拝啓_事業企画さん_017家族になる

立ち位置がすべて。ガリガリ君の「すべての人の弟」最強説

拝啓、事業企画さん_017家族になる

ソーシャルメディア全盛の時代。商品をヒットさせるためにはインターネットでの情報拡散は避けて通れませんね。
インターネットで情報拡散される商品として参考になるのは、年間4億本以上販売されている「ガリガリ君」。
「ガリガリ君」の活躍をみるにつけ、話題になるためのテクニックの前に、商品の「立ち位置」を全力で考えておくことが大切、だと思えてきます。

「赤城乳業」の売上高の伸び

「ガリガリ君」の販売元である赤城乳業の「会社概要」のページでは、売上高の推移が記載されています。この10年で売上が約2倍(471億円/2018年12月実績)になっています。すごい。

ついでに採用ページものぞいてみると、社員数383人で、平均残業時間34.79時間。小さくて強い「強小企業」ですね。

「ガリガリ君」がロングセラーである理由

ガリガリ君といえば、1981年から販売されているロングセラー商品です。
長く愛されている理由を当時の開発担当者である鈴木さんは以下のように答えています。

―鈴木さんはガリガリ君が長く愛されている最大の理由はどこにあると思いますか。
ガリガリ君の立ち位置でしょう。私の後のマーケティング担当には「ガリガリ君は顧客の目線以上にならないように」とよく話しています。ガリガリ君はすべての人の弟という(立ち位置をベースにした)商品開発やマーケティングを続けてきたことが愛着を持たれている要因だと思います。
https://newswitch.jp/p/20247

注目すべきは、商品の「立ち位置」です。
商品やサービスを擬人化させる手法は多くありますが、個人的に「ガリガリ君」が凄いと思うのは、単純に擬人化するだけでなく、坊主頭の愛すべき「弟」という<家族内ポジション>を築いている点です。

どうして凄いと思うのか、その理由を説明します。

現代は情報に「身近さ」が求められる時代に

マスメディアの時代:「何が」の時代
インターネットが登場する以前の4マスメディア時代(テレビ・新聞・雑誌・ラジオ)は、メーカーが自社新製品に知らせる際には、テレビを中心としたメディアを利用することが最も効率の良い方法でした。企業から顧客への基本一方通行な情報の伝え方です。
(※でしたと表現していますが、現在でもテレビが最もシェア高いです)

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ソーシャルメディアの時代:「誰が」時代
デジタル化が進み、ソーシャルメディアが発達した2010年代になると、個人で情報発信をする人が増えます。
2010年以降、Twitter、Facebook、Instagram、YouTube、TikTokと次々と個人が情報を発信できるサービスが人々を惹きつけるようになりました。
「Instagramで◯◯さんが良いって言ってたから買う」という消費行動がわかりやすい例でしょうか。

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コミュニティの時代:「誰と」の時代
時代は進んで、「誰と」に変化しているのが現在です。
「サロン」や「コミュニティマーケティング」、「シェアリングエコノミー」「クラウドファウンディング」これらは全て「誰と」ですね。

ソーシャルメディアの時代は、発信者と受信者は「ファン」「フォロワー」という言葉が示すとおり<縦の関係>でした。
コミュニティの時代には、同志、運命を共にする「仲間」であり<円の関係>です。この流れは2020年以降、加速していくことでしょう。

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時代を経るごとに「企業」から「人」に情報の発信主体が移り、あわせて興味関心や属するコミュニティ(集団)に「細分化」されてきています。

コミュニティごとの細分化が進むと情報はタコツボ化します。ツイッターの最高経営責任者(CEO)ジャック・ドーシーが「脱中央集権化」されたソーシャルネットワークの標準化技術の開発に動き出すなど、企業から個人の脱中央集権、細分化されたコミュニティに時代は進みます。

そうです。「あらゆる人の愛すべき弟」という立ち位置であれば「どんなコミュニティ」にもすんなり入っていけるのです。そこに、主義・主張やイデオロギーは関係ありません。

愛される「弟」という立場だから活きる「外し」の技術

私は関係者ではありませんので、どこまで意図されているのかがわかりませんが、顧客の中で小学生の坊主頭の愛嬌のある「弟」という立ち位置を確立することで、「外し」の技術が活きてきます。
マーケティングの4Pで整理してみるとこんな感じです。

▼ 商品バリエーションによる話題化(Product戦略)
「ガリガリ君」シリーズは2012年に「コーンポタージュ」、2014年に「ナポリタン味」、2016年に「メロンパン味」といった具合に次々とユニークなアイスを製品化。これら商品は一歩間違うと「悪ふざけ」として世間から徹底的に叩かれてしまいますが、「ガリガリ君」はネタとして優しく受け入れられています。

―12年に発売された「コーンポタージュ味」や14年発売の「ナポリタン味」は衝撃でした。
どちらも若手社員が手がけました。コンポタはヒットしましたが、ナポリタンは大失敗でしたね。ただ、全部が売れる必要はなく(単体の売り上げで)失敗する商品があってもいい。
(失敗を含めて)定期的に話題化することは大事です。毎日ソーダではやっぱり飽きるし、(話題化によって)最近食べていない人の記憶を呼び覚ますことも必要です。
https://newswitch.jp/p/20247

▼ 定番のソーダ味は値上げを死守(Price戦略)
「ガリガリ君」は1981年に50円で発売開始し、1990年に60円に価格を改定。その後は「子どもが買いやすい価格を」と頑張ってきましたが、2016年4月に25年ぶりに10円値上げして税別70円に改定しました。

「ガリガリ君」の値上げについては、赤城乳業でも、7~8年前から議論を続けてきた。「企業努力を続けながら価格を据え置いてきたものの、昨年(2015年)は利益が出ないぐらい、限界にきていました」とし、1年間見送ったうえの「苦渋の決断」だったという。

https://www.j-cast.com/2016/05/09266278.html?p=all

▼ 商品のPR戦略(Promotion戦略)
プロモーション戦略では、インネーネット・SNSでバズることを目的としておらず、むしろブームになってしまってら失敗、というスタンスであることは肝に銘じておきたいところ。

―ブームになったら失敗なんですか!?
「『ガリガリ君』はロングセラー商品なんで、徐々に浸透していくのが一番いいんです。1981年に発売した当時の、小学生が学校帰りに食べて『あのアイス、うまかったな』と話す感じ。そういう口コミをずっと大事にしています。だから、そこは崩したくない。

https://diamond.jp/articles/-/97131?page=2

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まとめ

「ガリガリ君」は丸坊主の元気な小学生です。
(当初は中学生のガキ大将。2,000年に現在の愛くるしいビジュアルになりました。愛すべきすべての人の弟ですね)

インターネットで情報拡散されることは手段でしかありません。テクニックや流行りの手法に答えを求める前に、自社の事業・商品はどのような「立ち位置」で、どんな「キャラクター」として周囲から受け入れられているのか、から考えてみてはいかがでしょうか?

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