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映画と車が紡ぐ世界chapter126

LIFE!/ライフ イスズ ピアッツァ JR120系 1994年式
The Secret Life of Walter Mitty Isuzu Piazza JR120 1994


一通の手紙が僕の下に届いた
メッセージも名もない 本州最北端 大間崎の写真
石川啄木の歌碑に映り込む 二つの人影・・・

しかし 僕には送り人がだれか 想い浮かぶ
毎年 大間崎の写真をプリントした年賀状を
送ってくる 大学時代の友人 Kaoru
あいさつ程度に送られてくる
彼女の年賀状は 僕には少しだけ楽しみだった

卒業から25年 僕には今でも 少しだけ未練が残っていた・・・

「kaoruは 故郷の青森で 幸せな結婚生活を送っているはずだ・・・
 そう言えば 今年の年賀状は少し変わってたな・・・」
年賀状の束から 彼女の手紙を抜き取った

そこには 
25年前 親友4人組でブルートレイン「あけぼの」に乗って
彼女の故郷(青森)に行ったときの 思い出が 書かれていた

そして 突然送られてきた 大間崎の写真・・・
何かあったのか・・・

そのとき グワリと 世界が歪み始めた・・・

~ブルートレイン「あけぼの」が 43年間の仕事に幕を閉じる・・・~
10年前のニュースが 記憶の中に流れ込んできた・・・ 
そして・・・ 次の瞬間!

僕は青森駅のホームに立っていた
大勢の人が 「あけぼの」の雄姿を見ようと ごった返す中
ダークマターに覆われたkaoruが ホームに立っていた
嫌な予感がした僕は 
人混みをかき分け 必死に彼女のもとに向かう!
しかし・・・
あと一歩のところで 彼女は フワリとホームに飛び込んだ・・・
すぐ後ろには 「あけぼの」が迫っている!

”危ない!”

Dunnnnnnnnnnn!

踏み込んだ左足が 地面にGusyaaaaaaaaanとめり込む
凝縮された踏み込みを一気に解放した僕は 
つむじ風のようにホームに飛び込んだ

Hyuuuuuun!
彼女を抱えると Gurunと一回転! 見事に「あけぼの」をかわす
ホッとした僕の眼の前に kaoruの唇・・・

と その時・・・電話が鳴った・・・

「月曜の会議のことだけど・・・」
同僚からの電話で 僕は現実に引き戻された

またか・・・
僕には 空想癖がある 今も 向こう側にトリップしていたようだ・・・
しかし 大間崎の写真は 消えなかった

「明日から 暫く休むよ よろしく!」
おいおい・・・
同僚の非難と困惑の叫び声が 僕の鼓膜を揺らす前に 僕は電話を切った

ウォルター(Ben Stiller)が感じた
人生の変わる瞬間・・・ それが今だと思った

愛車のピアッツァは 彼女とドライブするために 
ガテン系のアルバイトで手に入れた
結局 ドライブは夢に終わったけど・・・

今年で 25歳になる 4ZC1型 2.0L 直4 SOHC ターボ
そしてとジウジアーロのデザインは今でも 斬新で 人目を惹く
寝袋を積んで寝台車仕様になった ピアッツァで
僕は 本州最北の街を目指した
ブルートレイン「あけぼの」の軌跡をなぞるように 日本海ルートで・・・

何度か 休憩のために立ち寄った サービスエリアで
Kaoruと遭遇した
もちろん それはすべて空想の出来事
秋田市内のファミレスでは 
思わず幻想の中の彼女に キスを迫って 警察を呼ばれそうになった

寝台特急のように ゆっくり北上した僕が
Kaoruの自宅前にたどり着いたのは  
東京の自宅を出て ちょうど24時間後のことだった

煉瓦色の外壁に 
白いウィンドウ枠の一軒家の庭で 四人家族が仲良く 遊んでいる
25歳 年を取ったKaoruは 幸せそうだった・・・

「映画のようには 行かないな・・・」

♪ José González - Stay Alive ♪

彼女と再会することなく 僕はさらに北上することにした 
目指すは 大間崎
ピアッツァに 吹き付る北風が 淋しい風切り音を奏でた

kaoruの笑顔を思い出しながら 進むこと4時間・・・
最終目的地は 殺風景な ただの 海岸線だった

Kaoruとツーショットの写真を撮りたかった
石川啄木の歌碑・・・ 

!!

フワリと目の前を セミロングの女性が通った 
Kaoru・・・ 25年前の彼女・・・ また空想か!
それなら 思い切ったことをしてやる!

僕は 女性に向かって叫んだ!

「Kaoru ! 結婚しよう!」
いつもなら ここで 現実に戻る 
さぁ これでKarouも消えてなくなる! これでいい!
・・・
しかし カノジョは消えなかった
ニッコリ微笑むと 言った

「いいですよ! でも私はKaoriです」

「Kaori?」

僕はカノジョが空想の人物でないことに気づいて 真っ赤になった

「しっ失礼・・・」
 
Fufufufufufufufu

「あのピアッツァ!貴方のですか? 私の父が乗っていた車と同じです!」
カノジョが目を輝かせている

啄木の歌碑を映した写真には
僕とカノジョ 二つの人影が重なりあっていた

kaoruからkaori ・・・
Uからiへの変化は 友情から愛情の変化の兆し・・・

この日・・・僕の人生は大きく 動き出した・・・


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