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【イベントレポート】「GX」×「鹿屋」※オンライン開催※ 2023.12.16

「GX」×「鹿屋」をテーマとしたイベントを事務局として開催しましたのでイベントレポートにて報告いたします。(主催:鹿屋市)

今回のイベントは、地域を超えた取り組みを紹介する連続セミナーの第三弾として開催しました。テーマであるGX(グリーン・トランスフォーメーション)とは、脱炭素社会へ向けた取り組みのことを指します。
鹿屋市では従来より農業や畜産が盛んなこともあり、昔から培われてきた知恵を活かすことで、環境問題への配慮と企業の利益追求を共に実現できる可能性があります。また、今後さらに都市部の企業と地域の企業が共創していくことで、社会性と経済性を両立する新しい事業の創出も可能ではないかと考えています。
本セミナーでは、「サステナビリティ」や「イノベーション」をキーワードに、地域での実践事例も交えながら、鹿屋市でGXに取り組む魅力や可能性について深堀りしました!


イベント概要

▶日程:2023年12月16日(土)18:00~20:00
▶主催:鹿屋市
▶運営:株式会社ワークデザインラボおおすみ
▶場所:オンライン開催

第一部:オープニング

まずはじめに、鹿屋市のオープンイノベーションに向けて「リナシティかのや」をご紹介しました!本施設は令和6年4月1日にリニューアルオープンの予定です。人と人をつなぐ「オープンイノベーション拠点」の創出を目的として、新たにコワーキングスペースが設置されることとなっています。

今後、地域課題の解決を目指して様々な企業がこの場で出会い、共に新規ビジネスを創り上げることを目指しています。こうした中で、今後テーマとして「サステナビリティ」や「GX」の観点が大切になってくることから、本セミナーではこの先の具体的な実現に向けて、GX×鹿屋の展望を様々な角度から考えました!

第二部:サステナビリティ・GX×新規事業の潮流とは

第二部では、3名のゲストの方にご登壇いただき、サステナビリティやGXと新規事業の潮流についてお話いただきました!

■サステナビリティとイノベーション

はじめにGreen room株式会社にて、SDGs/サステナビリティ専門メディア「GREEN NOTE」の編集長をつとめる鈴木諒子さんから「サステナビリティとイノベーション」をテーマに、サステナビリティについての全体感や世の中の流れをご紹介いただきました。

(鈴木)サステナビリティの歴史は、1972年に遡ります。この時ローマクラブが『成長の限界』を発表し、「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」と警鐘を鳴らしました。この先私たちが従来の生活を続けていけば、地球1つでは資源が足りないとも言われています。この状況を打破するためには、今までのやり方ではとても追いつかず、違ったアプローチとしてのイノベーションが必要となります。

今後複雑化する問題を解決する一つのきっかけとして、「地球システム」「社会システム」「人間システム」の3つの観点のバランスをとることが大切になります。
このうち「地球システム」とは、サステナビリティ学において、地球全体の生態系をどう維持していくかという視点です。「社会システム」とは私たちがつくる政治や経済などの社会が持続的であるかという視点であり、「人間システム」とは、個々人のライフスタイルや健康のことを指します。
課題解決に向けては、これら全体のバランスを考えていくことが肝要であり、バランスを意識せずにイノベーションを興そうとすると、意図しない結果につながってしまうと言われています。

では、今後サステナビリティのためのイノベーションをどのように興していけばよいでしょうか。方法として、「課題解決による新しい価値創造」と、「既存事業をサステナビリティ軸へ価値シフトする」という2つのパターンが挙げられます。
具体例として、これまでに「GREEN NOTE」で取り上げた企業の取り組みをご紹介します。例えば、DG TAKANOは、デザイン思考で水不足を解決する「超節水ノズルBubble90(バブル90)」を開発しました。元々兼ね備えていた精密加工業の技術を活かすことで、従来の節水ノズルと比べ、洗浄力も高く国際特許を取得しました。また最近では「水ですすぐだけで油汚れも細菌も落とせる食器」も新たにリリースしています。

こうしてサステナビリティの考えをうまくビジネスに取り入れることで、ビジネスチャンスを生み出したり、SDGsウォッシュを防ぐことができるのです。

■ビジネスとしてのGX

続いて、Work Design Labパートナーの佐藤隆さんから、ビジネスとしてのGXをテーマに、GXの実践という観点から、ビジネスとGXの関係性や可能性についてお話いただきました。

(佐藤)私は商社に勤務する傍ら、ビジネスの力を利用して後世に残る環境を残したいという想いで活動しています。明確に言えることは、GX=ビジネスチャンスということです。そもそもビジネスは課題のあるところからしか生まれません。GXの現状も課題があるからこそ、ビジネスチャンスの宝庫だと考えています。

