週G1213-9

スタッフインタビューVol.2:GRAPHのPM(プロジェクトマネージャー)は、“らしさ”を活かしてみんなを引っ張る。

GRAPHには、PM(プロジェクトマネージャー)と呼ばれる人たちがいます。

営業や渉外を担当したり、ブランディングの方向性について考えたり、知財管理に関わったりしています。人によってはプリンティングディレクターの役割を担い、ものづくりに深く関わることも。

私がGRAPHさんと接点を持ってからもう10年になりますが、スタッフは全員“デザインする人”なのだと思っていました。

どうやら違うらしいぞ。気づいたのはそこそこ最近のことで……

東京オフィスには5人のPMがいて、私はいつもGRAPHへ行くとPM 島の隣に陣取っているため、彼らがスタッフ同士や、電話で話している内容を耳にします。

その内容が本当に多岐にわたっていて驚きます。本社スタッフとの印刷物の進捗確認のやりとりや、お客さまからの連絡、モックアップや印刷見本のチェック、見積もりの出し方についての協議、新規企画のアイデア出し、ブランディングやものづくりに欠かせない知財戦略の打ち合わせ、プレゼン資料づくり……。

なかなか一言で言い表すのは難しそうですが、「PMってどんな仕事をしているの?」について、東京オフィスのリーダー・若狭健さんに突撃してきました。

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▲多くのお客さまや、社内スタッフかが頼りにする若狭さん。


お客さまの求めるイメージを実現するため、“翻訳”でつなぐ

現在、GRAPHに入社して10年目。

本が好きで、もともとは書店に勤務していました。

当時から強く興味を持っていたのが、印刷やデザイン。ファッションも好きだったことから、アパレルブランドのデザインなどを手がけていたGRAPHの仕事にひかれて、入社するに至ったのだそう。

ただ、印刷やデザインが好きだったとはいっても、仕事として関わるのは初めてのこと。

最初はさまざまな戸惑いがありました。

「GRAPHでは、デザインやものづくりにおいて『技術とセンスと翻訳能力』が大事だとよく言われるのですが、PMは翻訳を担当する仕事だといえると思います。

お客さまやデザイナーが意図したいイメージをきちんと翻訳して現場に伝え、形にしていくのですが、最初のころ、一番難しかったのはその翻訳の度合いでした。

どの程度まで追い求めればいいのか、その基準が自分の中にできるまでは苦労しました」

たとえば社内で印刷物をチェックするとき。

印刷機を使っての印刷結果は、1000枚なら1000枚が全く同じ仕上がりになるとは限らないため、最初に刷ったもの、最後に刷ったもの、その中間で刷ったものを並べてチェックします。

(※本番印刷の途中経過は、参考として保管するため数部取っておくのが通例。「刷り取り」と呼ばれます。)

「ある仕事で刷り取りをチェックしたところ、明らかに違って見えたので、現場にそれを伝えたんです。そうしたら現場の職人から、『どう違うのか言ってみろ』と言われまして。

当時は今ほど知識がなかったので、“なんとなく赤っぽく見える”など、印象だけでやりとりしていたら、『それはお前の自己満足だろう』と言われたんです。

僕としては、自己満足ではなく、目指していた印刷物の完成形と照らし合わせて、そこからずれていたから指摘しただけのつもりでした。

現在は、僕の中にある基準、先輩の基準、現場の職人一人ひとりの基準、お客さまが求めている基準が全て異なるということだと考えています。

それらをいかに翻訳してつないでいくか、ということなんです」


起こりうるできごとにどう対処し、いかに乗り越えるか

GRAPHのPMの仕事を表すもうひとつのキーワードが、「なんとかする」人たちである、ということ。

「10 年間仕事をしてきた中でとくに印象深い案件のひとつで、とあるトラブルが起こったことがありました。そのときに一成さんから言われたのが、“PM は、なんとかするのが仕事だ”ということなんです」

それは数年前の冬のこと。

若狭さんの記憶に鮮明に残る、“壊れたパンフレット事件”が起こったのでした。

「とあるイベントのチラシやポスター、パンフレットの制作に関わらせていただきました。関係者が豪華なこともあり、華やかでメディアに対しても引きのある仕事でしたし、僕から、どうしてもやりたい、やらせてくださいと社内にお願いしました」

GRAPHではポスターやチラシ、パンフレットのアートディレクションと印刷を担当。制作自体は順調に進み、一成さんや現場の職人たちとのやりとりもおもしろく、充実感を感じる仕事でした。

しかしイベント本番の当日。

パンフレットを納品したところ、「開くと背表紙がぽろりと外れてしまう」というトラブルが起こってしまったのです。

「電話がかかってきたのはイベント初日。急いで納品先へ行き、検品したら、初回納品した2000冊のうち、問題ないものは500冊ほどでした。イベント期間中の2〜3日分はそれを使うとして、残りをどうするか。

