幻獣戦争 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才⑭
2023.04.06『幻獣戦争』より発売
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序章 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才⑭
同時刻、俺達は神代博士達と合流して整備と補給を受けていた。幻獣の出現まであまり時間は残されていないだろう。補給が終わり次第、神代博士達には一樹と一緒に撤収してもらおう。二機だけでは守り切れない可能性がある。
「一樹、訓練部隊の撤収はどうなっている?」
俺はコックピット内で回線を繋ぎ一樹に問う。
「大分てこずっているみたいです」
「そうか……仕方ないな。演習場全域のスピーカーに繋いでくれ」
コックピットモニターに表示され返答する一樹に頷き、俺はナビゲーションAIに指示。恥ずかしいがやるしかないな。恐らく欺瞞情報だと疑っているのだろう。
「了解。天照を中継して繋ぎます――どうぞ」
ナビゲーションAIの報告を聞き、俺は一度深呼吸する。
『私は比良坂舞人陸将だ。聞こえているか訓練隊員諸君! 連絡は受けていると思うが、君達の近くに幻獣が出現しようとしている。速やかに訓練大隊指揮所に合流、撤収を開始せよ。これは演習ではない! 疑心暗鬼になるのは分かるが、君達は自衛軍軍人であり上官の命令に従う義務がある! 速やかに行動し撤収を開始せよ。心配するな! 君達が速やかに行動すれば誰も死にやしないし君達自身も絶対に死なない!』
「よし、後は監視と報告を頼む」
演説を終えた俺はナビゲーションAIに改めて指示。
「了解」
ナビゲーションAIはそう答え、コックピットモニターの隅に最小化してある戦域図に訓練部隊の撤収状況を更新する。
「中々にいい演説でしたね」
演説を聞いていた一樹が冷やかすように言って笑みを浮かべる。
「よしてくれ恥ずかしくなる。それよりも一樹。補給が終わったら一旦博士達の護衛に回ってくれ」
「了解。でも、ぎりぎりまで貴方の支援に回りますからね」
俺の指示に一樹は軽く頷き応じる。俺のことを心配しているのか……ありがとう。
「二人とも補給終ったわよ」
無線越しにそう言って神代博士が俺達に回線を繋いできた。
「了解。装備はこのままなのか?」
俺は回線の設定を切り替え、コックピットモニターに一樹と並列表示された博士に訊ねながら、機体ステータスを表示して確認する。見る限り試験の時と兵装があまり変わっていない。
「ええ。今回はおまけも付けておいたから我慢して頂戴」
博士は頷きそう付け加え、近接用長刀つき大型楯の画像をコックピットモニターに表示する。
「新型装甲で作られた長刀と楯よ。楯は表層に結界のような力場を発生させている代物だから、大抵の攻撃は防げるはずよ。持って行って頂戴」
「わかった。感謝する」
「僕の分はないようなので、両手に電磁加速砲をもちます」
そう解説する博士に俺が礼を述べると、一樹は支援に徹するつもりなのかそう発言した。
「そうしてくれ」
「幻獣濃度さらに増大! 出現します。座標を戦域図に更新します」
俺が頷くと同時にナビゲーションAIが急報を告げる。コックピットモニターに拡大表示された戦域図には、水平距離で演習場から20キロ離れた西原村山中に敵勢勢力が新たにマッピングされている。
「……訓練大隊まだ撤収途中か。一樹、野戦演習場にでて制圧射撃を敢行するぞ。訓練大隊の撤退を支援する」
注意を引く必要があると判断した俺は短く指示する。
「了解」
一樹は頷くと通信を切り機体を移動させ始めた。
「あたし達も撤収するわ」
「ああ。一次砲撃終了後一樹を其方に回す。管理部隊と仲良く撤収してくれ」
「了解よ。それじゃ要塞でまた会いましょう」
俺の言葉に博士はそう答え通信を切った。
俺は先行した用意してくれた装備を受け取り、一樹に合流するべく新型10式ミカヅチを発進させた。
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2023.04.06『幻獣戦争』より発売
次回に続く
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