具体例を挙げると、例えば太陽光発電やEV市場などは右肩上がりです。差別化という観点で言えば、自社の活動におけるCO2排出量についても比較できます。現に大企業はビジネスにおけるCO2排出量の測定を完了し、削減目標達成のための実行フェーズに移行しています。排出状況の中身をみると、半数以上はサプライヤーから購入した製品が納入されるまでに排出されることもわかっています。そのため、サプライチェーンの川上である事業者がGXに対応しないと、ビジネス機会の損失になると言えます。

ここについては、農業や畜産が盛んな鹿屋市にとっても大きく関係してくるところです。例えば誰もが知る食品メーカーの原材料を製造している企業も鹿屋市には存在します。この先大手メーカーの環境基準に達していない商品は買ってもらえないという状況も起こりえますし、だからこそ今から競合他社と差別化をして、環境への取り組みが自社のブランディングにもつながるよう戦略を立てることも重要になってくるのです。
故に、サプライチェーンの変革は川上の企業にとってこそ重要であり、チャンスとも言えます。サプライチェーンで価値を創出し、お客様のためのGXとなることを期待したいです。

■若者と目指す持続可能性

最後に、Hands UP 代表取締役の難波遥さんから、若者目線でのサステナビリティについてお話いただきました。

(難波)私は学生時代にHands UPを創業しています。活動の原点となったのは、フィリピンへ留学した際に経験した物乞いです。当時は物乞いされたことに驚き、咄嗟にジュースを渡してしまったのですが、こうした選択や決断の一つ一つが社会を作っていることを実感しました。その後こうした選択をより地球目線で考えていけないかと思い、今日まで学生起業家として様々な活動をしてきました。

そんな私が皆さんに問いかけたいのは「皆さんは世界を、地球をデザインするデザイナーですか?」ということです。デザインとは、広義に解釈したデザインです。例えば今ごみをどこかに捨てると、そのごみはすぐにこの地球に影響を及ぼします。だからこそ、地球に住む全員がこの世界を作っている自覚を持つと共に、一人一人がプロのデザイナーとして行動していくことが求められていると思います。

また、2022年時点におけるSDGsの達成度ランキングによれば、日本は79.6ポイントで19位、1位はフィンランドで86.5ポイントとなっています。達成度の内訳は、日本の場合「教育」「技術」「平和」の項目で目標を達成していますが、「気候変動」「ジェンダー」の達成度が低く、対応が遅れています。一方フィンランドは「教育」では高い評価を受けているものの、その取り組みは最近になって伸びてきているそうです。フィンランドの例から、元々の強みである分野を伸ばしつつも、新しい課題や変化にどれだけ柔軟性を持って対応できるかが重要であるとも言えます。
加えて、柔軟な変化対応という観点では、情報察知能力の高いZ世代やα世代の力を借りることも大切になっていきます。彼らの力を活用することで、今後日本が新しい分野でイノベーションを興し、SDGsの達成度を高めていけるのではないかと考えます。

第三部:パネルディスカッション(サステナビリティ・GX×新規事業@鹿屋)

第三部では、ワークデザインラボおおすみの伊藤がファシリテーターとなり、鹿屋市におけるサステナビリティ・GX×鹿屋をテーマにパネルディスカッションを実施しました!
登壇者は、第二部でゲストとしてお話いただいた、Green room株式会社の鈴木さん、Work Design Labパートナーの佐藤さん、Hands UP 代表取締役の難波さんと、株式会社オキスの取締役兼ワークデザインラボおおすみの代表である岡本です。
それぞれの立場から、鹿屋市とサステナビリティ・GXの関係性について熱く語りました!

■オキスでの実践例「小いも」プロジェクト

(岡本)私からは事例として、株式会社オキスで行っている規格外のじゃがいもを活用した「小いも」プロジェクトをご紹介します。株式会社オキスは、郷土である大隅半島を元気にすることを目的に、鹿児島県で農産物の生産及び乾燥野菜の加工・販売・流通を行っています。

弊社では、大手メーカーさんのポテトチップスの原材料となるじゃがいもを生産しています。その中でどうしても規格外の小さなジャガイモが出てくるのですが、以前まではそれをただ畑に捨てていました。この「小いも」を何とか活用できないかと考え、実践したのが「小いも」プロジェクトです。
流れとしては、まず障がい者の方に「小いも」の収穫や箱詰めを行っていただきます。その後、近隣の飲食店の方に「小いも」を購入してもらい、レシピを考案していただくと共に、SNS等で取り組みを発信していただくというものです。
このプロジェクトを通して、「農福連携」を実現することが出来ました。障がい者の方々の雇用を生むことで福祉に貢献し、同時に食品ロスの削減にもつながった事例です。

