見出し画像

(連載小説)秘密の女子化社員養成所㉟~エピローグ・研修生から女子社員になったわたし~(最終回)

「悠子ちゃーん、ランチ行こー。」
「あ、もうそんな時間?。行く行くー、ちょっと紗絵ちゃん待っててー。」

そう言うと巷のOLがよくするように財布とスマホだけ持って席を立った悠子は事務室の入口で待ってくれていた紗絵と合流し、昼食を食べに外出した。

悠子が小瀬戸島での長くて辛い女子化研修を終え、本社の人事部人材開発課に改めて女子社員として配属されてからはや3ヶ月が経とうとしていた。

季節は進み、着ている女子用の制服も夏服となっていたが割にポップで可愛いと評判の制服と云う事もあって悠子はこの夏服が結構お気に入りだった。

「今日ランチどこ行く?ー。」
「あ、今日はね、この前できたばっかりの3丁目の角のところのカフェにしよー。」
「いいねー、あそこオシャレぽくていい感じそうだったから行きかったんだー。行こ行こー。」

と店定めをしながらランチに向かう悠子と紗絵はもうすっかりOLそのもので、女子社員らしさもしっかりと板についていた。

さて、悠子が東京本社に戻ってきて配属された人材開発課は主に何をしているかと云うと実は小瀬戸島での女子化研修を担当する部署でもあった。

人材開発課はいろいろとある仕事の中のひとつに社内の男子社員の中で女子化研修を受けさせるのにふさわしい人物を人選し、そこから様々な調査を内密に進めながら上申する役目を担っている。

これ以外にも社外から女子化研修を受けさせるのにふさわしい人物をスカウトして一旦男子社員としてビューティービーナスに入社させて適性を見るとか、MTFトランスジェンダーや女装子をSNSやネット上でチェックしてはビューティービーナスへの転職を誘ってみたりする事もしていた。

また担当部署と云う事で島に送りこんだ元男子社員たちがちゃんと研修をこなしているか、また順調に女子化しているかを見定めるために年に何度かは小瀬戸島に出向く事があり、そう言えば事前に東京で小瀬戸島の事を説明してくれた女子社員を研修中に見かけた事を悠子は思い出していた。

思えばその説明をしてくれた「女子社員」も実は小瀬戸島で女子化研修を受けて女になった元男子社員で、他にもこの人材開発課には同じように小瀬戸島で女子化させられた元男子社員が何人も居るのだった。

ちなみに紗絵は新しく配属されたマーケティング課ではユニセックス・ジェンダーフリーの衣類をはじめとしたLGBTQ向けの商品開発や販売の為の戦略を考えたり情報収集をするセクションに居て、男女それぞれの感覚がよく分かると云う事でこの部署に配属されたのだが、やはりここでも人材開発課と同様に小瀬戸島で女子化させられた元男子社員が多く働いていた。

カフェに着き、店の中に入ると「紗絵ちゃぁーん、悠子ちゃーぁん!。ここここぉー!。」と誰かが言うのが聞こえてきて、その声の主が手を振りながらこちらを見ている。

「え?・・・・・涼子ちゃん?・・・・・。」

見るとそこには涼子が先にカフェに来てテーブルについているではないか。

「お待たせ―、遅くなってゴメンねー。」
「いいのいいの、でもなんだか久しぶりだね!。元気だった?。」

実はこの週末に穂波とさくらの結婚披露宴があるのだが、それに合わせて涼子は外出許可を貰い、少し早めに島から上京してきていたのだった。

涼子も女子化研修を終えてしばらく経ち、もうすっかり女らしさが板についていて今やどこにも男だった頃の面影すら無く、そしてランチを仲良く食べるこの3人は傍から見れば全く年頃の普通のOLが楽しくランチタイムを過ごしているようにしか見えなかった。

