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(連載小説)和巳が"カレシ"で、かすみが"カノジョ" もうひとつの学園祭のミスコン ②

ディスカウントショップで買ってきたコンテスト用の女物の衣装をサイズが合っているか等を確かめる為に試着をすると云う事で和巳はあずさといっしょに自分の家に帰ってきていた。

通常は試着なら買ったお店でするけど、ちょっと考えてみると男性の容姿の和巳が女装とかせずにそのままの恰好で他のお客さんや店員さんもいる中で女物の衣装を手に取ってフィッティングルームでそれを試着すると云うのもどうかと思い、タグが付いていたら返品・交換可能と聞いていたのでこうして一旦家に持ち帰った訳で、さっそく着てみる事にする。

「もうひとつのミスコンテスト」と銘打った学園祭での女装コンテストにエントリーをした和巳だったが、主催者側が作る第1次ウエブ審査の為の専用サイトに載せる為の女装した画像と動画が必須なので、こうやってまずは衣装選びをしていた。

専用サイトには参加者それぞれ「カジュアル部門」と「フォーマル部門」で1つずつ画像か動画のどちらかを載せる必要があってそのうち「カジュアル部門」については一言で言うと「こんな女子っているよね」と云うコンセプトで「普通にいる女子大生らしい女の子」的な画像を撮ってきて欲しいと言われていた。

このコンテストでは元々は男性の参加者が女装する事でのいわば「女性らしさ」や「女っぷり」を競うのだが、それらの前提として「パス度」すなわち参加者がどれだけ違和感なく普通の「女性」に見えるかをまず第1次審査では重要視するポイントに挙げていると聞かされていた。

言われてみれば確かにそうなのだが、このコンテストは女装コンテストとは言え大学の学園祭でミスコンとして行う以上参加者はこの大学の学生か院生で、その参加者が女装する事で外見上は「女子大生」風になってもらうのが理想と云うか自然で、投票する学生や審査員にとってもその方が分かりやすくて共感を得そうだと云う考えが基本的にあるみたいだった。

それに主催者としても今回のこの「もうひとつのミスコンテスト」は実際は女装コンテストとはいえあくまで「ミスコン」であり「仮装大会」ではないのだから、あんまり奇をてらった恰好は渋谷学院大学と云う都心にあって洒落た印象を多くの人が持っているこの大学のイメージや雰囲気にそぐわないのでできれば遠慮して欲しいと云う予防的な意味合いもあった。

また普段は普通に男子として大学に通っている学生が女装をする事でまるで普通の女子大生みたいになる事での変身のギャップも第1次審査でのポイントにしたいみたいだった。

そんなあれこれと聞こえてくる情報を基にあずさはまず「ちょっぴり秋っぽいカジュアルコーデをしているかわいい系の女子」をコンセプトにイメージして和巳に着せる衣装を先程の店で選んできたのだった。

和巳は女物の衣装なんて普段はバイトの時以外は女装とかしないから当たり前ながらまったく知らないし分かってなく、さすがにブラウスとスカートとワンピースくらいは見るとどれがどのタイプの衣装なのか位は分かるけどどっちにしてもその程度の知識と経験しかなかったので結局のところこうしてあずさにおまかせの「まな板の上の鯉」状態にされていたのだった。

そして和巳はしまってあった着物屋さんのバイトで着る自分用のブラジャーとパンティとキャミソールを取ってくるとあずさは「じゃあ女の子用の下着をつけてね。」と事もなげに和巳に言う。

「え・・・・ここで?・・・・・。」

「そうよ。ここで下着付けないとどこでするの?。」

自分の家の自分の部屋で、またいっしょに部屋にいるのはカノジョとは言え、こんな昼間っから一旦「素っ裸」になり、そして今度は男の自分がカノジョの前でブラだのパンティーだの女物の下着を付けるだなんて和巳はとっても恥ずかしい気持ちになった。

「あのさ・・・・・あずさ・・・・・僕・・・・・恥ずかしいんだけど・・・・・。」

そう言う和巳にあずさは「そうなんだ。だけど女の子の服を着るのにトランクスを履いたまま着るのって変じゃない?。でも和巳が恥ずかしいんだったらわたし後ろ向いててあげるからその間に着替えて。ほら。」と全く気にしていない様子で和巳に早く女物の下着を付けるように言う。

