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そのメッセージ、受動的攻撃性を含んでいませんか? ―チャットでの感情表現の留意点―

チャットで、以下のようなメッセージを受け取ったら、どんな風に思いますか?

「はい、わかりました。」

あるいは、以下のようなメッセージ。

「はい、ありがとうございました。」

なぜか、相手は怒っているのではないかという気持ちにさせられませんか?後者のメッセージは特に、文意は感謝のはずなのに、それとは真逆の否定的な感情を抱いているように思えてしまいます。なぜなのでしょうか?

文末に句点を打つことであらわれる受動的攻撃性

カナダ在住のインターネット言語学者であるマカロック氏は、チャット等での短文のメッセージの最後を句点で終わらせてしまうと、受動的攻撃性(Passive aggressive)を相手に感じさせてしまう恐れがあると指摘しています。

受動的攻撃性とは、怒りを直接的に表現せずに、無視することや批判すること、皮肉すること等によって、非直接的に相手を攻撃することを意味します。意図的な場合もありますが、無意識的にそうした印象を相手に感じさせる行動をとって、職場や仲間うちの雰囲気を悪くしてしまうこともあるようです。

書き言葉では、複数の文章を分割し、読みやすい文章とするために句点を用います。ただし、チャットでは基本的に単文メッセージでやり取りすために、メッセージの最後にその終わりを示す句点を入れてしまうと、相手との関係性に終わりを引くような否定的な感情を抱かせてしまうようです。

単文のチャットメッセージでは、文末に絵文字や「!」などの感嘆符を用いたり、3点リーダ「…」を用いたり、相手の印象を和らげる工夫が必要のようです。

こうした議論が日本だけではなく、マカロック氏が対象としている英語圏でも話題になっているというのが驚きでした。

打ち言葉の文化

紙に文章を書いてやり取りする「書き言葉」、面と向かった相手と声に出してやり取りをする「話し言葉」に加えて、スマートフォンを使ってSNSにメッセージを入力することは「打ち言葉」と呼ばれているようです。

文化庁の2018年の報告書「分かり合うための言語コミュニケーション(報告)」では、次のような記載があります。

「打ち言葉」には,書き言葉としての従来の日本語表記とは異なるものも多く認められます。顔を合わせての会話では表情や声の調子という言語外の情報も互いに読み解きながらやり取りをしますが,書き言葉にはそれらの情報
が欠落しています。「打ち言葉」ではその欠落を補うために顔文字や絵文字といった代替手段が発達してきました。

対面のコミュニケーションで笑顔で、ゆっくりと落ち着いて話して、相手を安心して聞ける環境をつくるのと同じように、チャットメッセージでも相手が受け入れやすい雰囲気を作ることが重要のようです。

しかし、メッセージ表現は難しい…

言うは容易いのですが、チャットメッセージで良い雰囲気を作るのは難しいと思います。一番の難敵は、世代間ギャップではないでしょうか。

文末の表現を気にかける必要があるという一方で、いわゆる「おじさん絵文字」などの存在も指摘さているようです。

また、リモートワーク下でチャットでのやり取りが多くなり、直接的なメッセージではなく、三点リーダーを用いたぼかしたメッセージも多いようです。これもあまりに多いと、「あえて言葉にしなくても自分の心情を察してくれる」だろうという、いわゆる察してちゃん的なズルさを相手に感じさせてしまうかもしれません。

三点リーダーを使うのは、ほどほどにが良さそうです。

まとめ

きょうはチャットメッセージの中での感情表現の注意点を考えるための視点をいくつか紹介してみました。リモートワーク下でチャットのやり取りが増えている今だからこそ、参考にできそうな視点がいくつかあるように思います。

大事だとは思いつつ、世代間ギャップもありそうで、効果的に実行に移すのは難しそうで、今後も考えていきたいと思います。

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