さとなおくんの「聖書や神話を知らんと理解できんアートが多いのでエピソード別にまとめてみる 58 回 ヨブの信仰」を読んでいて、中二病で、SF的興味から聖書を勉強していた頃のことを思い出した。の巻。

今、web上で読むことができる読み物の中で、いちばん面白い、と僕が思う、多くの人もそう言っているのが、友人、さとなおくんのnote「聖書や神話を知らんと理解できんアートが多いのでエピソード別にまとめてみる」。本当に、なにひとつ聖書について基礎知識がなくても、あるいはミッションスクールや教会学校の「聖書講話」の時間に、道徳くさい説教臭い断片的逸話として学んだだけで「聖書、うん、知ってる」と思っている人も、はじめっから読んだら、超面白いよ。

どれだけ下世話で人間臭いむちゃくちゃな人たちが大活躍する物語の連続で、嫉妬深い神様がどれくらい乱暴に人間にひどいことをしまくったかもびっくりするし。聖書とかキリスト教に関する固定概念、粉々になる、お時間ある方、でも、読書はそんなに得意ではない、という方も。毎回、絵をたくさん見ながら、聖書の話、ときどき下ネタ、ときどき推理小説、ときどき人情噺、バラエティ豊かな切り口で、ほんとに楽しめます。おすすめ。

その最新回、「(旧約聖書篇58) 〜ヨブの信仰」を読んでいたら、自分と聖書、自分とキリスト教の関りについての記憶がどんどん掘り起こされてきたので、そのことを書きます。(下線部リックすると、さとなおくんのnoteに飛びます。)

そもそもその前兆は、二回前の「預言者エリヤとエリシャ」の回を読んで、感想を書いている時から始まっていて
「原 正樹 ドレさんの今日の一枚、天使の浮き方が、超かっこよい。あそこのエピソードの他の画家の天使の登場、存在の仕方も見ていて(ぶつかるやん、とか)思い出した。小学生高学年から中学生のときエホバの証人のお兄さんが週一回うちに来て、聖書の勉強していたって前に書いたけれど、その頃、光瀬龍の『百億の昼と千億の夜』とかのSFもわりと好きで読んでいて、聖書の話も、SF的実存在として神とか天使とか考えて読んでいた。天使がきて、とか、空とぶ馬車に乗ってとか、空から火の柱がどっかーんとか、リドリースコット「プロメテウス」的実在宇宙人による人類創造実験から、その支配に、わりと積極的に関与していたSF物語ぽい話だよね。旧約聖書って。だって、だいぶ時代が下って、関係する周辺他国は現実の歴史として検証可能な時代になりつつあるのに、自分たちにだけSF的実在天使とか火の柱ドカーンとかあったら、それは「自分たちだけ宇宙人神様に選ばれてる」と思うよなあ。そんなことを思い出させるエリアのエピソード、楽しかったです。」

そう、僕は、中二病真っ盛りの小学校高学年から中学二年くらいの間、
⑴中二病全開状態で
⑵しかも、エホバの証人、という、かなり特殊解釈をする人たちの解釈に沿ってキリスト教を学び、考えてきたわけ。

さらにちょっと遡ると、小学校の時からの愛読書が、イギリスの神学者、児童文学者、SF作家であるCSルイスの『ナルニア国物語』の超愛読者で、全七巻を各巻100回は読んでいた、という子供だった。これがなぜキリスト教と関係するかと言うと、この童話、架空の世界ナルニアが神によって創造されるところから、そこに悪が持ち込まれる原罪の生まれるところ、それが神の子(この童話ではアスランというライオン)の犠牲によって贖われるという贖罪の理論、最後に世界が滅びたのちに神を信じる者だけが天国で暮らすという、黙示録の終末と救済までを、全七巻で描いものなのね。つまり、キリスト教の信仰者が学ばなけれはいけない基本思想、救済の仕組みについては、すでに完璧・学習済みだったわけ。

⑶キリスト教の救済や、エホバの証人が脅しに使う「ハルマゲドン」からの救済の仕組みは、すでに学習済み。


そのうえ、当時の僕は、自分で言うのもなんだけれど、かなり、たちの悪い、超理屈が好きな議論めちゃくちゃ強いマンだったの。駿台全国模試でいつも100番以内って、これは高校受験で開成とか筑駒とか学大附属を受けた人ならわかると思うけれど、どこを受けても合格可能性80%以上しか出ない、超お勉強できるマンだったの。しかも、数学とか英語より、国語が得意理屈言うのがめちゃくちゃ得意な子だったわけ。(その後、高校以降、どんどん成績下がりまくって、大人になるとタダの人、パターンなわけだけれど。)

⑷超・理屈で、聖書を考えていた。

なので、普通に母親のところに教えに来ているおばさんエホバの証人たちでは、まったく僕の相手にならない、いつも完璧にやりこめられて困ったおばさんたち、エホバの証人、ものみの塔の本部は、港区の三田に当時あって、我が家は南麻布の公務員官舎で、わりと近かったので、本部教会の期待の若手、日比谷高校出身、頭の切れるお兄さんが、僕の相手をしに、来るようになっていたわけ。

