ヤンキー図書館 | 税金で買った本7巻発売プロモーションでデコレーショントラックの絵を描いたお話
こんにちは、ジャガーです。
このたび、”税金で買った本” 7巻発売プロモーション施策「ヤンキー図書館」にデザイナーとして参加いたしました!
言葉だけだとヤンキー図書館???ってなっちゃうと思うので、まずはこちらをご覧いただけると嬉しいですー
このイベントは、5/6(土)・5/7(日)に渋谷キャスト ガーデンにて実際に行われておりました。
いやー「ヤンキー」と「図書館」という相対する?モチーフを組み合わせた時の違和感たるや。
リアルイベントだとその違和感がさらに強調されますねえ。
全体のデザインは、弊社デザイナーの二口と井上が担当しているのですが、今回はぼくの担当だったデコレーショントラック外装イラストがどのようにできていったかのプロセスをまとめてみようと思いますので、お時間があれば是非読んでみてください!
漫画が好き
漫画って最高ですよね。
仕事が一段落して、コーヒー片手に漫画の新刊を読んでいるときの幸福感たるや。
ぼくは、昔から漫画ばかり読んでいる子どもでしたし、大人なった今も変わらず読み続けているのですが、我が子にも幼少期から「課題図書」と銘打っては名作漫画をたくさん読ませてきた甲斐もあって、無事に漫画が大好きな子どもたちに育ちました。
育成成功。
余談ですが、我が家では「漫画棚」という本棚があり、ぼくが買った漫画も子どもが買った漫画も全てその本棚に入れて、家族で共有しています。
電子版に移行したいけれど、この漫画棚に並べるために未だに紙版で購入しているので、そろそろ溢れてきて廊下を侵食してきているのが最近の悩みだったりします。
壁一面の本棚がほしい。
税金で買った本
去年の夏ごろ、すんごくすんごく疲れていたので、手に汗握るゴリゴリの漫画ではなく、ちょっとゆるめの日常系漫画を就寝前にちょっと読んで癒やされる みたいなことを日々の糧として生活していたのですが、その漫画のひとつがこの「税金で買った本」でした。
まずタイトルが素敵ですよねえ。そそる〜。
読んだことのない方のためにこの漫画の内容をざっくりと説明すると、
といった内容の漫画です。
「図書館のお仕事」という、あまり知られていない?お仕事を、魅力的な登場人物たちが繰り広げるやりとりの中でフォーカスしていく内容がとても面白く、かつ荒んだぼくの心を癒やしてくれてもいたので、お気に入りの漫画になっていました。
そんな中、講談社様から「税金で買った本」のプロモーションのご依頼をいただいたので、ワクワクしながら参加することに!
ヤンキー図書館はどうやってうまれたか
図書館が舞台で、ヤンキーが主人公の漫画だから「ヤンキー図書館」。
うん、振り返ってみればとってもシンプルストレートな案にも思えますが(そういうアイデアのほうが強く太かったりする気がする)、2つの案のがっちゃんこだったりします。
1つ目は、弊社デザイナーの井上麻美のアイデア「ラッピング移動図書館」。税金で買った本のキャラクターたちでラッピングされた移動図書館を作りましょう という案。
2つ目は、ぼくのアイデア「世界一派手な図書館」。静寂なイメージの公立図書館をド派手なPOPで埋め尽くし、世界一派手な図書館を作って話題化しましょう という案。
それらをまとめつつ「ヤンキー図書館くらい派手にしたほうが面白い」という最終アイデアに昇華したのが、弊社クリエイティブ・ディレクターの谷口恭介。
というように、各々の考えがうまくMIXされて良いアウトプットに繋がりました。いいかんじ!
過去に書いた記事でも何度か触れていますが、弊社では誰がアイデアを考えてもよくて、それらのアイデアをぶつけ合ってガチンコ勝負して決めていきます。
もちろん一人で突っ走ることができる高い企画力にも憧れますが、各々が全力でやったうえでよりよい形に昇華されるのは、チームで制作している感が増して素敵だなと思ってます。
デコレーショントラックの絵を描く日
ヤンキー図書館を名乗るくらいだから、普通のバンとかバスとかじゃなくて、もっと派手な乗り物を図書館にしたいよね。という想いから「デコレーショントラック」を図書館にすることに。
この時点でちょっとテンションあがります。
得も言えぬ魅力がありますよね、デコレーショントラックって。
日常と非日常の間といいますか。
そして、話は自然とトラックによく描かれているアートに。
デコレーショントラックの側面によく描かれているあの絵です。
相まみえる龍虎だったり、北斎の波だったり。艷やかな女性だったり。
それぞれの好みなのでしょうか。それとも信念なのでしょうか。
あれをですね、今回ぼくが描かせてもらいました!
