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グルメ記事を書く記者は、料理なんか食べない。


 皆さん、こんにちは。グルメの本来の意味は「大食らい」です。木賃ふくよし(芸名)です。
 その点で言うと、ワタクシは間違いなくグルメって事になりますね。馬鹿みたいに食うし。


 さて。ここの所、ワタクシはこのnoteで、自称ラーメン通、自称ラーメン評論家的な存在を散々こき下ろしておりますが、ぶっちゃけ、雑誌の取材なんかにも少々苦言を呈したいのが本音である。

 ワタクシは飲食店を経営して24年ほどで廃業した訳ですが、その間に受けた取材は40件ぐらいだろうか。
 殆どが雑誌で、後年になるほどネット記事、TVは3件ほど。

 なお、ネット記事は店に関係ないところで取材を受けたりもしたが、それは割愛させていただく。基本的に店オンリー、雑誌オンリーの話だ。
 で。この雑誌の取材だが、


 ぶっちゃけ、料理に手をつけるライターさんは5人に1人以下だ。

 そう。

 ほとんどの記者は、
 食わずに記事を書いている。


 これが現実。まあ、それ自体を特に責めるつもりはない。ちゃんと食う記者さんもいるし。
 ただ、雑誌って毎週だの隔週だの月刊で出版されてる訳だ。
 それに何十店舗、何百店舗の飲食店が紹介される。料理専門誌、情報誌、旅行誌、とんでもない数だ。
 これを全部きちんと取材してる時間も金も人員もない。
 実際、「今日1日で、あと、6軒回らなきゃいけないんで」と言ってたライターさんもいた。

 そりゃ食ってられないのが現実だ。

 雑誌だって毎回同じ店ばかり紹介してる訳にもいかないし。また、「取材費を出せないから食うな。撮影用だ」とする出版社があったり、「どうせ食わないだろ」と撮影用の料理を出す店もある。

 けど、食われないのはやはり寂しい。
 無論、店としては宣伝にさえなればそれでいい。食わなくても良い記事さえ書いてくれたらそれでいい。そんなもんだ。
 しかし、ファックスやメールで送られてきた原稿を確認すると、誤字脱字や住所などの情報が間違っているケースが6割。
 いや、これは誤字脱字を責めているのではなく、おそらく取材件数が尋常ではない数なのだろう。つまり、それぐらいの店を1日で回ってる。食えないのは仕方ないと思うのだ。
 かと言って、ライターの数を増やせば人件費が上がる。おそらくはそーゆー事情なのだ。

 なお、殆どの場合、取材の謝礼はゼロ。多分、全40社の中で1社だけ¥3,000くれた。
 別にこっちは宣伝になってくれればいいので、謝礼がなくても何とも思ってない。

 なお、
 提供した飲食物は
 殆どが無償である。


 要はタダ食い。いや、タダ食わないだな。

 なお、これもワタクシは文句をつけてる訳ではない。
 もし、こちら側から雑誌に広告を載せてくれ、と言えば広告費用が掛かるのだ。

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 ※ 左ページ掲載で6万、右ページは12万円ぐらい。(当時の最低価格)

 雑誌にもよるが、大体1/8ページで最低3万円ぐらいだったか。つまり、1/4の普通の記事で6万円は掛かる。
 それが料理の原材料費数千円で済むなら超お得。だから、そこに文句は全然ない。

 単にツイートで多くの人が気にしてたようなので、現実はこんなもんだよ、って話をしてるだけである。

 何社も取材を受けると、こっちも慣れたもんで、段取りは大体把握している。
 料理を提供し、カメラマンがそれを撮ってる間に、ライターさんがインタビューしてくるのが殆ど。
 大体カメラマンもライターもフリーランスで、要は本社の人間なんか使ったら交通費が掛かるから現地のフリーランスを使うって事だろう。
 で。撮影の機材出して、撮影して、機材しまうまでの時間がインタビュー。

