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『新しい世界の資源地図: エネルギー・気候変動・国家の衝突』 ダニエル・ヤーギン (著), 黒輪 篤嗣 (翻訳) ウクライナの戦争前に書かれているのだが、この本の内容を頭に入れて、各国の動きを考えると、見えてくることが全然違う。特に第4部 中東のところはすごい。必読。

『新しい世界の資源地図: エネルギー・気候変動・国家の衝突』 2022/1/28
ダニエル・ヤーギン (著), 黒輪 篤嗣 (翻訳)

Amazon内容紹介

「地政学リスクから第一人者が読み解く『ウォール・ストリート・ジャーナル』ベストセラー
 地政学とエネルギー分野の劇的な変化によって、どのような新しい世界地図が形作られようとしているのか?エネルギー問題の世界的権威で、ピューリッツァー賞受賞者の著者が、エネルギー革命と気候変動との闘い、ダイナミックに変化し続ける地図を読み解く衝撃の書。
 日本人が知らない資源戦争の裏側とは?
米国vsロシア・中国の新冷戦、エネルギー転換の未来を描く![米国]「シェール革命」で中東と距離を置く
[ロシア]市場を求めて中国と急接近
[中国]「一帯一路」で中東・欧州にも影響大
[中東]石油需要枯渇への危機感が増す
[自動車]石油の地位を脅かす自動運転車と電気自動車
[気候変動]再生可能エネルギーや政策の役割の比重が増大
著者について
ダニエル・ヤーギン
IHSマークイット副会長
「米国で最も影響力のあるエネルギー問題の専門家」(『ニューヨーク・タイムズ』紙)、「エネルギーとその影響に関する研究の第一人者」(『フォーチュン』誌)と評される。ピューリッツァー賞受賞者。ベストセラー著者。著書に『石油の世紀――支配者たちの興亡』、『探求――エネルギーの世紀』、『砕かれた平和――冷戦の起源(Shattered Peace: The Origins of the Cold War)』、共著に『市場対国家――世界を作り変える歴史的攻防』がある。世界的な情報調査会社、IHSマークイットの副会長を務める。」

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ここから僕の感想

 一年前、ウクライナの戦争が始まる直前に日本では翻訳、出版された、ので書かれたのはそれよりさらにちょっと前なのだが、いやー、これ、今回の戦争の背景含め、ものすごくクリアにしてくれるすごい本でした。

 著者は学者的な研究者ではない感じがする、ジャーナリストとしても超一流、文章が面白い。読み物として抜群に面白いのである。

 ロシアのエネルギー戦略についての前に、アメリカのシェール(ガス⇒オイル)革命の、そもそもの歴史から展開が細かく語られているのがすごくいい。ここから世界のエネルギーを巡る構図が全部、根本的に変わったことから、世界情勢を見ていくことになる。

 アメリカのシェールガスの歴史と現状を踏まえたうえで第2部ロシアの話になると、見えてくることが全然違う。ロシアの話も、対EU、ウクライナまわりのことだけでなく、アゼルバイジャンやカザフスタンから、北極海のガス田開発、中国とのパイプラインの話までものすごく詳しい。著者はアメリカ人だし、プーチンには批判的な立場で書いているのだが、第一部からのつながりで読んでいけば、アメリカ側にも戦争をすることに「理由」というより「利益」があることが自然に見えてくる。そう、エネルギー、資源の動向を軸に見ていくと、「利害の構図」がなんだか不気味なほどくっきりと見えてくるのである。

 第3部中国も面白かったが、第4部、中東のところがものすごい。僕はイスラム国のことが起きた後、中東周りの本はかなりいろいろ買って読んだのだが、この本ほど、かなり古い所の歴史、地域全体だけでなく、一つ一つの国の歴史、社会、宗教宗派からエネルギーの状況、それがどういう対立紛争や協力関係を生み出して現在に至っているかを、コンパクトなのに漏らさず描いたものを読んだことがない。いやこの「第4部 中東の地図」は、もう何回か読み直してしかり頭にいれようと思う。それくらい素晴らしい内容。ニュースや新聞を追いかけてなんとなく頭に残っているニュースひとつひとつの意味が、なるほど、そういうことだったのかといちいち腑に落ちる。この第4部だけでも、他の本10冊分くらいの価値があると思う。

 ウクライナで戦争が起きた後の、中東各国の微妙な動き、これはイスラエルも含めて。これも、各国の資源状況の変化と絡めてこうして分析されると、見えてくるものが全然違う。そうかあ、イスラエルの沿岸で天然ガスが出て、エネルギー輸入国ではなくなっているのか。みたいな。

第1部から第4部までで、もう世界の見え方がすごく変わる。

第5部 自動車(電気自動車をめぐる話) 第6部 気候(地球温暖化)も、こうやってまとめられるとわかりやすいが、第4部までほどのびっくりはなかったかなあ。

いやしかしほんと1~4部は必読だと思います。ほんとにお薦め。


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