なかなかの冒険です。
だって描いたことないですもん、デコレーショントラックアート。
歌川国芳を追いかけて
描き始めてから約1ヶ月。
まずは、最終的に出来上がった絵を見ていただければと!
錦絵とグラフィックを混ぜたような絵柄で、向かい合う2人のキャラクターが対立構造になるように配置し、「竜虎相打つ」みたいな印象になるようにイメージしながら描きました!
このトーンの絵を描くにあたってたくさんの浮世絵を見ましたが、特に参考にしたのが江戸時代末期を代表する浮世絵師の一人「歌川国芳」の作品。
構図・色彩・アイデア、全てが素晴らしい。。グラフィックすぎる。。
200年も昔にこんな自由な発想で絵を描けるなんて。
これが天才か。
国芳イズムは参考にさせてもらいつつ、デコレーショントラックの派手さに合わせて、彩度・明度は高めに設定したり、屋外でもしっかり見えるようにアウトラインは強くはっきりと描いたりと、ぼくなりに今回の仕様に落とし込んでいます。
紆余曲折の1ヶ月
とまあ、さらっと描きあげた感を出してますが、なかなかに大変でした。
イラストのお仕事はこれまでに何度も経験してますが、デコレーショントラックに絵を描いたことなんてないですもん。
もちろん、専門の職人さんなどにお願いするという線もあったのですが、外注するにあたって
漫画のキャラクターを絵に落とし込むために「原作の理解」が必要
どれくらい発生するかわからない修正・描き直しへの柔軟な対応が必要
という、目に見えない懸念があったことが、内製にした大きな理由でした。
そして何より、僕が描いてみたかった!
これに尽きるかもしれません。
だって、今後デコレーショントラックの絵を描ける機会なんて一生ないかもしれないですしね。
描かせてもらえるなら、やらないともったいないなと。
なんでもやる!がモットーのWhateverに所属していないとなかなかできないお仕事だなあと思いながら、ワクワクとブルブルが共存しながらのスタートとなりました。
歌川国芳に至るまで
最終的に「歌川国芳」を意識して描いたわけですが、いきなりそこに至ったわけではなく。
デコレーショントラックのアートって、なんとなくイメージはつくものの「何が描かれているのか」「描き方にルールや一貫性はあるのか」みたいなところが全くわからなかったので、ひとまず色々調べてみることに。
僕なりに調査・分類してみたところ
錦絵系:いわゆる日本の木版画っぽい絵。龍や葛飾北斎の富嶽三十六景(波の絵)が多い。
リアル系:すっごいリアルなアート。人間モチーフが多い。戦国武将みたいな絵や、Vシネのワンシーンみたいモチーフが多め。
デフォルメ・リアル系:リアル寄りだけど、陰影をもっと薄くしている系。コントラストの強い日本画みたいなイメージ。花魁とか歌舞伎モチーフが多い。
インパクト系:お世辞にも上手いとは言えないけど、迫力がある。下書き無しにそのままスプレーで描いた?と思うような感じ。
グラフィック系:錦絵をベースに、よりグラフィック要素が強い系。
のような感じが多いのかなという印象でした。
最終的に「錦絵系」+「グラフィック系」に落とし込んだかんじなのですが、そこに至るまでに描いては消して、消しては描いてを繰り返したわけでして。
そのプロセスをざっくりまとめてみます!
まずはTHE・錦絵風
錦絵っぽいタッチでどれくらい描けるもんなのかな?を確かめるために最初に描いたのはこちら。ど真ん中ストレート。
東洲斎写楽が描いた錦絵っぽい構図とトーンで、主人公の石平くんを描いてみました。
今見るとこれはこれでアリな気もしつつ、やはりちょっと勢いが足りない気もしますよね。デコレーショントラックとしての勢いが。
なのでボツに!
人情アート風
次に描いたのはこちら。仁義と人情の風情が残るイラストトーン。
日本画っぽい雰囲気も残しつつ、ある程度の陰影をつけて強さを出し、先程のTHE・錦絵と差別化するように描いてみたものです。
顔の形状や陰影のバランスも色々試しつつ、ちょっと桜の花びらなんか散らしちゃって、哀愁漂う感じにしちゃって。
この方向もありえる気がしたので、もうちょっと描いてみたのがこちら。
悪くない気もしつつ、ちょっとほのぼの感が強くなりすぎたので、この方向もナシに!