■地域企業におけるサステナビリティ・GXの現状

(伊藤)今後、多くの企業がこうした取り組みを実践するにはどうしたらよいでしょうか。皆さんの意見を伺えたらと思います。

(佐藤)現状では、GXはビジネスだと捉えられている企業や自治体は少ない印象です。川上の企業はGXに取り組むことでコストがかかるため、その分高く買ってもらえるのかといった経営課題も立ちはだかります。実際のところまだ川下の企業に向けて価格交渉を行うのは難しいのが現状です。私の立場としては、川上の事業者に対して、サプライチェーンの川下にあたる大企業は脱炭素について重視していること伝えて、理解を深めてもらうよう努力しています。

(岡本)地域企業の温度感としては、比較的若い経営者の方はGXやサステナビリティについて関心が高く、セミナーがあれば参加したいといった声も多く聞きます。

(鈴木)地域企業の感度を高めていくためにも、まずは小さくてもいいので成功事例をつくることが大切だと考えます。地域企業が連携して取り組んで出来た事例を我々メディアが発信することで、やがて大きなメディアに取り上げてもらったり、大手企業から協業のお声がかかるような流れが出来れば、地域企業の皆さんにとってもGXはビジネスチャンスだと実感できると思います。

(難波)学生の目線から考えたときに、今の学生は企業を選ぶ基準も「社会に対するインパクト」を重視しているように感じます。どのような事業を行っていたとしても、根底として地球によい影響を与えている企業により魅力を感じている印象です。社会課題を解決しているということが学生のモチベーションにもつながるので、今後企業としてもGXの取り組みを積極的に発信していくことが大切だと考えます。

■今後のサステナビリティ・GXにおける可能性

(伊藤)GXをビジネスの観点で考えたとき、鹿屋市にとって今後どのようあ可能性がありますでしょうか。

(佐藤)この地域は、サプライチェーンで見たときに元々川上の産業が多いことが特徴です。これらの企業がCO2排出量を削減することで、サプライチェーン全体としての排出量削減に大きく貢献できます。また、先程のオキスさんの事例にもあったように、すでに原材料廃棄の削減に取り組んでいたり、対外的にアピールできる事例が他にもあるのではないでしょうか。

(岡本)土地柄、昔から自然に寄り添って仕事をせざるを得ない環境でもありました。地方の中小企業にとって元々自然に行っていたことが、実はSDGsにつながっていたということもあります。今後生まれるコワーキングスペースでは、そういった情報交換を行うことで、GXの取り組みをより広げていけたらと思います。

(鈴木)鹿屋市は、地理的にアジアに近いことも魅力の一つだと思います。ASEAN諸国で台頭しているスタートアップ企業と連携を図るなど、今後海外にも目を向けることで、より一層GXビジネスの可能性を広げていけるのではないでしょうか。

(難波)鹿屋市に取材に来た際に、廃校をリノベーションしたホテルに宿泊しました。部屋の名前が校長室や保健室になっていたり、細かな工夫がされていてとてもわくわくしました。社会課題に若者を巻き込む際にも、「楽しい×社会貢献」や「おしゃれ×社会貢献」といったキーワードで取り組むことがあります。こうしたユニークな視点も踏まえながら、考えていくことも一つだと思いました。

(伊藤)鹿屋市にある既によい取り組みをシェアしたり、今後さらに発展させていくためにも、新しくできるオープンイノベーションを拠点として活用していけたらと思います。

おわりに

本セミナーでは「GX×鹿屋」をテーマに、新たに設置されるコワーキングスペースの活用も踏まえながら、現状の課題や今後の展望について話し合いました。
まずは第一歩として、既にある取り組みをPRしたり、小さな成功事例を積み重ねていくことで、今後鹿屋市からサステナビリティやGXのさらなる好事例を広げていくことが期待されます。

今年度の都市×鹿屋シリーズでは、数回に渡りセミナーを実施してまいりました。Facebook内ではオンライン共創コミュニティを立ち上げていますので、活動に興味のある方や、共感いただいた方はぜひご参加をお願いします!

WDLおおすみでは、これからも
「地元、鹿児島県鹿屋市を盛り上げていきたい」とお考えの方や
「本業以外で地域に貢献したい」とお考えの方と
地元企業を繋げる取り組みを続けていきます。

複業を通じて、ワクワクすることに携わってみませんか?

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