そしてランチを食べながらの話題は涼子が島から出てきている事もあり、どうしても純子の事になってしまう。

「ところで純子ちゃんはその後どうしてるの?。」
「うん、元気してるわよ。はい、これ見て。」

そう悠子から聞かれた涼子はスマホを出し、画面を操作するとそこには少しだけ髪の延びた坊主頭でメイド服を着ている「女性」が写っている。

聞けば純子は去勢されてからおとなしく毎日メイド業務に励んでいるのだと言う。それにメイドにはそれぞれが身の回りのお世話をしなければならない社員が決められているのだが、涼子の担当はなんと純子らしい。

「純子ちゃんにね”涼子お姉様”なんて呼ばれてお世話してもらうとなんだかくすぐったいんだけど、呼び方や言葉遣いは島での決まりだから。それでもあたしが純子ちゃんを近くで見守ってあげられるからある意味安心かな。」

それを聞いて確かにメイドにさせられてからは研修生の時よりも更に厳しく辛い島での生活だろうけどこうして涼子が純子の傍で何かと気遣ってくれている事に悠子と紗絵は安堵したのだった。

続けて涼子のスマホからは動画が再生され、画面に純子から悠子と紗絵宛のビデオメッセージが流れた。

「悠子お姉様、紗絵お姉様お久しぶりです。メイドの純子でございます。お元気ですか?。わたくしはこうしてメイドになってしまいましたが、涼子お姉様の温かいご指導の下に日々仕事に励んでおります・・・・・。」

ほんの数か月前までいつも一緒に居て、なんでもタメ口で遠慮なく会話していた純子の口から敬語でしかも「お姉様」と言われると正直違和感はある。

でも純子ならきっとメイドとして小瀬戸島で頑張ってほしいとビデオメッセージを見た悠子も紗絵も切に願うのだった。

翌日、悠子と紗絵と涼子の3人は振袖姿でタクシーに乗っていた。
今日はいよいよ穂波とさくらの結婚式の日で、披露宴に「友人代表」としてお呼ばれしている3人は表参道にある式場に向かっていた。

さくらがジューンブライドにこだわった事もあって6月のこの日に結婚式を挙げる事になったのだが、6月なので少々気温も高めだろうと思い当初はパーティードレスで参列する予定にしていたが、穂波から是非和服で出席して欲しいと言われて急遽単衣の絽の振袖をレンタルしたのだった。

3人にとって振袖は研修の最終盤での学習発表会で「振袖蝶々」を踊った時以来だったが、結婚披露宴に出席すると云う事で美容院で本格的なメイク・ヘアメイクと着付けをしてもらった事もあり、そこに加えてすっかり心も女子化している3人にとってこの美しく変身した自分の振袖姿を見てテンションも上がりまくりだった。

島を出てから一旦大阪のマンションを引き払い、東京の新居に引っ越してきていた穂波だったがさくらとの新しい生活や結婚式の準備が忙しく、悠子と紗絵とは同じ東京に居ても電話やメール・SNSをする位であれから実際に会ったりする事はなかなか出来ていなかった。

なので今日は何か月かぶりに同期の元研修生と会える訳で、それだけでお互い心躍る気分だった。

会場に着いて受付を済ませて自分の席に付いて改めて周りを見回すと、辺りは着物やドレスで着飾った「女性」ばかりでとても華やいだ雰囲気だった。

見れば園田家側の主賓クラスが座るテーブルには藤川社長や小瀬戸島からこの日の為に上京してきた三浦所長の姿が見える。

またテーブルプランに書いてある列席者の名前と肩書を見ると御船家側は京子もさくらも弁護士をしている為か所属の弁護士会の大物弁護士や担当している一流企業のお偉いさんや百合花倶楽部の関係者なのか全般的にステータスの高い方が園田家側以上に多く列席している。

そしてここに列席している招待客の全てにおいてこの実質的な「同性婚」に理解がありそうな人ばかりを招いていた。

式場自体もLGBT婚に理解のある式場で、建物は大規模ではないし派手さもないものの気兼ねぜずに二人の新しい門出を祝える雰囲気だったし、そんな中で誰もが美しい「ダブル花嫁」の登場を今や遅しと待ち構えていた。

