見出し画像

借金返済のためSEから車販売へ フェアレディZに取り憑かれた男|【さらばリーマン】逆境を乗り越える編

☆逆境を乗り越える画像(1280×500)背景黄色 (1)

イラストレーション
木原未沙紀(Misaki Kihara)

東海道・山陽新幹線のグリーン車に搭載されている月刊誌『Wedge』の人気連載「溝口敦のさらばリーマン」。勤め人を辞めて、裸一貫で事業を始めた人、人生の窮地を起業で乗り越えようとした人、趣味を仕事にしてしまった人、自らの事業で社会課題を解決しようとした人など、起業家たちの人生や日々奔走する姿をノンフィクション作家の溝口敦氏が描きます(肩書や年齢は掲載当時のもの)。

文・溝口 敦(Atsushi Mizoguchi)
ノンフィクション作家、ジャーナリスト
1942年東京都生まれ。暴力団や新宗教に焦点をあてて執筆活動を続け、『食肉の帝王』(講談社)で第25回講談社ノンフィクション賞などを受賞。

小村英樹さん(400×400)

小村英樹さん(Hideki Omura)
Zone(ゼットワン)代表取締役(51歳)

      (※肩書や年齢は掲載当時のもの)

 若いときの苦労がまるで身に染みつかない人がいる。会ってみて明朗闊達かったつ、話しぶりにユーモアと余裕があり、どこにも貧相な感じがない——。

 小村英樹さん(51歳)もそういう人たちのひとりである。21歳のとき3000万円の借金を抱え、毎日ペヤング焼きそば1個で過ごした人などとはとうてい思えない。

 今は相模原市で日産フェアレディZ32に特化した中古車販売と修理の会社「ゼットワン」を営んでいる。年商約1億円。整備士などスタッフ4人と一緒に新型コロナの荒波をかぶりながらも、まずまず食べていける経営という。フェアレディZ32の愛好家がこの世にいるかぎり続けられる商売だろう。

 1969年、島根県松江市生まれ。父親は日野自動車のメカニックや営業をしていた。

ここから先は

2,461字
この記事のみ ¥ 100

いただいたサポートは、今後の取材費などに使わせていただきます。