『新しい世界の資源地図: エネルギー・気候変動・国家の衝突』 ダニエル・ヤーギン (著), 黒輪 篤嗣 (翻訳) ウクライナの戦争前に書かれているのだが、この本の内容を頭に入れて、各国の動きを考えると、見えてくることが全然違う。特に第4部 中東のところはすごい。必読。
『新しい世界の資源地図: エネルギー・気候変動・国家の衝突』 2022/1/28
ダニエル・ヤーギン (著), 黒輪 篤嗣 (翻訳)
Amazon内容紹介
ここから僕の感想
一年前、ウクライナの戦争が始まる直前に日本では翻訳、出版された、ので書かれたのはそれよりさらにちょっと前なのだが、いやー、これ、今回の戦争の背景含め、ものすごくクリアにしてくれるすごい本でした。
著者は学者的な研究者ではない感じがする、ジャーナリストとしても超一流、文章が面白い。読み物として抜群に面白いのである。
ロシアのエネルギー戦略についての前に、アメリカのシェール(ガス⇒オイル)革命の、そもそもの歴史から展開が細かく語られているのがすごくいい。ここから世界のエネルギーを巡る構図が全部、根本的に変わったことから、世界情勢を見ていくことになる。
アメリカのシェールガスの歴史と現状を踏まえたうえで第2部ロシアの話になると、見えてくることが全然違う。ロシアの話も、対EU、ウクライナまわりのことだけでなく、アゼルバイジャンやカザフスタンから、北極海のガス田開発、中国とのパイプラインの話までものすごく詳しい。著者はアメリカ人だし、プーチンには批判的な立場で書いているのだが、第一部からのつながりで読んでいけば、アメリカ側にも戦争をすることに「理由」というより「利益」があることが自然に見えてくる。そう、エネルギー、資源の動向を軸に見ていくと、「利害の構図」がなんだか不気味なほどくっきりと見えてくるのである。
第3部中国も面白かったが、第4部、中東のところがものすごい。僕はイスラム国のことが起きた後、中東周りの本はかなりいろいろ買って読んだのだが、この本ほど、かなり古い所の歴史、地域全体だけでなく、一つ一つの国の歴史、社会、宗教宗派からエネルギーの状況、それがどういう対立紛争や協力関係を生み出して現在に至っているかを、コンパクトなのに漏らさず描いたものを読んだことがない。いやこの「第4部 中東の地図」は、もう何回か読み直してしかり頭にいれようと思う。それくらい素晴らしい内容。ニュースや新聞を追いかけてなんとなく頭に残っているニュースひとつひとつの意味が、なるほど、そういうことだったのかといちいち腑に落ちる。この第4部だけでも、他の本10冊分くらいの価値があると思う。
ウクライナで戦争が起きた後の、中東各国の微妙な動き、これはイスラエルも含めて。これも、各国の資源状況の変化と絡めてこうして分析されると、見えてくるものが全然違う。そうかあ、イスラエルの沿岸で天然ガスが出て、エネルギー輸入国ではなくなっているのか。みたいな。
第1部から第4部までで、もう世界の見え方がすごく変わる。
第5部 自動車(電気自動車をめぐる話) 第6部 気候(地球温暖化)も、こうやってまとめられるとわかりやすいが、第4部までほどのびっくりはなかったかなあ。
いやしかしほんと1~4部は必読だと思います。ほんとにお薦め。
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