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幻獣戦争 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才⑮

2023.04.06『幻獣戦争』より発売

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序章 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才⑮

 一樹と合流して野戦演習場平原地帯に出た。俺達は持っている装備を一旦地面におき、両腰部の新型一六〇ミリ滑空砲のグリップを握り、射撃体勢に入る。弾倉には先ほど検証が終了した試験弾の制式版が装填されている。

「天照より情報を受信――幻獣出現を確認。映します」
 ナビゲーションAIは報告すると戦域図を縮小更新。続いて現地のライブ映像をコックピットモニターに表示する。中型幻獣が続々と現出している。先行はタウロス型が多いようだが――こちらを向いていない!

「まずい、進路は市街側だ。こちらに注意を引き付ける。砲撃開始!」
 俺は無線で一樹に指示する。
「目標、敵幻獣集団。データリンク照準による砲撃準備完了」
 ナビゲーションAIの事務的な報告を聞くと同時に俺はトリガーを引いた。
 並列している2機の一六〇ミリ滑空砲4門が火を吹き、敵幻獣集団へ向け攻撃が開始される。

「それにしても、たった2機で面制圧とか笑えませんよ。本当」
「そうだな。本当なら試験を終えて帰投していたはずなんだがなあ」
 無線越しにボヤく一樹に俺は無線越しで軽く愚痴る。
 最中、2機の射撃が先行して出現している幻獣集団に着弾。大規模な爆発を伴い敵集団の左翼が消滅。爆発の規模が大きく、時を待たずしてあまり減衰していない衝撃波がこちらまで到達。衝撃波で機体が揺れる……注意を引けたんじゃないか? 俺は手ごたえを感じる。

「敵集団、市街地への前進を止めこちらに進路を向けました」
 ナビゲーションAIが報告を述べ戦域図の情報を更新する。更新された情報を基にさらに俺達は射撃を敢行。見る見るうちに敵性マーカーが消失していく。しかし、これで終わる幻獣ではない。ライブ映像が更新され、出現地点から新しいタウロス型幻獣が現出。タウロス型幻獣集団は、こちらに気づき生体ミサイルで応戦を開始。

「肩部サーマルガトリングでミサイルを迎撃!」
 せまるミサイルを目にすぐさまナビゲーションAIに指示する。サーマルガトリングの自動射撃が開始され、生体ミサイル群を迎撃。撃破されたミサイルの爆発と衝撃で粉塵が舞う。コックピットモニターの視界が土塵まみれになるが、構わず滑空砲による射撃を継続。

 爆発音が鳴りやまない中、訓練隊員を乗せた兵員輸送車が演習場より移動を開始。どうやら無事撤収してくれそうだ。
「訓練大隊の離脱を確認。敵集団の砲撃停止を確認」
「よし。一樹、博士達を頼む」
 ナビゲーションAIの報告を聞き射撃を止め、無線越しで一樹に連絡する。
「了解。死なないでくださいね」
 一樹は無線越しで答えると、射撃を止め機体を後退させ神代博士達との合流を急いだ。

「さて、正念場だな。機体チェック」
「機体ステータスを更新……戦闘継続に問題なし。新たな敵集団を補足」
 機体チェックを終えたナビゲーションAIは、報告するとモニターに映る戦域図を更新する。
「演習場正面か……主力か?」
 俺は新型一六〇ミリ滑空砲を収め、地面に置いた楯と電磁加速砲を装備する。更新されている戦域図では、訓練大隊と神代博士達一団も無事大矢野演習場から離脱して要塞へ向かっている。今現在この場にいるのは俺の機体のみだ。

「西原村方面に新たな敵集団、タウロス、蜘蛛およびオーガ型が出現。こちらに向けて前進中」
「正面敵集団の解析を頼む」
 ナビゲーションAIの報告を聞き、俺は改めてそう指示する。
「了解……………解析終了。敵集団に指揮官型幻獣の反応を確認。天照へ情報を転送。敵集団出現までおよそ300秒」
 解析を終了させたナビゲーションAIの報告を受け俺は思案する。このまま踏みとどまるか、撤退するか……5分後には新たな敵集団が来る――敵を固めてしまったほうが砲撃する側は楽か。 

ここまでお読み頂きありがとうございます! 

次回に続く


2023.04.06『幻獣戦争』より発売

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