「うん分かった・・・・・。じゃあ着替えるから恥ずかしいんで後ろ向いててね・・・・・。」

そう言いながら和巳はトランクスと肌着のシャツを脱ぎ、靴下も脱いでいつも着物屋さんのバイトで付けているレースをあしらった白の清楚な感じのパンティーを履き、パンティーとお揃いの色とデザインのBカップのブラジャーに手を通し、バイトでもやっているように胸のカップにパットを入れた後は後ろでブラジャーのホックを止めた。

そしてベージュのガードルをパンティーの上から重ね履きして、上から光沢のある付けているパンティーやブラジャーに合ったデザインのこれもところどころレースをあしらった白のキャミソールをかぶった。

「下着・・・・・付けたけど・・・・・。」

そう言う女の子の下着姿の和巳にあずさは振り向いて「じゃあ今度は洋服を着よっか。」と言い、さっきお店で選んできた衣装の中から流行りの袖がふわっとしたキャンディースリーブになっていて襟元にこれも最近流行りの大き目のフリルのついたブラウスをまずは着せ、そして下には定番ながら今シーズンも引き続き大学生や10代後半から20代の若い女子に人気のある赤を基調としたチェックの柄のロングスカートを履かせた。

まったく気にせずに女物への衣装の着替えを手伝うあずさに比べて、和巳はそれらの女物の衣装を着るのがとても恥ずかしく感じていた。

女物の衣装をこうして着替えるのに手伝ってくれるのがいかに日頃から遠慮のお互いないそれプラス自分のカノジョでもあるあずさとは言え、こうして年頃の女子に見られながら部屋の中で裸になったり、また普段は着慣れていない女物の下着やブラウス、スカートを付けたりするのがコンテストのためとは言え和巳は恥ずかしくてたまらない。

あずさはそんな終始恥ずかしいのかうつむいたままで女物の衣装に着替えている和巳に着ているブラウスが棒タイブラウスなので胸の前で付いているリボンを仕上げに結び、あずさ選定のコンテスト用の和巳の女装コーデが完成した。

「じゃあ次はメイクね。ちょっと待ってて。」そう言うとあずさはいったん近所の自分の家にメイク道具を取りに帰った。

和巳は今のところほとんど何もメイク道具を持っていないが、あずさが今日はとりあえず自分の化粧品でメイクをしてくれるとの事なのでその間和巳はブラウスとスカート姿のままで部屋でじっとしていた。

そうしているうちに自宅は3軒隣りなのですぐにメイク道具を取って戻って来たあずさが和巳にメイクをはじめる。

「さすが和巳って肌はきれいだし色白でいいわねー。」とまずは化粧水をコットンに含んで撫でるように顔全体を拭いて馴染ませ、なにやら効能があるのだろうけど男の和巳にはあまり聞いた事のない美容成分が豊富に含まれていると云う韓国コスメのBBクリームを延ばしながら塗っていく。

「このBBクリームって韓国製なんだけど韓国コスメってどれも大抵安い割に品質もいいし使い勝手もいいので若い子たち結構みんな使ってるの。」と言いながらBBクリームを塗るあずさに和巳は「そうなんだ・・・・・。」と通り一遍の反応をし、メイクは次の段階へと進む。

着物屋さんのバイトで振袖を着せてもらうのでメイクした時にちゃんと女子に見えるように日頃から化粧水や乳液でお肌のスキンケアは割に同世代の大学生の男子よりは割と丁寧にやっているせいかお化粧そのものの乗りはいいようで、それもあってあずさも無理なく自分も楽しむように和巳にメイクを施している。

あずさは健康的に見えるし写真映りも映えるようにと明るめのファンデーションを塗り、アイシャドー、アイラインなどアイメイクをした後はまつ毛をビューラーで少しくるりんとさせ、そこにブラウンのマスカラをつけてまつ毛を伸ばす。

そして眉毛をアイブロウペンシルで整え、ほんのりとした色合いのチークを頬に乗せ、仕上げにかわいらしい色合いの少し濃い目のピンクの口紅を塗り、その上に艶感を出すために透明のつやつやグロスを重ねて塗る。

「よし、これでメイクは完成ね!。」とあずさは言い、和巳はあずさに言われるとおりにティッシュを口に軽く挟むと表面にキスマークの形でピンクの口紅とつやつやグロスが映し出される。

そしてメイクの細かい手直しをあずさはすると「うん!とってもいい感じにメイクができた!。」と言いながら買ってきたやや明るめの自然な感じの栗色のセミロングのウィッグを和巳に被せ、ブラシで軽く髪を梳いてカチューシャタイプの髪飾りをウィッグに付けると「じゃあそれでは”かすみ”になった自分を見てもらいましょ。結構びっくりしちゃうかも。うふふ。」と少しいたずらっぽく笑いながら姿見で自分を見るように和巳に促す。