ただ穂波の家族は結局のところ母親と穂波のいとこの女性の二人だけが式に参列しているだけだった。

研修が終わって石川県の実家にこの結婚について報告をしてお許しを貰おうとしたが、やはり結婚以前に穂波がすっかり女子化してしまっている事に対して大きな拒否反応が生じてしまっていた。

田舎の、それも実家が旧家とあってはトランスジェンダーがどう、LGBTQがどうと言ったところでさすがにすぐには理解して貰える訳もなく、また相手のさくらは弁護士でいわば「逆玉の輿」なのはいいけれど、逆にそんな弁護士をしている程立派で社会的地位のあるような方がどうしてわざわざ「女どうし」での結婚を望むのかと云う気持ちもあるようで理解には程遠かった。

しかし「わたし弁護士だからややこしい案件の相談や解決には慣れてるの。」とさくらは言い、結婚に向けて実家再度の理解の無さに悩む穂波を励ましながら何度も実際に説得の為に石川県まで出向いてくれたのだった。

そして当初は実家では会ってくれなかったがそのうち人目もあるので金沢市内のホテルでならと穂波の母親だけは会ってくれるようになり、何度かそこで話し合いの場を持った。

最終的には園田家としては穂波が女性になってしまった事も含めてさくらとの結婚はやはり認め難いが、もうお互い成人でさくらもそして御船家もきちんとしていて誠意もあるのは伝わって結婚に真剣なのは分かるのでこれに関して咎めはしないと云う事になり穂波の「お嫁入り」が決まったのだった。

そうこうしているうちに司会者が壇上に立ち「本日は皆様おめでとうございます。それではこれより御船家・園田家の結婚披露宴をはじめさせていただきます。」と告げるとドアが開き、バージンロードをウエディングドレスに身を包んだ二人の「花嫁」が並んで歩き、こちらに向かって進んでくる。

「きれい・・・・・。」
「なんてお美しいのかしら・・・・・。」

会場からの二人の余りの美しさを見た故の感嘆とため息が交じる中、しずしずと長いトレーンを引きずるようにして優雅に穂波とさくらは絨毯の上を進む。

穂波はロープデコルテ、そしてさくらはマーメードラインの強調された純白のウエディングドレスにきれいに花嫁らしいメイクとヘアメイクを施されたとても美しい花嫁姿で、それもあってお互い普段からかなりの美形ではあるが今日は更に美しさが引き立っている。

「穂波さんきれいねー・・・・・。」
「やっぱり穂波さんはあたしたちとは違うな・・・・・。」
「でもおふたりって本当にお似合いって感じね・・・・・。」

そうつぶやきながら悠子たち同期の元研修生たちも美しすぎる穂波とさくらのウエディングドレス姿に見入っていたし、会場のあちらこちらからも二人の余りの美しさにため息が漏れてきていた。

そして披露宴は開宴の挨拶の後、媒酌人や来賓の挨拶・スピーチがが入れ替わり立ち代わり続き、乾杯のご発声の後はウエディングケーキ入刀へとつつがなく進んでいった。

ケーキ入刀の後、一旦新婦二人がお色直しの為に退席するとお待ちかねの会食タイムとなり、お料理もさすがさくらと穂波が念入りに決めたメニューだけあってどれもとても手が込んでいて美味しかった。

そうこうしているうちにお色直しが終わり、カラードレスに着替えた穂波とさくらが改めて会場に戻ってくると先程と同様に場内は大きくどよめいた。

「まあ・・・・・純白のウエディングドレスも素敵だったけど、カラードレスも二人とも本当によくお似合いだわ・・・・・。」

そんな参列客のどよめきとつぶやきを背に穂波は鮮やかな水色、そしてさくらは名前のとおり淡いピンク(桜色)のシンプルながら華やかさも兼ね備えたデザインのオーガンジーのドレスを身に纏い、美しいドレス姿で各テーブルをゆっくりと回りながら置かれたキャンドルに火をつけていく。