で、僕は、キリスト教教義の全体を、エホバの証人について勉強しながら、こういうふうに理解していった。
⑴聖書の物語は、全体で言うと、神と言う地球外(もしくはこの宇宙外部の)知的生命体による、地球上での知的生命文明育成実験である。
⑵サタンと言うのは、人間を、白痴状態で幸福を感じる存在のまま繁殖させようとした神の計画に背いて、知的進化プログラムも人間に与えた、「反抗した人道的プロジェクトメンバー」である。
⑶天国と言うあの世の存在をエホバの証人は認めていない。すべての人間は死に、ハルマゲドンの後に地上に蘇る、としている。つまり、人間の記憶体験人格データは、神様のホストコンピュータにいったん記録される。終末に、もう一度再生された肉体に、その人格記憶データがリロードされるのが、復活である。と僕は考えた。
⑷復活した人格たちは1000年間、千年王国で生きたのち、信仰を試され、永遠に死ぬものと、永遠に生きるものに振り分けられる。さて、ここで、神は、人間の再白痴化(エデンの園の原初状態に戻すのか)という疑念が生じる。

この復活から救済のプロセスで、まあ「不可知論」ともいうべき疑念が、中二の僕の頭の中に浮かんでしまったわけだ。「人間の自己同一性、意識の連続についての疑問」というのが、中二の僕に芽生えたわけ。

他人から見たら、復活した僕は、まぎれもない僕。でも、僕自身の自意識の連続性感覚からしたとき、復活した僕は、一回死んだ僕と、連続した意識であるかどうかは、検証不可能。

つまり、死んだらそれっきりで、死んだずっと後に、同じ顔かたち、同じ記憶、同じ人格をもった誰かさんが復活したとしても、それは死んだ僕とは無関係な別人なんじゃないの。そうだとしたら、神様信じても、何にもいいことないじゃん。今、一回死んじゃうほうの僕にとって。

というのが、中二の僕の、エホバの証人について何年か勉強した結果、信仰には入りません、とおかえり願った理由だったんだよね。エホバの証人になると、それまでの生活を捨てて、変人と思われて生きていくわけで、それだけの犠牲を払っても得られる利益がでかくないと、なったらあかんでしょ。「不可知論」「検証不能」が一枚かんじゃう救済の仕組みだと、それは、入信できないよね。

そういうことを、今日の、さとなおくんの書いた「ヨブの信仰」の回の、「なんでブレイクは、このエピソードを執拗にたくさん書くのか」というさとなおくんの疑問や、ブレイクの絵の中で躍動するサタンの姿を見ていて、まるごと鮮明に思い出したので、さとなお君のFacebookコメント欄にこんな感想を書いた。

「原 正樹 絵のこともあるけれど、今回はなぜブレイクがこんなにヨブのエピソードが好きかを、私見、ちょいと書きます。ブレイクは神と悪魔を対等な存在と(どちらのことも幻視、現実的存在として、よく見ていた)し、思想的にも、神とサタン両方が対等である価値観と言うか世界観を持っていたと思う。という点からすると、このヨブのエピソードは、聖書の中でも、最もサタンが神様を追いこんたエピソードだと思うんだよね。神がすべてを創造したんだとするとサタンも神の被造物っていうことになるけれど、天使の中で最も有力者だったのがサタン、(ルシファー)だし、このエピソードだと、代表取締役社長と有力専務副社長くらいの力関係になっている。そして、義人ヨブの、信仰をくじかせようと導いたと見せて、実は、ヨブは「あまりに義であるために神を批判してしまう」という意味では、サタンの目論見、ほぼ成功している。しかもこれは、人類、アダムとイブが、サタンのそそのかしによって知恵のみを食べた結果としての「自らの頭で考えるがゆえに神に反抗する」という、そういう壮大なプロジェクトの成功、といってもいい。神様が人間に単に命令するんじゃなくて、論争したり説得したりしなきゃいけないというのはも、相当、焦った、大変な事態だった。これはブレイクにとっては、いちばんサタン大活躍、判定勝ちといっていいくらいのエピソードだから気に入っていたんじゃないかと。あと、子供を初めに全員殺し、後でもう一回生まれるってめでたしっていうの、これも人間中心視点で見ると、「おいおい」っていう感じがするでしょう。初めに殺した子供と、後で生まれた子供は、数は一緒でも、同一なのか問題。実はキリスト教の救済って、「一回死ぬ。」天国は無い。ハルマゲドンで全員蘇る。千年王国の後、最後の審判。だから、「一回死んだ人を、後でもう一回蘇ら
せたらそれでよし」っていう、「なんか、神様、ずいぶん都合いいけど、それ人間視点では本当に救われているの?」っていう疑問の残る救済なんだよね。そういう、神の不完全さとか弱さとかほんとに人間のこと考えてんのかよ、ということが出ているので、ブレイク、大好きだったんだと思う。」

それにつけてもね、さとなお君のこのシリーズ、もうすぐ旧約聖書篇が完結しそうだけれど、本当に面白いので、一回目から読みたい人は、こちらから。

聖書や神話を知らんと理解できんアートが多いのでエピソード別にまとめてみる (旧約聖書1) 〜そもそも旧約聖書って?

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