「振袖や浴衣は着た事あるけれど、洋服は初めてだから似合ってるかな・・・・・。それにあずさはいい感じって言ってたけど実際のところどんな感じの女の子になってるんだろう・・・・・。」

そう思いながらそっと姿見を和巳は覗いてみた。

「えっ・・・・・。」

そこには白のキャンディースリーブのフリルブラウスを着て、赤のチェックのロングスカートを履いたセミロングの髪型の「二十歳くらいの女の子」が映っていた。

流行を少し取り入れてはいるけれど全般的には定番コーデの服を着ているその「二十歳くらいの女の子」はまさに「こんな感じの女の子って居るよね」と言いたくなってしまうくらい女の子としてとても自然な感じで、その上かわいらしくて服のコーデ全体もピッタリなのもあってパス度も高く、どこをどう見てもこれがさっきまで「普通の冴えない地味な男子大学生」だったとは思えない「とってもかわいらしい二十歳くらいの女の子」になっているではないか。

「わあー、かすみって着物もだけどそれ以外に普通に女の子が着るブラウスやスカートも似合うんだねー!。とってもかわいい!。」

「そ、そう・・・・・ありがと・・・・・。わたしってこの女の子の着る服がそんなに似合ってるの?・・・・・。」

「うん!全然どこから見てもかわいくてわたしと同じくらいな二十歳くらいのちょっぴりおしゃれした女子大生って感じだよ!。」

そう言われ改めて鏡を見て見るとなんとなく自分でもそう言えばこの女の子に似た子を街や大学で見かけたような気がしてきた位、どこにでも居そうだけどでも結構かわいくて盛れてる女の子になった気分になり、そしてバイトで振袖を着せてもらった場合と同様に「和巳」から「かすみ」への女子モードに移行スイッチが入りはじめていた。

それにしてもいつものバイト先で振袖を着せてもらって女装する時は経験を積んだ本職の技でメイクしてもらっているのでこんな普段は冴えない普通の地味な男子の自分がメイクのおかげもあってばっちり女子に見えるんだと思っていたけれど、今日は言ってみれば近所の普通の大学生のあずさにメイクしてもらっただけでこんなに二十歳くらいの女子大生に見えてしまうくらいどこから見ても女子そのものになってしまうだなんて自分もあずさもうれしくなって喜んでいると同時に出来過ぎだとびっくりしていた。

そしてしばらくかすみになって気分も落ち着いてくるとあずさが「じゃあかすみ、これから少しお出かけしようか?。」と言い始めた。

「えっ?・・・・・お出かけってこのままの恰好で?。」「そうよ。もちろんそう。だってどっちにしてもコンテスト本選だとかすみになってみんなの前に出て見てもらうようになるんだからメイクしてかすみになってる時は今からなるべくお外に出て慣れとかないとね!。」と言う。

「そんなあ・・・・・わたし恥ずかしいよお・・・・・。」

「大丈夫よ。なんで恥ずかしいの?。かすみも自分でもさっき”こんな子って街や大学で普通に居そうだし女の子の誰かに似てる”って言ってたでしょ?。その位パス度が高いんだから大丈夫。ささ、じゃあ出かけるから準備して。わたしもいっしょに付いてってあげるから。」

とあずさに言われかすみは不安な気分にになりつつもしぶしぶ仕度を始め、振袖や浴衣の時はまったく男ってバレなかったけど、それはもしかして和装のおかげかも知れなくて、今日は普通の女の子が誰もが普通に着ている服のコーデだしそれだとバレたりしないのかな、と思いながら仕度をしていた。

でも考えてみるとあずさの言う通り仮にコンテスト本選に出る事になると人前で、それも学園祭と云うたくさんの人が集まる中で自分の女装姿を見せる訳だし、そもそも今日みたいな普通の服のコーデで女装外出をして男ってバレるようだったら第1次ネット予選の通過なんて覚束ないだろう。

ええい、もうコンテストには出るって決めたんだし、女の子としてのパス度もとりあえず見る限りはまあまあでそれにあずさも付いて行ってくれるって言ってるからここは試しにこのブラウスとスカートの恰好で出掛けよう・・・・・。

そしてさっきディスカウントショップで買ってきた小物類一式に入っていた女物のバッグにとりあえず財布とスマホを入れ、あとはハンカチやティッシュなど外出に必要なその辺にあるものを適当に入れて3センチくらいのヒールになっているベージュのパンプスを履いて外に出た。

