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人生に無駄なことは一つもない。好奇心をもって、貪欲に。京都大学 iPS細胞研究所 特定研究員 佐藤美子 先生[研究者インタビュー]

前編はこちら→https://note.com/watson_japan/n/n30e91a6cc410

要所要所で出会った素晴らしい先生たちがいるからこその今。

ー人との印象的な出会いはありましたでしょうか。

佐藤先生:要所要所でいい先生に出会いました。
「遠くを見れるのは、巨人の肩に乗っていたからだ」という言葉が好きです。今まで遠くを見せてもらったのは色んな先生がいたからです。山中先生だけでなく、たくさんの先生方が巨人の肩になってくださり、見える世界を広げてくださいました。先生方が頑張ってきてくださったからこそ見られることがあるなと思っています。

山中先生がいなかったら、再生医療の製造に関わることもなかったですし、再生医療で人を救う側にいなかったと思います。サイエンスばかりやっていたかもしれない。サイエンスがなかったらiPS細胞もできなかったので、それはもちろんつながっています。素晴らしい先生に導いてもらいました。

ー山中先生に引っ張られるなんて、それは佐藤先生が魅力的な研究者だったからですよね。

佐藤先生:信頼関係があります。
自分で言うのもなんですけど、私も、こう見えて真面目です(笑)。
興味あることはすごく勉強するし、使命感や責任感があるからですかね。

ーその使命感は、どこからくるのでしょうか。

佐藤先生:興味や好奇心ですね。何でもやってみたいと思う性格です。
やってみる?と聞かれたら、やってみる。やらないという選択肢はあまりないです。とりあえずやってみようというのがあります。

ーアメリカにいた頃のベンチャーのお話もお聞きしたいです。

佐藤先生:アメリカに3年いたのも良い機会だったと思います。海外に住んでみたいとも思っていました。いい経験になりました。そこで次の好奇心やチャンスをくれたのは山中先生でした。

ずっとアカデミアにいて、辞めて、会社に入った先生も、結局アカデミアに帰って来る人が私の周りでは多いように思います。どうしてかなと思っていました。
実際自分もアカデミアにずっといて会社がどういうものなのか知りませんでした。
ベンチャーに出て、会社を維持することはすごく大変な事だと思いました。
やりたいことが意外とできないんだなと思いました。

―ベンチャーは、投資家の為に働くことになりますもんね。

佐藤先生:そうなんです。
特にアメリカのベンチャーは、投資額がすごく大きいんです。私がいたところはそこそこの規模ではあったと思いますが、やりたいことができなかった。
再生医療分野は普通の製品と比べて値段が10倍ほど高くなります。そう思うと、企業が担うべき領域と、アカデミアが担うべき領域とが明確に分かれてくると思います。

ー確かに。一方でだからこそ再生医療のほうが、お金のにおいがするので、ベンチャーが面白いんじゃないかな、と思ったのですが...。そこに佐藤先生の興味はないんですね。

佐藤先生:今はないです。
世の中に出ている再生医療用のiPS細胞のほとんどを自分が作ったという自負はあります。もう次のフェーズにいったかなと思います。そこは手渡したから、新しいことをやりたいという思いもあります。山中先生も、「自分の手は離れた」と同じことを考えていると思います。

山中研究室で、今できることをする。私にしかできない使命があるのかもしれない

ーこれからの展望はありますか?何を目指していますか?

佐藤先生:一つは、25年前に見つけたNat1遺伝子の解析を山中先生と一緒に進めたいという思いがあります。山中先生に対する今までの恩返しというか、先生が生きている間に解明させたい事を一緒にしたいと思っています。

もう一方で、再生医療は、業界でも(iPS細胞という)サイエンスの面も知っていて、(人の体に入るものを扱う難しさを抱えた)医療応用の面も知っている私にしかできないことではないかという使命感もあります。
どっちでやっていく?と聞かれるとまだ迷っています。どっちもできるならやってみたいと思います。

iPS細胞の製造をしていた時は、20人くらいスタッフがいてリーダーをやっていたのですが、マネージングも結構得意だなと思っていて、その分野をやっていくのもいいのかなとも思います。

ー研究室を作ったり、自分が表に立って看板としてやっていくというのは考えないのですか?

佐藤先生:できることなら持ちたいけど、難しいですね(笑)。
やろうと思ったら、いろいろやってみたいことはあって、うっすらは考えていますが、今すぐとはいかないです。今は、山中先生のところでやりたいなというのがあります。まだ決めかねています。
私にしかできない使命的なものがあるんじゃないかなと思っています。

次への一歩は好奇心から。あらゆることに挑戦してみる。

ー若手研究者にひとことお願いします。

佐藤先生:若手研究者...
私も全然研究者じゃないですからね〜。研究者なのかな(笑)。すごい先生が世の中にはいっぱいいます。

私は、栄養学や再生医療、色んな分野をやってきて、たどり着いたところがサイエンスでした。
何でも好奇心を持っていたら、どこかにはたどり着くと思います。
最初は何もやりたいことがなくて、流れに乗っていったけれども、導かれてサイエンスの虜になりました。それは全部好奇心だったと思うんです。

声をかけてもらったものは、どれもやってきました。それぞれに興味を持って取り組んできたからこそ、私が何でもやる人と思われて声がかかったのかもしれません。何事にも好奇心を持って挑戦することが大切だと感じています。すべては好奇心、好奇心ありきな感じがします。

若手のみなさん、本当に大変だと思います。自分の生活をしなきゃいけないし、
楽しくなかったらやれない、続けられないですよね。何か自分でモチベーションとするところを持つといいのかもしれません。
つまんないなと思っていても、やってみたらおもしろかったりもします。

私の場合、好奇心や使命感だったと思うんですが、その中できちんとやっていたら、色んなものがみえてくるし、次につながる気がします。

―人生やり直せるなら戻りたい時期はありますか?

佐藤先生:ないです。常に全力ですから(笑)。

―素敵ですね!

藤本:僕は、早い段階で戻りたい時期があります(笑)。
―僕もです!(笑)。

佐藤先生:今となれば、運命というか、運でしかないですよね。
ここ以外にどこかにいたとは思えません。
人生において無駄なことはひとつもありません。だからこそ全力でやりたいです。貪欲なんですよ。せっかくなら与えられたチャンスを全部掴みたい。やる?と聞かれたら、全部やるやるやる!と答えます。欲張りなんです。


先輩研究者の皆様の悩んだこと、どうやって乗り越えたか、成功の裏側などをどんどん発信していきます。
次回もお楽しみにしていてください。

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