ちょっと脱線
さて、ここから急にツノあり女性のイラストが出てきてますが、この頃から絵のトーン検証と並行して「石平くん以外のモチーフ」の検証も始めていたんですよね。トラックが結構横長なので、石平くんだけだと間がもたないというか。
なので、そこを埋めてくれて且つ映えるモチーフが必要だったわけですが、チームでいろいろ話し合った結果「ほーんちゃん」という作中キャラクターを起用することにしました。
絵の話からは少し脱線しますが、「ほーんちゃん」はメインキャラクターとかではなく、石平くんが働く図書館のイメージキャラクターです。
キャラクターの原案を描いた職員の人がすでに退職してしまっていて、その原案を元にいろんな職員がほーんちゃんを描くがために絵柄が定まらない という背景のあるキャラクター。
絵柄が定まっていないが故に、ほーんちゃんがデコレーショントラックテイストになっちゃった みたいな裏設定があったらおもしろいよね ということで選ばれました。
こういう「特に説明しないけど裏でつながってる感」
個人的に大好きです。
「錦絵系」 + 「グラフィック系」
話はイラストトーンに戻りますが、確かに言われてみればほのぼのしちゃってたかーと反省。
今回は「図書館をデコトラで表現する」というクレイジーな昇華だったので、イラストでもその辺を表現しないといけなかったんじゃないか。と思い直し、イチから描き直しました。
石平くんとほーんちゃん というモチーフが決まったので、日本画によくある「龍虎」のような対立構造で迫力を出す方向で試してみることに。
ついでに、ほんわかしていたほーんちゃんを、もっと妖怪のように描いてみようと。(このあたりはディレクターである谷口のアイデアが大きい)
そして、色々悩みながら辿り着いたのがこちら。
石平くんとほーんちゃんが向き合い対峙している構図や、雷と炎という特性も含めて対立構造を作りました。
その関係性をより強調するために色でも対比を作りつつ、 原作が漫画であるということからスクリーントーンみたいな柄を入れています。
今回の施策を表現するような絵にやっと辿り着いた気がして、この日の夜はお酒が美味しかった。美味しかった。
こだわりポイント
もちろん、このイラストを描きあげるにあたっても、ぼくなりのこだわりが色々とありまして。
ポイント1 : 線の描き方・面の塗り方
筆で描いたような強弱のある線と、濃淡のある塗りで描くことで、錦絵っぽい雰囲気が出るように意識してます。
あまり肌に陰影をつけすぎないようにすることで、日本画っぽい印象になるようにもしてます。
ちなみに、今回のイラスト作画には「iPad Pro」と「Procreate」を使用しています。
線に使用した筆の種類は「ティンダーボックス」、塗りに使用したのは「クォール」です。かすれ具合がイメージに近くて良い感じ。
ポイント2 : 巨大サイズへの対応
今回のイラストですが、最終入稿は「Width : 5720mm Height : 1960mm」という巨大サイズなのです。
それはProcreateのMAXサイズをゆうに超えており、、
1枚で描き切るのはサイズ的に無理だったので、分割して各オブジェクト毎にできる限り大きなサイズで描き、最後にがっちゃんこする作戦で進めることに。
分割して といっても、1オブジェクトあたり「Width : 9000px Height : 7200px」という巨大サイズ!
でかい。。
Procreateの仕様的に、アートボードサイズが大きなるほどレイヤー数が少なくなっていくために、今回はなんと4レイヤーしか作れなかった、、
なので、バックアップをいっぱいとりつつ、キリの良いところで統合したり を繰り返して最終アウトプットにこぎつけました。
でかいは正義だけど、でかいは大変。
ポイント3 : 全部手描き
当たり前っちゃあ当たり前なんですけどね。
でも、実は背景にあるモヤモヤみたいなの(カケアミというらしい)も手描きだったりするんです。
よく漫画に使われたりしているので、どこかに良い素材があったりするんだろうなと甘くみていたのですが、いざ実サイズで作り始めると、販売されている素材のような解像度・サイズでは全く足りないことに気づき。
なのでこういう素材も全部手で描きました!
漫画家さんも描いているんでしょうか。
だとしたらすごいよ。
リスペクト。
まとめ
とまあ、様々な難所を乗り越えて無事完成したわけですが、イラストを描いている間にこれまで以上にこの漫画に愛着が湧いて、さらに大好きになっちゃいました。
このイベントやイラストを通して「税金で買った本」を知って、好きになってくれる人がたくさん増えればいいなーと、心から思います!
余談
ちなみに、ほーんちゃんの手のモデルは息子でした。
「獲物を狙うモンスターみたいな感じのグワッとした手で!」というふわっとしたオーダーに見事に応えてくれました。
ありがとうね、息子!
スタッフクレジットに入れたいくらい。
ジャガーでした。