「歩き方は着物の時ほどではなくていいけれど、その時の事を思いだしながら内股を意識して歩いてみてね。バッグはこうして両手で前に持つと女の子らしくかわいく見えるよ。」

「こ、こう?・・・・・。」

そうあずさに教わった通りに歩き方やバッグの持ち方など「女の子がする仕草」を意識しながらかすみは第一歩を踏み出していた。

いつも和巳からかすみになってバイトで振袖を着ると試着に来ている振袖男子を近所の公園に気分転換を兼ねてロケーションフォトに連れ出したりしているし、この前の花火大会で浴衣女子になって外出もしているので最近は女装して外出するのは割に慣れてきているけれどそれでもいつもの和装とは違った装いと云う事もあってとても恥ずかしかった。

そうこうしているうちに歩道で前から来た人とすれ違う。「どうしよう・・・・・わたし男ってバレないかな・・・・・。」そう思いとてもドキドキしながら前から来た人とすれ違ったけど特に何もない。

そして歩いていると続けて何組かの通行人とすれ違ったのだけれどやはり先程同様かすみを見てその人たちに特段反応はない。

「もしかしてわたし男ってバレてないのかな・・・・・。」とドキドキしているとかすみがうつむきながら自信なさげに歩いているのに気づいたあずさは「かすみってもしかして男ってバレてないかなって思ってる?。けど大丈夫みたい。ほら横のショーウィンドー見て。」と声を掛け、なんだろうと思って言われた通りに横のショーウインドーを見ると女子大生二人組が歩いているのが映っている。

そう言われてショーウィンドーを見るとキャンディースリーブの白のブラウスに赤のチェックのスカートの方の「女の子」は少しうつむき加減だけど、いっしょにいるしっかり前を向いて歩いている同い年くらいの女の子も含め、ごく自然な感じで女子大生が街を歩いているように見えた。

「どう?どこか変なところあった?。わたしもかすみも普通に二十歳くらいの女の子がその辺を歩いてるって風に見えたでしょ。」

そう言っているうちにも別の通行人が二人とすれ違っていったけどやはり他の人と同じように何も反応とかはしない。

どうやら今日のわたしってちゃんと女の子のかすみになってるんだ・・・・・そう実感するとまだ姿勢はうつむき加減ではあるけれど気持ちの方の恥ずかしさは少しだけ和らいだ。

そして女子が好きそうな今風のカフェにあずさはこれまた慣れた感じで入って行くと「お待たせ―。待たせてゴメンねー。」と言う先のテーブルに女子二人がカフェオレを飲みながら座っていた。

その女子二人が座っているテーブルにかすみとあずさが腰を下ろすと「この二人が今回のもうひとつのミスコンでかすみを応援・サポートしてくれるの。まあわたしも含め女子三人プラスかすみで”チームかすみ”って事でこれから進めていくからよろしくね。」とあずさは言う。

「それじゃまずは自己紹介しましょうか。」とあずさが言うと二人いるうちの髪の長い方の女性が「じゃわたしから。」と言って話し始めた。

「文学部4年の坂上 美咲(さかがみ みさき)です。よろしくね。でもあずさからは聞いてたけど、かすみさんってほんと聞いてた通りとってもかわいらしくてこれが本当は男子だなんて思えないくらい元から女の子みたいな感じでいいね。」と挨拶する。

そんな挨拶をする美咲を見ていてあずさが「ねえかすみ、美咲さんってどっかで見た事ない?。」と言う。それはかすみも確かに気になっていたし、初めて会うのだがどこかで見たような感じもしていて、ただそれがはっきりと思いだせていなかった。

そんな考えながら押し黙っていたかすみにあずさが「ほら覚えてない?。去年のうちの大学のミスコンでグランプリ取った人。それが何を隠そうこの美咲さんよ。」と言い、それを聞いてかすみは「あ、そうか!。それで見た事あるような気がしたんだ。」と思いだした。

美咲は去年のミスコンで見事グランプリを獲得し、その実績もあって就活を進めいた中で見事第一志望でもあった航空会社のキャビンアテンダント職に内定を得ていた。

ストレートのセミロングの髪型に派手さの無い上品な感じの色合いとデザインのコーデの服装がとても似合っている美咲はさすが昨年のミスコングランプリと云う他の人とはちょっと違う大人びた綺麗さで、その持っている知的な雰囲気からも明日からでも国際線にキャビンアテンダントで乗務できそうな感じがする。

