拝啓_事業企画さん_010仮説思考

芯を食った「仮説」を生む3つの質問

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「仮説は何?」
これは、ロジカルシンキング や クリティカルシンキング を好む人が好きなフレーズですね。(悪意はありませんよ笑)
「あなたの仮説は何ですか?」と真顔で言われても、芯を食った仮説はそう簡単に出てこないですよね・・。

今回は、芯を食った「仮説」を生むための3つの問いについてお話しします。

前例主義・完璧主義の弊害?

仮説思考に苦手意識を感じる原因として最初に考えられるのは、『仮説の作り方がわからない』『仮説を考える癖がついていない』です。
これは方法を知る、トレーニングすることで改善できますね。

一方、質問者さんのように方法を知ってはいるが、上手くできないというケースもあります。
そんな時は、(1)情報収集に多くの時間を使いすぎていないか、(2)仮説に完成度を求めすぎていないか、を疑ってみるとよいでしょう。

今の世の中、情報を調べようと思えば、何時まででも調べられます。
また、大胆な仮説は、過去から簡単に予測されるものではないですし、情報収集の量で導き出せる類のものでもありません。

制約条件がある中で、確からしい仮説を導き出すのが仮説思考です。

そもそも「仮説思考」って何?

「仮説思考」とは、環境変化が激しく、時間も限られている環境下では(地道に情報収集するより)自分が今持っている情報の中で仮説を立てて、それを素早く検証し、経験値を上げた方が成功確率が高い、という考え方です。

仮説思考の手順
手順1、自分が持っている限られた情報(新たに調べない!)の中で
手順2、仮の解決策→仮説を見出し
手順3、それを検証して
手順4、得た経験をもとに改善を繰り返す

それぞれの手順で推奨されているフレームワークがあります。先人の知恵ですね。

1-1、状況の確認するためのフレームワーク「MECE」

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状況整理時に有効なのが「MECE(ミーシー/ミッシー)」です。
MECEは「抜け漏れ重複がない」という英単語の頭文字です。
MECEのメリットは網羅性です。勘やひらめきによる分類では、偏りや抜け漏れが発生しやすいという弱点を補ってくれます。

MECE
Mutually:お互いに
Exclusive:重複せずに
Collectively:全体として
Exhaustive:漏れがない

1-2、状況の確認するためのフレームワーク「ロジックツリー」

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MECE(抜け漏れ、重複なく)に状況確認を行うための定番的なフレームワークが「ロジックツリー」です。
多くの物事は、大小様々の複数要素から成り立っています。
「ロジックツリー」は、関連性のある情報・要素を樹木状の分岐構造で分解・整理する思考法です。
「Issueツリー」「KPIツリー」「Whatツリー」「Whyツリー」などの種類があります。

2-1、仮説を発見するためのフレームワーク「So what?」

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「So what?」は、ロジックツリーで分解した情報・要素に対して、「それってどういうこと?」と問いかけることで、主張(仮説)を抽出する思考法です。

例えば、飲食店の「レビューの点が高い」という事実情報があったとします。
この事実に対して「それってどういうこと?」と問いかけることで、「美味しいお店である」という主張(仮説)を導き出します。

2-2、仮説を発見するためのフレームワーク「Why so?」

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「Why so?」は、「So what?」とは逆です。
「なんでそうなんだっけ?」「それはなぜ?」と主張(仮説)に対して問いかけることで、論理矛盾がないかを確認します。

さきほどの「So what?」では成立しているように思えた主張(レビューの点が高い→美味しいお店)は論理的には間違いではないですが弱いことがわかります。

このように、ロジックツリーを作って、情報・要素を書き出し、「So what?」「Why so?」を繰り返すことで、強度の高い仮説が導き出せます。

3-1、仮説の正しさを確認するためのフレームワーク「PAC思考」

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仮説の正しさを確認するフレームワークとしては「PAC思考」があります。
「前提・事実」「仮定」「結論/仮説」に分解して、前提と仮定が論理的なのかを確認する思考法です。

PAC思考
Premise:前提・事実
Assumption:仮定
Conclusion:結論/仮説

たとえば、新規事業を考える際に

「市場規模は5兆円で成長率は110%で、先行している競合他社は1,000億円の売上があり115%成長。私たちも初年度は50億円だがその後110 %成長できるはずだ」という話は

