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GRAPHのAD(アートディレクター)は、じっとしていません。

デザイン会社における職務のひとつ、アートディレクター(AD)。

クリエイティブディレクターとともにデザイナー陣を束ね、クリエイティブ全般を取り仕切るのが主な仕事です。

ただ、GRAPHのADの職務範囲は、もっと幅広いようです。

兵庫の本社工場にいる、PD(プリンティングディレクター)や職人とのやりとりは日常のこと。営業や渉外を担当するPM(プロジェクトマネージャー)ともコミュニケーションしながら、常に複数のプロジェクトを動かしています。

PCの前で黙々とデザインするだけじゃなく、観察する、耳を傾ける、考える、つくる、伝える、売る、広げる。

業務範囲のボーダーを超えて幅広く活動するADの仕事について、東京オフィスで ADを務める吉本雅俊さんに聞きました。

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デザインは、“おせっかい”からはじまる。

アートディレクターやデザイナーというと、基本的にはオフィス内でPCに向き合い、延々と手を動かしている……というイメージがあったのですが、吉本さんはあまり席でじっとしている印象がありません。

いつも誰かと話しているし、外に出ることも多いような。

GRAPHには“デザイン部”や“営業部”のような明確なボーダーがありません。全員がデザイナーで、全員が営業で、全員がものづくりのプロ。

だからADも、いろんな業務を担います。

「僕はデザインって、“おせっかい”だと思っているんです。いかに踏み込んでおせっかいできるかが鍵なのかなと。たとえるなら、風邪をひいたときに薬を処方するだけでなく、問診をしたりレントゲン撮影をしたりして根本的な本質を見出そうとする医師のような存在だと考えています」

医師が問診をしたり症状を観察したりして治療の見当をつけるように、デザインでもまずは「仮説を立てる」のだと吉本さん。直感的にデザインイメージが思い浮かぶこともありますが、それはいったん置いておいて、「仮説は本当に正しいのか?」と追求したり、「もっといい形はないか?」と模索したりします。

そのために大切にしているのが、お客さまの話をじっくり聞いて、自分の目や耳、五感で直接感じること。

「何事も、現場を見て、リアルに起きていることを体感して伝えなきゃいけないなと思っています。たとえばお茶のパッケージに関わるならば、現地に行って茶摘みを体験して、つくり手の人たちと夕飯をご一緒したりして色々話をします。そうすることで想いや考え方が見えてくることがあります。そういうものを引き出すため、いろんな方向からアプローチをしています」

実際にデザイン作業に取り掛かるのは最後の最後。ロジックや事実を積み上げて、最初に立てた仮説をよりよいものにした後です。

吉本さんが担当したプロジェクトのひとつ、プリンスホテルのスキンケアブランド「ASAGI」でもそうでした。

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「ASAGI」は、2018年に発売された、プリンスホテルのオリジナルスキンケアブランド。GRAPHにパッケージデザインの依頼がありました。

「このシリーズの一番の特徴は、貴重で神聖な霊峰・八海山(新潟県南魚沼市)の伏流水を使うという点でした。天然の超軟水で、やわらかく、染みわたるような心地よさがあり、肌に潤いをあたえてくれる。飲んでみても本当に美味しい水なんです。これはスキンケアの価値というよりも、元となる水の価値をきちんと伝えるべきではないか、と考えました」

なぜプリンスホテルがスキンケアを出すのか。どんなお客さまに届けたいか、何に共感してもらうか。

商品の価値をきちんと伝えるために、商品開発の鍵を握る“水”が生まれる現場・八海山に、吉本さんも足を運びました。

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結果的に、特別な水の価値を伝えるためにはパッケージデザインだけではなく、イメージ写真やコピーも必要だと考え、ブランディング全体について自主提案。当初の依頼にはなかったホームページ制作などもGRAPHで担当することになりました。

本社工場の職人たちと追求した、透明感のあるブルー

データ上のデザイン作業だけでなく“ものづくり”のフェーズにも、ADは全面的に関わります。

社外の人たちとのやりとりはもちろんですが、ADひとりでデザインはできません。社内でのコミュニケーションもとても大切。兵庫県加西市にあるGRAPH本社には印刷工場があり、吉本さんも毎日現場のPDや職人たちとやりとりしています。