美咲はミスコンの規定で1回上位入賞をしたら次回はエントリーできないのだが反対にファイナリストまでだと次回もエントリーができるのでそれもあり、前回、前々回のミスコンで面識のあったあずさのフォローに回る事にしたらしく、既にその方向で動いているとの事。

ミスコンと聞くと参加者同士がライバル心むき出しで口も聞かなかったり、仲が悪かったりするのかと思いきや、それはその人によりけりでもちろんみんなが誰とでも仲がいいと云う訳でもないのだが、選考が進んでいくうちに会場とかで一緒になる事が多くなってくると自然と「同好の士」と云った感じで気が合う人が出てくるのだそうだ。

そんな中であずさの持ち前の社交性もあってミスコンを通じて美咲とは仲良くなったようで、その流れの中でこの「もうひとつのミスコン」の方にも協力をお願いしたのだった。

だけど既にあずさのフォロー活動に入っている美咲が「もうひとつの」に比べても本家ミスコンは大掛かりなイベントでもあり、手間暇が掛かるだろうにこちらも同時進行でフォローしてくれるだなんてかすみとしては前年度のミスコングランプリ経験者が自分の味方についてくれるのはとても心強いけれどそれで本家に出るあずさの準備がおろそかになったりしないのだろうかと少し心配していると「大丈夫よ。フォローするのは一人も二人もそんなに手間は変わらないから。」と美咲はまったく問題なさげに言う。

そしてもう一人の女子が「初めまして。三井純菜(みついじゅんな)です。わたしは実は渋谷学院大の学生ではなくて都内の服飾系の専門学校に通ってまして、ひょんな事から縁あってあずさのミスコンのフォローをさせてもらってるんだけど今回こうして美咲さん同様に”チームかすみ”にも加えてもらいました。年はあずさと同じ二十歳です。よろしくね。」と自己紹介を始めた。

「ひょんな事から」と自己紹介をする純菜だが、それはどう云う事かと言うと昨年の渋谷学院大学のミスコンを自分の勉強にもなるからとお客として見に来ていた時にたまたま見た出場していたあずさの美しさとかわいらしさに惹かれ、あれこれネット上を検索しているうちにあずさの個人SNSにたどり着き、そこから友達申請をして直DMをする仲になったのだとか。

純菜はスタイリストを目指して専門学校で勉強に日々励んでおり、服装全般は元より、トータル的なコーディネートもできるように勉強しているのとファッション全般について熱心で知識量もセンスも学生にしてはずば抜けているように実際に仲良くなって会うようになったあずさは感じていた。

またスタイリストを目指していると云う事でプロとしてファッションの現場ではこれから色んな職種や立場の人と一緒にお仕事を協力しながらやる必要も何から出てくるだろうと云う事で礼儀や相手を思いやると云った人付き合いの面にも気を遣っているのを感じ、元々純菜もあずさも社交的な性格だったのもあり、お互い社交的な者同士で気が合ってこうしてあずさは自分のミスコンのフォローを純菜にお願いしているのだが、やはり美咲同様「一人も二人も手間は一緒」と云う事でかすみのフォローもしてくれるようだ。

役割分担としては一番年上と云う事とミスコン経験者でもある美咲がチーム長兼広報・戦略担当を含めたトータルコーディネートを、純菜が服装やメイクなどのファッション面全般を、そしてあずさは自分のミスコンもあるけどそれはそれで置いといてやはり他の二人同様「一人も二人も手間は一緒」と思っているようで、自分のコンテストに向けての準備はしながら情報収集や他陣営の動向チェック、それにかすみのPR活動などをすると云う近所と云う事もありいつでも対応できるかすみの全体的なアドバイザー役を買って出てくれた。

「ま、わたし”アドバイザー”って言っても実際はかすみの”お目付け役”だかんね。ふふふっ。と云う事でみなさんかすみのコンテスト優勝・栄えある初代グランプリ目指して頑張りましょうね!。おー!。」といたずらっぽく笑いながらいつものようにあずさが言う。

そして他の二人も「おー!。」と言って盛り上がる横でかすみは自分のためにこんなセミプロみたいな人まで出てきてくれたりしてうれしいけどやっぱりまだ女子で居る事への恥ずかしさが抜けてないのか控えめに「おー!・・・・・。」と言っていた。

そしてそれを見たあずさが「ちょっとかすみ、コンテストに出るのはかすみなんだからもう少しちゃんとしなさいね、いい?。」と早速横で「お目付け役」ぶりを発揮していて、それを見た美咲も純菜も笑いつつうなづいていたのだった。

(つづく)











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