「きゃー!、穂波さんったらとってもきれいー!。」
「今日の穂波さんってとっても素敵ー!。」
「お二人ともこのドレスすっごく似合ってるー!。」

等と自分たちのテーブルに回ってきた二人に声を掛けた悠子たちだったが、その言葉が耳に入ったのか穂波は悠子たちの方を向いてにっこり微笑んでくれた。

穂波は披露宴の最中も終始笑顔だった。それはずっと思い続けていた本当の自分の姿、すなわち女として人前でも四六時中堂々と居られるようになり、それに加えて容姿端麗且つ頭脳明晰なだけでなくLGBTQに理解のあるさくらの元に嫁ぐ事ができてその上こうしてきれいな花嫁衣裳を着て大勢の人に祝福されている今日のこの事実に頬が緩みっぱなしなのだった。

そして一通り式次第が終わり、お決まりのブーケトスの時間となった。
花嫁から投げられたフラワーブーケを受け取る事ができれば、それは幸せのバトンを繋いだと同じ意味と言われている事もあり、今日のこの穂波の幸せそうな表情と美しすぎるドレス姿を目の当たりにし、またそれが玉の輿でもあるので結婚に憧れを抱く様になっていた悠子たちは自然と気合が入った。

「それでは参りまーす、まずは一つ目ー。」

今日は花嫁が二人いるのでまずはさくらがブーケトスをし、続けて穂波の番になった。

「では二つ目ですー。みなさんしっかりゲットして下さいー。どうぞー!。」

そう司会者の合図で穂波がブーケをゆっくりと投げると、きれいでかわいらしい花束がゆるりと回転しながら落ちていく。

「あ、こっち来るよー!。」
「えっ?。どこどこー?。」

次の瞬間、穂波の投げたブーケは涼子によってしっかりと握られていた。

「わーすごーい!!、涼子ちゃんやったねー!!。」
「えへへ、ブーケ貰っちゃった・・・・・。」

と涼子、悠子、紗絵の3人がブーケをゲットして喜んでいるところに穂波がやってきた。

「涼子ちゃんよかったわね。これで次は涼子ちゃんがお嫁に行く番ね、うふっ。」
「ありがとう・・・・・。これであたしも穂波さんみたいにお嫁に行けるかしら?。」
「大丈夫よ、涼子ちゃんなら小瀬戸島でもお姉様方には人気があったし、絶対いいお嫁さんになれるわ。」

そんな二人のやりとりを見ながら悠子と紗絵もなんだか幸せのお裾分けをもらったような気分になっていたし、ゆくゆくは誰かの元に嫁いで幸せな結婚生活を送りたいとここでもまるっきり女性としての気分に浸っていた。

月日は更に流れて9月になり、悠子の所属する人材開発課では極秘裏に進められていた小瀬戸島での次期女子化研修生の人選が大詰めを迎えていた。

穂波のさくらとの結婚がきっかけで、レズビアンだけど「子種」だけは欲しいと云う百合花倶楽部会員からのニーズの高まりや、保養所に国の内外からやってくる「女の園」を楽しみたい利用客の増加もあって女子化研修生を増やすのは急務となっていた。

なので前期は7名の男子社員を女子化させるべく小瀬戸島に送り込んだが、それでも足りないので次期は10名程女子化研修生が欲しいと現場から言われた事で悠子は結構忙しい毎日を送っていた。

人選にはまだ試作段階ではあるものの極秘にとあるソフトウエア会社が開発したSNS上にアップされている女装写真を普段の男の時の写真と照らし合わせて顔認証するシステムを使い、社内に何人か居る隠れて女装している社員をあぶり出していた。

また涼子がアルバイトをしていた女装して接客するバーや似たようなお店に客のふりをして通い、女装したキャストと親密になると甘い言葉と好条件をちらつかせてビューティービーナスへ転職をさせたり、キャストが学生バイトの場合には内定を出して新卒で入社させたりしていた。

これに加えて悠子や純子がそうであったように再教育が必要と云う報告・推薦が上がってきた社員についても審議を重ねて概ね候補者が出揃い、今日から数日間は小瀬戸島での長期研修について個別面談が行われるのだった。