スキンケアシリーズにおける最大の価値を“水”に設定したことで、ブランドのイメージカラーはブルーを想定。しかも、澄みわたるような心地よさを表すことのできる、透明感のあるブルーが必要でした。

「ブランド名のASAGIは元から決まっていた名前だったので、まずは手元にある色見本から浅葱色(あさぎいろ)を並べてみました。そこから、この色は黄色が強すぎる、青が強すぎるなどと範囲を狭めていって、澄んだブルーをつくりこんでいったんです。狙った色が出るまで、本社工場の調肉担当の工場長や印刷の職人たちともやりとりし、4回ほどチャレンジしました。リーフレットやアイテムごとのパッケージなど、使われている紙が違っても、すべて同じ印象に仕上がるように設計されています」

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(↑右端が最終OKとなった色見本)

完成したものを目にする素人からすると、いとも簡単なように思えるのですが、“透明感を出す”って、ものすごく難しいことなんだそうです。繊細な色ほど、ちょっとした理由でにごりやすく、くすみやすいから。

たとえばこちらのリーフレットは……

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紙袋やパッケージに使っている紙と比べるともともとの紙地の色の白色度が少し低いため、くすみやすいのだそう。紙によってインクののりや、インクを吸収する度合も異なるため、アイテムによって極端に異なることがないよう、気配りが必要なのです。

まだ世の中に例をみない、表現が難しい澄んだ色をブランドのキーカラーに設定できるのも、挑戦し続ける印刷現場と隣り合わせのデザインチームだからこそ。

デザインの力で、ものごとを応援する

プリンスホテルとは「ASAGI」以降も関係が継続しており、現在、さまざまなプライベートブランド商品のデザインを手がけています。

緑茶やコーヒー、梅干し、日本酒。いずれもプリンスホテルが自信をもってセレクトした商品です。あの「ASAGI」に使われた水も、ペットボトル入りミネラルウォーターとして販売しています。

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「プリンスホテルさんは全国に展開しているホテルグループで、各地域や、さまざまなものの産地と密接なつながりがあります。その強みを生かして商品をセレクトし、販売してこられたのですが、商品はいいものでも、パッケージデザインやウェブ、店頭での展開の方法など“伝え方”に課題を抱えている場合がありました。現在は商品ひとつひとつに向き合い、パッケージやPOPのデザインを行っています。単体で考えるだけではなく、ブランドとして全体の統一感を出せるようにすることも意識しています」


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販促ツールのデザインや撮影のディレクションも行っています。

梅干しと日本酒についてはコピーまわりで八木も少し関わらせていただきましたが、吉本さんと高島さん(プロジェクトマネージャーとしてプリンスホテル案件を担当)の現場のお話を聞くのがいつも楽しみでした。

実際にものを作ったり、挑戦したりしている人たちと話をし、顔が見えるようになると、ただキレイだから・かっこいいからというエゴだけではデザインできなくなる、といいます。

「誰かの一人勝ちのためではなくて、世の中のために意義があると感じられるものごとに対して、“デザインで応援する”という感覚でいるんです」

「デザインで応援する」って、いい言葉だなと思いました。

何度か話をしていても感じたのですが、吉本さんはとても聞き上手。

話を聞いてくれるし、質問してくれるし、急かすこともないし、なるほどと受け止めてくれるし、意見も言ってくれる。(・・・褒めすぎ?)

デザインの力を借りたいと思ったら、きっと頼りになります。

※GRAPHでは現在、AD、PMなどを募集しています。

(2020年1月10日応募締切)

詳細はHPをご覧ください。デザインでものごとを解決したり、よりよくしたり、新しい価値を生み出したりしたい!という想いを持った方との出会いをお待ちしています。


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2019年12月連載開始。Design×Printing=GRAPHを標榜する、グラフ株式会社のことについて、主につづります。おおむね毎週金曜日更新。 執筆者:八木美貴 編集・ライター。 デザインや建築、インテリアなどのジャンルでムックや雑誌、ウェブ等を編集執筆しています。
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