 なぜ店を始めたか、どんな客が多いか、こだわりは何か、大体いつも同じことを訊かれる。

 で。撮影後に「良かったら、食べて行ってくださいね」と促すものの、大体は「この後もまだスケジュールが詰まってるので」と言われる。
 正直に「もう2軒ほどで頂いてしまってて、申し訳ないのですがお腹いっぱいで」というケースもあり、これはむしろ好感度が高い。
 一番感心したのは、「頂いていいんですか!?」というライターに、「次の取材の時間が押してるよ」と嗜めるカメラマン、という芝居を見せられた事である。
 芝居なのはわかったが、その心遣いや良し。しかもキミらフリー同士で初顔合わせって言ってたよね。ナイスコンビネーションすぎるだろ。
 無論、少数なれど、

 「いただきます! 撮影で冷めちゃったのがもったいないですね!」

 って人もいる。
 それに取材費用がケチられてるのも、人員が足りてないのも、現場のせいじゃない。
 まあ、ぶっちゃけウチは宣伝してもらってる立場なのでカメラマンやライターさんを悪く言うつもりはない。
 それに、ライターの仕事は良い記事を書くことである。
 格闘技のライターが格闘技を習っている必要はない。
 無論、精通はしていて欲しいと願うが。

 あとウチの場合は「〇〇ウォーカー」全盛期に取材が集中したのもある。要はグルメ誌と言うよりも情報誌で、どれだけ新しい情報か、どれだけオシャレか、どれだけその数が多いか、が問われた時代。
 情報誌 → フリーペーパー → インターネットと情報源が推移していった訳だが、ウチはワインブームに引っかかったので、まさに情報誌全盛期。
 また、直接ツイートの方を読んでいただければ、色々と補足されているし、引用RTから色んなご意見を見られるが、


 ・TVは見栄えがあるので食べる。
 ・店舗の数が少ない地方ほど食べる。
 ・テイクアウトできる所は持ち帰りしてくれやすい。
 ・最近はSNSで悪口を書かれると困るので、謝礼が出る。


 などの情報が寄せられている。
 実際、持ち帰りじゃ駄目なの?って声もあるが、「テイクアウトは法律が違う」「持ち帰りに適さない料理も多数」「取材の間は常温放置」なので難しい。

 それに、前の店で貰ったパスタをブラ下げて、次のイタリアンには行けんだろ。

 って事情もあるから仕方ない。

 あと、TVなんかのテロップで出てくる、


 この後スタッフが美味しくいただきました。


 はウソなのかよ!? とか言われますが、


 店のスタッフ()が美味しくいただいてるので、
 ウソではありません。


 ウチの店だとワタクシが平らげてます。はい。

 何も全面肯定するつもりはありませんし、全面否定もしませんが、腑に落ちない疑問もあります。しかし、恩恵も受けている立場なので、悪く言うつもりはありません。
 単に、気に入らなかったからって悪口を書き連ねる自称食通や、辛口と悪口を履き違えてるレビュアーだけをこき下ろすのはフェアじゃないかと思って、記事にしてみたまでです。

 少なくとも、
 どれほどの良記事であろうと、
 その記事に誠実さはないよね、と。


 あと、もう廃業したから何とでも言えるわな。って話で。


 ただまあ、そうですね。ええ。



 自腹切ってるからって
 偉そうに文句を書き連ねる自称評論家

 vs

 食ってもいないのに
 美辞麗句を並び立てるライター

 vs

 自腹を切らず、失敗を恐れ、
 レビューや記事を信用する読者



 って、現実は今日も地獄以下だな、って思った次第です。はい。

 結局はこの記事も含め、エンドユーザーが自分で吟味して利口になって行かなきゃ、いつまで経っても無限地獄なのよ、と。



 ※ この記事はすべて無料ですが、「ええーっ!? 料理提供させて金を払わないのかよ!」って思った人は、記事を読んだのに無料って事に憤りを感じるはずですから、投げ銭(¥100)をお願いします。
 なお、この先には手元にあった雑誌のワタクシの若かりし頃の写真をアップしてます。

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(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。