を反映するとは決して思わないが、自己研鑽を絶やさない態度には日々刺激をうける。

中国の未来を担う20代の若者たち、たくさんの頑張り屋さんの未来が輝かしいものになるよう、自分のできる範囲で応援していきたい。

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