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ハラリ『サピエンス全史』&『ホモ・デウス』を読む

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『サピエンス全史』を中心に、ユヴァル・ノア・ハラリの著作に関するnote+αを集めました。
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#推薦図書

見ることも触れることもできない世界へ -広井良典著『無と意識の人類史』を読む

広井良典氏の『無と意識の人類史』を読む。 人類の歴史は、人間たちの「意識」のあり方の歴史でもある。 広井氏は意識について、それが「"脳が見る共同の夢"」としての「現実」を作り出すものであると書かれている(『無と意識の人類史』p.24)。 これはユヴァル・ノア・ハラリ氏が『サピエンス全史』や『ホモ・デウス』で論じた「虚構の力」にも通じるところがある。 "脳が見る共同の夢"は「現実」であり、「有」の世界、「ある」ものたちの世界である。それに対して「無」とは、意識が、自ら作

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虚構=シンボルの力がホモ・サピエンスを勝者にした ー『サピエンス全史』より

(このnoteは有料に設定していますが、ただいま最後まで無料公開中です) ユヴァル・ノア・ハラリ氏の『サピエンス全史』を読む。 この本ハラリ氏の議論がおもしろいのは、私たち人類の”虚構”を作り共有し信じる力に着目して、歴史の大きな展開を記述しようとしたことにある。 認知革命・虚構の力私たちの祖先が虚構を作り、共有し、信じる力を獲得したこと、つまりある種の言葉を扱えるようになった出来事をハラリ氏は「認知革命」と呼ぶ。 進化の途上で、私たちの祖先が他の類人猿との共通祖先か

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『サピエンス全史』の幸福論―感情から意味、意味の生成へ、虚構の力を引き受けること

ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』を読んでいると、下巻の240ページに興味深い一節を見つけた。 そこには次のように書いてある。 「感情は自分自身とは別のもので、特定の感情を執拗に追い求めても、不幸に囚われるだけであること[…」もしこれが事実ならば、幸福の歴史に関して私たちが理解していることのすべてが、じつは間違っている可能性もある。」(p.240) 「特定の感情を執拗に追い求めても、不幸に囚われるだけ」とある。なかなか強烈な一言だと思う。下巻のこのあたりでハラリ

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信じられる「未来」についての虚構をどう描くか? ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』が問いかけるもの

歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による『サピエンス全史』。上下二巻にわたり人類の歴史を一掴みにしようというおもしろい本である。 様々な人々の無数の経験が織りなす複雑な人類の歴史を、わずか二冊の本で一掴みにする。そのための方法としてハラリ氏が選んだのが「虚構の力」という概念を軸に設定し、その軸の周囲に人類史を記述していくというやり方である。 だからこそ7万年前ほど前の人類に起こったコトバの力の獲得、虚構を音声や物に置き換えて他者と共有する力の獲得から、『サピエンス全史』の記

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人間の崇拝から科学革命へ 『サピエンス全史』が問うものとは?

歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による『サピエンス全史』。ハラリ氏はコロナ後の社会についても積極的な提言を行っている。 『サピエンス全史』の原著の刊行は2011年、もうすぐ十年経つところであるが、その問題提起は全く古びていない。それどころかコロナのもとで、むしろより切迫した課題を捉えているとも言える。 さてベストセラーになった『サピエンス全史』だが、読んだという人たちに話を聞くと次のような答えが帰ってくる。 冒頭の「認知革命(「虚構の力」の獲得)」や、「農業革命」あたり

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文字は「虚構」を大量コピーする技術 ー読書メモ:『サピエンス全史−文明の構造と人類の幸福』(2)

ユヴァル・ノア・ハラリ氏の『サピエンス全史』を読む。 この本のおもしろさは歴史を論じる上で、私たちの「虚構」を信じる力に着目するところである。 サピエンスの歴史とは、虚構を作ったり、保存したり、広めたりする技術の歴史でもある。 ハラリ氏は、現在の私たち人類が自らの「虚構」を生み出す能力との折り合いのつけ方に困り、虚構を扱いかねていると問題提起する。 『サピエンス全史』下巻の最後には次のようにある。 私たちはかつてなかったほど強力だが、それほどの力を何に使えばよいかは、

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「暗黒時代」は誰にとっての「暗黒」時代か―ジェームズ・C・スコット『反穀物の人類史』を読む(1)

ジェームズ・C・スコット著『反穀物の人類史 〜国家誕生のディープヒストリー』を読む。 「穀物」と「国家」から人類史を論じる一冊である。 [国家] 対 [反-国家] [穀物] 対 [反-穀物] 今日の私たちは、「国家」の存在も、「穀物」の存在も、当たり前だと思って生きている。 「日本人なら朝ごはんはお米だわ」 などと、さも当然のように言えるところまで来ている。 ところが、穀物はもちろん、国家も、人類の歴史の中で見れば、最近登場した新しいアクターである。国家も穀物もな

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