P(前提):市場規模は5兆円で成長率は110%
A(仮定):先行している競合他社は1,000億円の売上があり115%成長
C(結論/仮説):私たちも初年度は50億円だがその後110 %成長できるはずだ

のように分解でき、P(前提)とA(仮定)に矛盾がないかを確認するのです。
たとえば、「前提」としていた市場規模は、実は調査機関によって異なっており、この「前提」で仮説を決めることに疑問符がつく、といった具合です。

3-2、仮説の正しさの検証は、定量&定性で

仮説を設定する際に数字を入れるおくことと、仮説と実態のズレを定量的に確認できるようになります。

仮説の検証方法としては、対象顧客にテストを行い結果を検証するほか、インタビューやアンケート、内部・外部のデータ収集分析などの方法があります。

次に、どこまでの正確性・完璧さを求めて仮説を検証するかについてですが、「確からしさの8割」と一般的に言われています。
(完璧さを求めすぎる必要はない、という意図での8割と理解しています)

私が考える「仮説思考」の全体図はこんな感じになります。

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仮説→検証→仮説→検証のサイクルを高速回転

仮説思考の肝は、仮説→検証→仮説→検証のサイクルを高速で回転させることです。(黄色の線)
仮説を検証したところ上手くいかなかった、という事実・経験を得ること自体に価値がある、という前提条件があります。

ですので、「仮説が失敗したらどうするんだ?」という声が出る職場や、小さい失敗を許容できない環境では向いていません。
そこは慎重に判断しましょう。

芯を食った「仮説」を生む3つの質問

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本題です。
上記のように「仮説思考」の手順やフレームワークは広く公開されているのですが、実際やってみると、筋の良い仮説を導き出すのが難しい場面に遭遇します。

理由は3つあると思っています。

(1)冒頭でお話しした「前例主義」や「完璧主義」の話
(2)情報が制限された中で情報を整理し仮説を出すためには、各人が持っている情報やセンスといった「経験値」が求められること
(3)紹介してきたフレームワークは論理的矛盾を発生させないためのフレームワークであり、独創的・創造的な仮説となりにくい

特に新規事業に関しては、市場・競合分析において前提となるデータの正しさを担保することが難しい場合が多いです。

ではどうしたら良いのでしょうか?
壁にぶつかった時に有効なのが3つの質問です。

質問1、立場(人)を変えると、どんな景色がみえる?

「主語」の変換です。
「4P」「エコシステム」「コンバージョン」。ビジネスで通常使われている言葉は企業視点です。
ロジックツリーで分析する際に、企業視点だけで分析すると、誰でも思いつく当たり前の結論(仮説)に辿り着きがちです。
たとえば、主語を「見込み顧客」や「休眠顧客」「非ターゲット」などに入れ替え、彼らにとって意味のある仮説を考えてみましょう。
企業視点で見えて世界とは別の景色がみえてくると思います。

質問2、痛点に焦点をあてて、掘り下げてみては?

2番目は「観察する力」が問われる問いです。
痛点とは「お金を(多く)払ってでも解決したいと思っている痛み」です。対象(ユーザー/取引先/社会etc)は何に痛みを感じているのでしょうか?

人は需要(ニーズ)はあっても買わないことがありますが、痛点を解消するものであれば買います。お金を出してでも人々が解決したいと思えるものこそが大胆な仮説となり得ます。

仮説発見のコツは、「当たり前」を疑ってみることです。
たとえば、「ファストパス」は行列に並ぶのが当たり前、という常識に対して、お金を追加で払ってでも良いから早く乗りたいという痛点に対応したサービスです。

質問3、他業界の成功・流行りを取り込めない?

3番目は「関連づける力」が問われる問いです。
他業種・業界で成功している事例や社会現象等が、なぜ人々にウケているのか、その要素や仮説を抽出し、それを自社に関連づけるのです。

自分たちではその発想はなくやってこなかったけど、実は取り組んでみると面白いのでは?といった形で仮説が生まれます。

この時大事なのはその事象の「価値」に着目することです。
なぜ人々がその事象に引き寄せられているのか、(とても難しいですが)本質的なところでたどり着けると、芯を食った「仮説」が生まれる可能性が高まります。

まとめ

仮説思考で業務を進めると考える力がつくのもメリットですが、一番は仮説を実行した上で得た経験(知識/ノウハウ)なんだと思います。

仮説も検証も、すべては問題解決や目標の達成など、得たい成果のための手段でしかありません。

大事なのは実践。壁を突破するための少しでも参考になったらうれしいです。

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