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ステイホーム中にウェルビーイングを高める2つのキーワード

2020年3月、世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス(COVID-19)はパンデミックであるとの認識を示し、世界中で新型コロナウイルスの蔓延を抑制するために、社会的距離を置く政策とロックダウン政策が実施されました。その他さまざまなレベルの制限が実施されたことは、すべての人の日常生活に劇的な変化をもたらしました。

これまでのパンデミックと検疫はいずれも精神衛生を損ない、うつ病、気分の低下、不眠症、ストレスなど、さまざまな悪影響をもたらすことが研究によりわかっています。現在の新型コロナウイルスによるパンデミックも、心理的幸福に悪影響を及ぼし、うつ病や不安などの心理的脅威につながることが示唆されています。

こういった背景から、新型コロナウイルスパンデミックでの外出制限下においてもウェルビーイングを高める方法を特定することが急務であるとして、3つのポジティブ心理学的介入の有効性を評価する研究が行われ、2020年11月に『The Journal of Positive Psychology』に発表されました。今回はこの論文の示すところを簡単に見ていきましょう。

ウェルビーイングを高める3つの介入

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Photo by Pro Church Media on Unsplash

ポジティブ心理学では、さまざまな困難のなかでウェルビーイングを高める方法として、時間の方向性の異なる次の3つの介入の役割を示しています。

1.郷愁=過去
2.感謝=現在
3.可能な限り最高の自分=未来

1.郷愁=過去

郷愁には自尊心、自己継続性、社会的つながり、楽観主義、意味、そしてポジティブな影響が高まり、孤独や死の認識などの脅威を緩和することもわかっています。

2.感謝=現在

感謝の気持ちの介入の1つとして「3つのよいこと」(=毎日、その日に起こった3つの良かったことや感謝することを書き出す方法)がありますが、これを1週間毎日続けると、幸福とポ​​ジティブな影響が増加し、抑うつ症状が減少し、最大1年続くという研究結果があります。

3.可能な限り最高の自分=未来

自分にとって最高の結果について書いたり想像したりすることで、ウェルビーイング、ポジティブな感情、楽観性が高まることが研究によって示されています。また、痛みの強さとストレスに対する生理的反応を軽減し、苦痛を緩和するのに有効であるという研究結果もあります。

現在と未来に焦点を当てることが大切

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Photo by Felix Rostig on Unsplash

これらの3つの介入を行った結果、結論としては、「感謝=現在」と「可能な限り最高の自分=未来」に焦点を当てることが、新型コロナウイルスパンデミックでの外出制限下におけるウェルビーイングの促進に効果的だったことが示されました。

今後の外出制限時には、以前の生活にとらわれるのではなく、困難な状況下でもウェルビーイングな状態を維持するための手段として、よりポジティブな現在または未来志向の見通しを持つことが大切であるといえるでしょう。

現在と未来へ焦点を当てる方法

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Photo by Green Chameleon on Unsplash

最後に、「感謝=現在」と「可能な限り最高の自分=未来」に焦点を当てる具体的な方法をご説明しておきましょう。

3つのよいこと

「感謝=現在」へ焦点を当てる方法として「3つのよいこと」(「Three Good Things」=TGT)が有効です。やり方は簡単。毎日、1日の終わりに、その日よかった3つのことを書きとめ、「このよいことはなぜ起きたのだろう?」と自分の言葉で考えてみます。

たとえば「今日は夫が仕事帰りに私の大好きなアイスクリームを買ってきてくれた」と書いたなら「彼は思いやりのある人だから」と考える、というイメージです。

この方法は、最低1週間は続けてください。その後はどれだけ続けても大丈夫です。ただし、書きとめる内容は3つであること、1日の終わりに書くことが重要です。10個書いたり1日の始めに書いた場合はほとんど効果がないことが研究でわかっていますから。

可能な限り最高の自分

「可能な限り最高の自分=未来」(「Best Possible Self」 =BPS)に焦点を当てる方法として、研究では次の方法が採用されました。

まず、すべてがうまくいき最高の状態になった自分を1分間想像します。その後、その自分について15分間、書き出します。書き終わっても手を止めず、また繰り返し書くなどして15分間ずっと書き続けることが重要です。誤字脱字や文法、構成など何も気にせずに気持ちのおもむくまま書き綴ります。

15分経ったら手を止めて、可能な限り最高の自分、理想的な未来の生活について5分間想像してください。できるだけディテールまで細かく想像するのがポイントです。

まとめ

帰省できない、友達に会えない、旅行できないなど、パンデミックによる外出制限は私達の心に大きな暗い影を落としています。そんな時に、今に感謝し、未来を考えることでウェルビーイングが向上する可能性が示されました。ひとりで、あるいはご家族とぜひ試してみてはいかがでしょう。

参考: Evaluating the impact of a time orientation intervention on well-being during the COVID-19 lockdown: past, present or future?

Text: 池田美樹
Top photo by Ava Sol on Unsplash



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