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自作100文字創作集

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これまで書いた100文字小説、詩集です。 1つ5秒で読めます。良かったらどうぞ。
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2020年12月の記事一覧

トナカイさん[自作ショートショート㊸]

笑い者になっても主役を立て続ける真っ赤なお鼻のトナカイさんのおかげで、サンタさんは遠方までプレゼントを届けることができる。笑い者になれるトナカイは強い。そもそも、人を笑わせることは立派な才能だ。

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第四十三作目。

真っ赤なお鼻の〜♪です。

ではまた。

福笑い[自作ショートショート㊷]

作った顔が、泣いてても、怒っていても、形容し難い表情でも、その遊びは福笑いと呼ばれる。笑ってなくても福笑い。そう考えると、喜怒哀楽をもって生きていること自体が福なのかもしれない。鏡の前で、少し早めの福笑い。

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第四十ニ作目。
喜怒哀楽の怒と哀って敬遠したい存在ですが、喜怒哀楽が

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あれ!?私って、、[自作ショートショート㊶]

「あれ!?私って収入少なすぎ!?フォロワー少なすぎ!?」ラッピングバスが通り過ぎた。他人と比較しても仕方がなかろう、と笑っていたらもう一台通り過ぎた。「あれ!?私って幸福度低すぎ!?」男は考えこんでしまった。

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第四十一作目。
比較否定論へのアンチテーゼです。
比べることもあるさ

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アリとキリギリス[自作ショートショート㊵]

黒い群れはアリさん。毎日、足を使ってあくせく。目立つ緑色はキリギリスさん。特技を磨き個性を光らせる。それぞれ異なる才能を持っている。アリもキリギリスも電車に揺られてガタンゴトン。今日も明日もガタンゴトン。

-----------------------------------------------------------第四十作目。
ホワイトカラー、ブルーカラーと言う概念があります。それをもじ

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透明人間[自作ショートショート㊴]

私が優秀であることは、定量的に証明されていると男は言った。なるほど確かに、男の功績は数字で明らかだ。しかし、どうしたことか。男は透明だった。男の積み上げた数は男の外部にあるから目に見えるが、男は透明だった。

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第三十九作目。
これまでの結果や経験は、自身のアイデンティティを形作

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東京[自作ショートショート㊳]

植え込みの傍に、ゴミ捨てボックス、まばらに点灯する街灯、冷たい外気、総じて薄暗い裏路地、すぐ隣で国道を車が走り抜けているのに、この路地には人影がない。ふと目に入った不法投棄の文字、ここが東京なのである。

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第三十八作目。
東京と聞いて様々なイメージがあると思いますが、5年くらい

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固いもの[自作ショートショート㊲]

それはとても固く、動かなかった。感情や思考は、頻繁に姿形を変えてそれの周りに漂っていた。意志はそれに匹敵するほど固い時もあったが、時に砕け、時に感情や思考と混ざり新しい形に変質していった。事実のみが堅固だった。

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第三十七作目。
私は色々考え込む性格です。
だからこそ、考え込ん

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次世代へのバトン[自作ショートショート㊱]

託すことは、与えること、そして手放すことかもしれない。男はそう思った。歳はそう離れていないようだ。続ける、辞める、諦める、様々な選択肢の中、託すことを選んだ人がいる。ベビーカーが男の横を通り過ぎていった。

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第三十六作目。
次世代にバトンを繋ぐという考えがあります。
誰かがバト

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意味[自作ショートショート㉟]

意味を研ぎ澄ませていたら、意味が摩耗してしまった。理由にしても同じことだった。手のひらに残るのは激情のみだった。男は手のひらを見つめて気づいた。いつだって、己を突き動かすのはそれで充分だった。

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第三十五作目。
サブテーマは刀鍛冶です。

ではまた。

やる象[自作ショートショート㉞]

「やるぞう。」小さくそう呟いた。そうしたら横にやる象が立っていた。やる象はパオーンといななき、長い鼻を器用に使って僕を背中に乗せてくれた。地平線の向こうまで見えそうな景色が西日に照らされていた。

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第三十四作目。
絵本的世界観シリーズ、シマウマ、ハシビロコウに続き今回は象です。

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盾と矛[自作ショートショート㉝]

コンクリートに舗装された道路の傍らには一対の盾と矛が無造作に転がっていた。どちらが強いのか、道ゆく誰もが一瞬頭をよぎったが、すぐに歩きスマホで去っていった。

そう、この時代、武器など取らない方が利口なのだ。

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第三十三作目。
戦いと攻撃は性質が違う気がします。
戦いは面と向か

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ボリューム[自作ショートショート㉜]

「自分は薄っぺらい人間だが」が口癖の男だった。その前置きの後には決まって、傷一つない宝石のような言葉が出てきた。彼は雄弁だった。雄弁に似合わぬ枕詞は死ぬまで外れなかった。彼は厚みのある人生を送れたのだろうか。

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第三十ニ作目。
高校の時英語の長文問題で、self-defende

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望み[自作ショートショート㉛]

はっきりと撃鉄が落ちる音が聞こえた。握りしめた拳を一瞥したのち、親指を緩め、人差し指と中指をピンと立てた。拳ではない。彼の怒りを形取るにはこの形状が最適だった。彼の人差し指が男の眉間を指した瞬間、銃声が響いた。

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第三十一作目。
ぶっぱなーす、です。
書いてて思いましたが、完全

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コップの水[自作ショートショート㉚]

足りない。およそ半分ほど注がれている透明なコップを眺めながらそう思った。半分、も、入っているとは到底思えなかった。

コップの中では自分の流した汗、涙が静かに渦を巻いていた。足りているとは思えなかった。

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第三十作目。
半分も半分しか論と見せかけて、もう一捻りしてまっせ的な作品

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