【ショートショート】 映画と車が紡ぐ世界 chapter36
リトルロマンス ~ マツダ CX-5 20S 2012年式
A Little Romance ~ Mazda CX-5 20S 2012 ~
真っ青なCX-5のボディは
青空と大海原の蒼を吸収して 究極のブルーを形成している
Fuuwwwwwoooooooouuuu
僕は 大きく深呼吸して 爽やかな潮風を思いっきり吸い込んだ
初めて この橋にやってきた時も
視界は120%青一色だった
因みに20%分は 僕のハートからにじみ出たブルーだったが・・・
突然の転勤は
僕がプロジェクトのメインキャストから 外されたことを示していた
「近いうちに戻れるさ」
同期の言葉は やさしかったが
この地への転勤が
片道切符であることは誰もが知っていた
HaaaaaaaaAa・・・
歳の数だけ ため息が出たとき
僕は この橋を ”Ponte dei Sospiri”(ためいき橋)と命名した
そんな僕も
いつの間にか この街が好きになっている
空を見上げながら 改めて その理由を考える
1つ目は
ためいき橋からの絶景! 東京じゃぁ体験できない
2つ目
橋の南側にある 真っ赤なエプロンをつけたお地蔵様
そのお地蔵様の目線に続く小道の先に 小さなロッジ風の炭火焙煎珈琲店がある
その店のブルーマウンテン
そして3つ目
珈琲店のカノジョ・・・
2年前・・・
僕は カノジョにプロポーズした
凪いだ波の音に消されるほど か細い声でカノジョは言った
「私は あなたにふさわしくない・・・」
カノジョは既婚者だった
漁師だった夫は 8年前 時化の海に出たまま戻ってきていない
しかし・・・
心のどこかで 夫が帰ってくると カノジョは信じていた
8歳になる女の子を一人で育てながら
その日 僕はため息橋で 人生最大のため息をついた・・・
Haaaaaaaaaaa-----------------
Zombies - Time Of The Season
水平線に浮かぶタンカーを眺めながら
僕はカノジョに電話をした
「今日の眺めは最高だよ
Mioちゃんを連れて ためいき橋に来ないかい?」
「いいわね! 今日はお客さんも少ないから 早じまいにするわ!」
スカイブルーの空に
少しマゼンダが溶け始めたころ
マリンブルーのワンピースの親子が ため息橋にやってきた
僕は美しい青と書く女の子・・・
Mioちゃんに ブルーローズの花束をプレゼントした
「わーきれい!」
女の子は 僕に抱きついてきた
ヴェニスの
ためいき橋”Ponte dei Sospiri”では
日没に ゴンドラに乗って 橋の下でキスをすると
永遠の愛が約束される・・・
「君の珈琲を飲んだとき 僕は気付かされたんだ・・・
都会じゃなくても 人を感動させる事はできるって・・・
君は 僕のブルーなハートを スカイブルーに変えてくれたんだ」
CX-5の中で
僕はカノジョが用意してくれたブルーマウンテンを飲みながら言った
しかしカノジョは
海の彼方に視線を向けて 僕の言葉に反応することは無かった
間もなく日が沈む
ダニエル(Thelonious Bernard)とローレン(Diane Lane)も
叶わなかったように
都市伝説にたよるのは無理か・・・
そう思ったとき
「今日(6/19)は ロマンスの日 ロマンチックブルーの日ね
蒼い海と青い空の向こうから 声が聞こえたの
”もう 僕のことは忘れて 自分の道を進みなさい”って」
僕の耳元で カノジョが呟いた・・・
ブルーローズの花言葉は
”ありえないこと・・・”だったが
青いバラの誕生で ”奇跡”が付け加えられた
陽が落ちる瞬間の
ため息橋に停めたCX-5・・・
後部座席で女の子が ブルーローズの花びらを数えるなかで
運転席の僕と助手席のカノジョは 口づけをした
リトルロマンスが 生まれた
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