時間的にも刷り直しはできないので、いまあるものを活かしてなんとかしなければなりませんでした。

パンフレットが壊れてしまった原因をつきとめ、現場のスタッフ総出で解決策をもちより、検証を重ねて、必死のリカバリー作業に明け暮れました。会社全体、本社のスタッフや外部の職人さんたちも協力して動いてくれて、無事に乗り越えることができました。

楽しくてやりがいのある仕事でもありましたが、それだけでは、ここまで自分の記憶に残る仕事にはなっていなかったかもしれません」

ここから得られた教訓は、「どれだけ準備して対策し、リスクヘッジしたつもりでも、予期せぬことは起きる可能性がある」ということ。

この仕事も、それまでになかった仕様でリスクは事前にわかっていたため、検証を重ねて対処してきたはずでした。

ところが、パンフレットが壊れてしまう事故は起こってしまった。

そして、その後の経験から、起きてしまったできごとにどう対処するか、いかに乗り越えるかが大切だと実感したのだといいます。

そして、それがPM のもっとも重要な役割であることも。


各PMが得意分野を活かして力を発揮できるように

入社してから、「もう続けたくない」と思ったこともあったという若狭さんですが、少しずつ積み重ねて、気がつけば10年が経っていました。

「GRAPHはお客さまのためなら基本的に“どれだけやってもいい”んです。

チャレンジさせてもらえる環境があります。それが続けてこられたポイントのひとつかなと思っています。

個人的なことでいえば、飽き性な性格であることを自覚しているので、だいたい1ヶ月ほどでひとつの仕事の区切りがつき、次々に違う仕事に関わっていける環境にあるのも、自分に合っているのかもしれません」

現在、東京オフィスのほかにも、兵庫県加西市の本社、京都事務所と、各所にPMが在籍しています。

「アパレル出身、デザイナー出身、ウェブディレクター出身など、みんな全く違うバックグラウンドをもっています。

大事なのは、お客さまや社内のスタッフを引っ張っていくことができるかどうかなので、それぞれが得意なジャンルで力を発揮できればそれでいいと思っています」

私もGRAPHさんに通うようになってから、「◯◯の件なら誰々さんに聞けば教えてくれそう」という感覚が、少しずつ掴めてきている気がしています。

それぞれ得意にしていることや、積み重ねてきたことが違うので、受け持つ仕事も自然と割り振られていくようです。

若狭さんはどちらかというと、ものづくりに関わるお仕事が多いそう。

とくに本が好きなことから、本をつくる仕事があると、ついやったことがないことに挑戦したくなり、いろいろ提案しがちになるとか。

その一例がこちら。

2019年6月に発売された TAKI PRODUCTSの『デザインじゃないデザインのはなし』も、さまざまな挑戦が詰め込まれています。

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▲詩人や写真家などが独自の視点でとらえた”デザイン”について、自由に展開する書籍。『デザインじゃないデザインのはなし』© TAKI corporation.

「たき工房のデザイナーさんと表紙の打ち合わせをしたときに、『イルミカード』という蛍光色の素敵な用紙を使いたいという話になったのですが、予算の関係上断念せざるを得ませんでした。

そこで、オフセット印刷で、イルミカードと同じくらいインパクトのある蛍光グリーンにチャレンジすることをご提案したんです。

狙う色を出すためにインキを2色を使っているのですが、調肉を担当する工場長が、あっという間に展色してくれました。さらに製本も、全ページが袋とじになっていまして、西洋の古い手製本のイメージを共有しながら作り上げました」

(※この話の詳細は、別途また記事を書きたいと思っています)

インキ1色では物足りないから、2色表現に挑戦する。

古い手製本の雰囲気を目指したいから、”きれいすぎる製本”ではだめで、「未完成が完成」であるというイメージを職人さんと共有しなければならない。

お客さまと社内の人たちみんなをつなぎ、引っ張っていくために、まさに“センスと技術と翻訳能力”が問われる仕事なのです。

挑戦には当然リスクもともなうので、“なんとかする力”も必要です。

「人を集めてものごとを動かす仕事なので、きっと編集にも近いのではないでしょうか」

うんうん、そうですね。

編集の仕事も、人や時間や場所など、さまざまなものを編んで、つなげて、形にする仕事だと思います。最後は“なんとかする”のも同じですね。

若狭さんがいると東京オフィスは引き締まる気がします。

ムードメーカーであり、頼れるリーダーですね。白か黒かの判断もものすごく早いので、なにか困りごとがあれば若狭さんに相談すると、他の人に振ることも含めて、スパっとさばいてくれます。

若狭さんには定期的にいろんなお話を聞いていく予定ですので、どうぞお楽しみに!

※GRAPHでは現在、AD、PMなどを募集しています。

(2020年1月10日応募締切)

詳細はHPをご覧ください。デザインでものごとを解決したり、よりよくしたり、新しい価値を生み出したりしたい!という想いを持った方との出会いをお待ちしています。

AD職についてご興味がおありの方は、東京オフィスのAD・吉本さんにお話を聞いたこちらの記事をぜひご覧くださいね。


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