もちろんまだこの時点では候補者が無理矢理女子化させられるだなんて事は伝えず、自分もそうだったように長期研修とはどう言ったもので何をするのかとか小瀬戸島がどんな場所なのかを説明するのだが、長期研修の経験者と云う事で悠子も説明役を担っていたのだった。

「えー小瀬戸島研修所はですね、瀬戸内海の真ん中に浮かんでいる小さい島ですがこんな風にすごく風光明媚な場所でしてね・・・・・。」と悠子はパンフレットやタブレットで動画や写真を見せ、女子化候補者に小瀬戸島の説明をしながら「魅力」を説いていく。

「へえー、噂には聞いてましたがうちの会社ってこんな施設を持ってるんですねー。それにこの島で新商品を開発する素材とかを栽培したり研究したりしてたんですか・・・・・。面白そうなとこですね・・・・・。」

と何も知らない女子化候補の男子社員はタブレットの画面を見ながらそう言い、そして「そうなんです。小瀬戸島は慣れるまでは大変だけど、慣れたら面白いところですよ。」と返した悠子の言葉には実感がこもっていた。

「うふふ、顔認証システムにかけたら頻繁に女装して着物やドレス、それにセーラー服などなど女の子の着るものは一通り着ちゃってる写真がいっぱい引っ掛かってきてるあなたにはここは絶対すばらしい場所になる筈。だから小瀬戸島に行って遠慮なく女になって来なさいね。ふふふ。」

と自分が女装子である事がバレているとは露知らない目の前のおとなしそうな男子社員を見ながら悠子は心の中でつぶやいた。

「そうよ、もっともっと君みたいな人材は小瀬戸島に行ってあたしみたいに女になるべきなの。確かに女になるって大変だけどなってみれば男の時よりずっと楽しいのよ。だから君も女になりましょうね。うふふっ。」

そしてこの候補者が長期研修への参加を内諾すると、今度はまた別の候補者が入ってきて悠子は同じ様に説明をはじめた。

「しめしめ、まずは1名女子化研修参加決定ね。この調子で女子化研修参加者を増やしちゃうぞ・・・・・。いい?、あなたたちはこれから小瀬戸島に行ってあたしみたいに女になるのよ。そして女になるだけじゃなく、あたしたちとおんなじMっ気たっぷりのぺ二クリ娘になるの、ふふふ。」

こうしてまたビューティービーナスの男子社員がひとり、またひとり女子化されていく。それも単なる女性でなくぺ二クリ娘として、そして従順な牝犬兼マゾ女の資質を兼ね備えた「商品」として女子化されていくのであった。

あれから穂波はさくらとの間に子供を授かり、来年にはさくら共々「ママ」になる事が決まった。

また島に残った涼子は後進の女子化の指導兼調教に励みつつ、バーシトラスに通ってくる常連客を何人も掴んでそのレズエッチの上手さに何人もの「彼女候補」になっていてモテモテだった。

紗絵はマーケティング課でヒット商品を早くもいくつか企画・開発し、また研修を終えて女になってからのそのあどけなくて可愛らしいところが先輩・同僚社員からも非常に好評で人気者になっていた。

そんな同期たちの姿を見て、悠子は「この研修はリバイバルプランでもある」と小瀬戸島に行く前に言われた事を思い出していた。

辛く厳しい小瀬戸島での研修を終え、女になってよかったかどうかと聞かれたとしたらまだ悠子の中では答えは出ていない。

ただ女子化研修に行かなければあのままいつまでも仕事のミスを引きずってくすぶったままだっただろうから、こうして女になった事で自分自身「再スタート」が切れたのは実感しているし、同期の誰もが同じような気持ちなのは変わりなかった。

「次の方どうぞー。」「は、はい。し、失礼します。」

そして悠子は本日3人目の女子化候補生の面談を始めたのだった。

(おわり・最後までお読みいただいてありがとうございました。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?