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【アーカイブ】ベルフェゴールの手記2

※関連する内容
●【アーカイブ】ベルフェゴールの手記 1

PRIDE 第3話「勇者たちの輝き① 魔博士ベルフェゴールの実験」

●PRIDE 第4話「勇者たちの輝き② 危険なネズミ」

●PRIDE 第5話「勇者たちの輝き③ 目指すは最強」


魔王ムレクを倒した転生者の子供を探そう

手始めに、勇者ファブリス一行を探す

転生者は、ヤツらと行動を共にしていたという

そうだ! この際に、あまり気の進まなかった実験に付き合ってもらうとしよう

強化したインプ、凶暴化させた分裂するネズミ、魔獣化させた聖獣……

試したいがわざわざ実験相手を用意するのが面倒だったため、後回しにしていたがこれは良い機会だ

ムレクやディドロスとの戦闘データを見る限り、勇者ファブリス一行は実験に最適な強さだろう


それから数日後、ワタシは連中がシェコ付近の鉱山に魔族討伐に来るという情報を掴んだ

下級悪魔たちに鉱山を実験場に作り直させ、ワタシは待ち伏ることにした

何も知らない愚かな勇者一行と転生者が、ノコノコとやって来る

だが、そこに転生者の姿は無かった

ファブリスの話によると、海上ではぐれたらしい

まぁよい

チャンスはまだある

転生者の代わりに、身分の高そうな若い女とメイドのような女がいる

ちょうどいい

この2人にも実験に付き合ってもらおうではないか

アークデーモンの遺伝子を組み込みんで筋力を強化したインプの実験には、カルロッテという武闘家の女が挑んだ

素早い身のこなしのカルロッテに対して、筋力を強化したインプはあまりにも鈍重過ぎたようで、全く動きについていけていなかった

相性の問題もあるが、これは改良の余地だらけだな

結局カルロッテによって、いとも簡単にワタシの実験体は敗れてしまった


だが、次のネズミは悪くなかった

切り離された体の一部から、小さな自分のクローンを増殖させる能力を持たせたネズミ

勇者ファブリスと僧侶のリズとやらが、ワタシのネズミに挑んだ

正直なところ、先ほどのインプ同様に一瞬で勝敗が決すると思っていた

しかし、どうやらファブリスたちは実戦経験があまり多くなかったようだ

増殖能力を持つ敵を前にリズは、魔法による回復で耐えようとしたのだ

どれだけ優秀な魔術師でも魔力量には限りがある

一方のネズミは数を増やし続け、ネズミの攻撃は激しさを増し続ける

時間を稼いで突破口を見つけようとしたのだろうが、守りに徹した時点でファブリスたちにとっては厳しい戦いになっただろう

やはり戦闘経験の少なさが災いしたのだろうな

身分の高そうな若い女、マリナとやらは打開策を提案していたが、すでにリズに余力は残っていなかったようだ

ヤツらの仲間が選手交代を申し出たが、断った

別にどちらでも構わなかったのだが、勇者とその仲間がネズミに喰い殺されるとすれば、これほど愉快で滑稽な話はないからな

ワタシは事前に邪魔が出来ないように防御壁を張っていた

その壁に阻まれ、ヤツらは目の前で大切な仲間がネズミに貪られていく様を眺めることしかできない

観客の魔物たちの興奮も頂点に達し、歓声が響き渡る

ネズミたちの狂ったような鳴き声が、さらに観客たちを盛り上げる

ファブリスも勇者の技を2度放ったが、すでに限界だ

やがてヤツもネズミに飲み込まれていった


だが、想定外の事態が起きた

マリナ、そしてヤツの傍にいるメイドのような女のエマ

2人がワタシの防御壁をいとも容易く打ち破り、フィールドに侵入してきたのだ

そしてマリナは、瞬く間にネズミを全滅させた

あの女の皮膚はどうなっている?

どう見ても普通の柔らかそうな人間の皮膚だ

それにも関わらず、ネズミの歯で一切傷がつかないどころか、なんと噛みついているネズミの歯が折れてしまったではないか!

驚いたのはこれだけではない

ネズミによるショーを台無しにされた下級悪魔たちが一斉に襲い掛かるも、それすらも光のようなスピードで一掃してしまった

インプやグレムリンはともかく、レッサーデーモンまでが!

ワタシはその圧倒的な戦闘力に対し、気が付くと自然と拍手を送っていた

今のワタシの手持ちではどうしようもない

いや、恐らくディドロスやクレフィラでもこの女には敵わないのではなかろうか……

それに恐るべきはマリナだけではない

エマとやらも、この一瞬の内に死の淵からファブリスとリズを回復させたのだ

さすがに分が悪かろう

ワタシは潔く、魔界へと戻るのだった


敗れた悔しさは微塵もない

むしろ新たに興味深い対象を見つけたことで、歓喜すらしている

転生者を捕らえると並行して

あのマリナという女も捕獲したいものだ

恐るべき強さの秘密はなんなのか

あの皮膚は、どこまで耐えられるのか

どの時点から痛みを感じるのか

そもそも痛みを感じるのか

捕らえてじっくりと調べたい

そしてあの強さを我が研究にも活かしたい

ワタシは部下に、あの女のいかなる情報でも手に入れるように指示を出した

転生者もあの女も

全てはワタシのモノになるのだ


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