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聖書や神話を知らんと理解できんアートが多いのでエピソード別にまとめてみる (旧約聖書1) 〜そもそも旧約聖書って?

1000日チャレンジ」でアートを学んでいるのだけど、いわゆる芸術って、旧約聖書や新約聖書、ギリシャ神話などをちゃんと知らないとよく理解できないもの多すぎません? オマージュなんかも含めて。ついでに小説や映画なんかも含めて。
それじゃ人生つまらないので、アートをもっと楽しむためにも聖書や神話を最低限かつ表層的でいいから知っときたい、という思いが強くなり、代表的なエピソードとそれについてのアートを整理していこうかと。
聖書や神話を網羅したり解釈したりするつもりは毛頭なく、西洋人には常識っぽいあたりを押さえるだけの連載です。あぁこの際私も知っときたいな、という方はおつきあいください。
まずは旧約聖書から始めます。旧約・新約聖書のあと、ギリシャ神話。もしかしたら仏教も。
なお、この旧約聖書シリーズのログはこちらにまとめていきます。新約聖書はこちら


2020年元日にぼんやりと美術の勉強をしていて(今年は美術検定2級に受かりたい!)、「それにつけても西洋美術のネタ元がわからん!」とうっかり逆上してグラスを割った。

わからんのだ。

天地創造とか、アダムとイブとか、カインとアベルとか、バベルの塔とかはわかる。
モーセの十戒とか、サムソンが強いのとか、キリストの物語もある程度は知っている。

なんだかんだ、マンガ聖書とか読んできたからね。
少しは知ってる。

でも、アブラハムとか、ロトと娘たちとか、天使とヤコブの闘いとか、ヨセフとポティファルの妻とか、ダビデとゴリアテとか、バテシバとか、ソロモンとシバの女王とか、エリヤとかヨブとかユディトとか・・・

旧約聖書、よくわからん。
新約聖書も、細かいところになるとよくわからん。
ギリシャ神話に至っては、ゼウスとかアフロディーテとかアポロンとか名前は知っているけど、何がどうでどうなったか全然わからん。

そして、元ネタがわからないと、絵画も彫刻も(そして小説や映画も)いまいち面白くないのだ。

というか、中世以降のキリスト教美術には、キリスト教の布教のため「文盲で聖書を読めない人々(ほとんどの人々)のために聖書をビジュアルで解説する」という役割があった。

つまり、キリスト教美術は「聖書の解説」だ

テレビも新聞も雑誌もネットもなかった時代、最強のビジュアルメディアが絵画であり彫刻だったので、その圧倒的なストーリーテリング力を最大限活かして解説し布教したのが(ある時期からの)キリスト教美術なのである。

アーティストの個性や時代の流行によって、オーバーに描かれたものがあったり、劇的に描かれたものがあったり、リアルに描写したものがあったり、時間の流れを絵の中に全部入れるものがあったりするけど、基本、最強のビジュアルメディアを使っての「聖書の解説」なのだ。

きっと、絵を前にして、布教者や訳知り顔のオッサンが「この場面は神様が怒ってね・・・」とか説明し、人々は「うへー、神様はそんなえぐいことなさるのかー」って恐れおののいたりしたんだと思う。


・・・面白い。

だったら「文盲の人」の気持ちになって、聖書のストーリーとともに「有名な絵画や彫刻作品」を新鮮に楽しんだり、おののいたりしてみようではないか。

・・・というのが、このシリーズ。

ゆっくり1年くらいかけて書いていこうと思う。

ちなみに参考・参照していくのは、『ビジュアル図解 聖書と名画』『イラストで読む旧約聖書の物語と絵画』『キリスト教と聖書でたどる世界の名画』『聖書―Color Bible』『巨匠が描いた聖書』『旧約聖書を美術で読む』『新約聖書を美術で読む』『名画でたどる聖人たち』『アート・バイブル』『アート・バイブル2』『聖書物語 旧約篇』『聖書物語 新約篇』『絵画で読む聖書』『中野京子と読み解く名画の謎 旧約・新約聖書篇』 『西洋・日本美術史の基本』『続 西洋・日本美術史の基本』、そしてネット上のいろいろな記事です。



ということで、まずは旧約聖書から。


1回目の今回は、旧約聖書とはなんぞや、という「そもそもの話」を超カンタンに整理しておきたい。つまり序章。



●なんで旧約なのか

旧約聖書と新約聖書が「約」なのは、神と人間が結んだ契約だから。聖書におけるその契約とは、「神が人間に対して一方的に示した契約」。

ストーリーを知れば知るほど、わりと一方的で横暴な契約だ。
いや、マジえぐい。
神のすることはよくわからんというのが読んでの本音。


●旧約聖書は3つの宗教に共通した聖典

これ、知ってる人は常識として知っているんだけど、知らない人はホント知らない。ボクの感覚では(信者以外の)10人中8人は知らない。

なので、自分の頭の整理のためにも「表」を作ってみた。

この3つの宗教(世界三大一神教)に共通した土台が「旧約聖書」だ。つまり、この3つは姉妹宗教ということになる。

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3つの宗教の大きな違いは「救世主」の考え方。
旧約聖書は、預言者が「いずれ救世主は来る」と預言して終わる。で、その救世主はどうなったのか、が3つの宗教で違う。

ユダヤ教 :まだ来ていない。
キリスト教:イエスが救世主その人だ。
イスラム教:イエスは偉大な預言者だが救世主ではない。ムハンマドは最後にして最大の預言者であるが救世主ではない。救世主はまだ来ていない。

預言=キリスト教などで、神の霊感を受けて、神託として述べること。その神託。
預言者=自己の思想やおもわくによらず,霊感により啓示された神意 (託宣)を伝達し,あるいは解釈して神と人とを仲介する者。祭司が預言者となる場合もあり、しばしば共同体の指導的役割を果す。(ブリタニカ国際大百科事典)


●旧約聖書の神は「主」であり「ヤハウェ」であり「アッラー」である

表に書いたように、旧約聖書の神は3つの宗教で共通している。
ヤハウェはヘブライ語で神。アラビア語だとアッラー。つまり、主=ヤハウェ=アッラー

キリスト教だけ少し違って、「父なる神(主)、神の子イエス、聖霊」がそれぞれ別のペルソナを持つが、実体としてはひとつであるという「三位一体」と考える。

この三位一体はキリスト教の最も重要な教義らしい。

●旧約聖書には「イスラエル民族の約1500年間の歴史」が書かれている

もう、ずぅっとイスラエル民族の歴史が書かれている。
つまり、宗教の書、というよりは歴史書である。
天地創造から始まり、古代イスラエル民族が約束の地「カナン」(現在のパレスチナ)を与えられてイスラエル王国を築き、その後バビロン捕囚の苦難を経てエルサレムに戻り、神殿を再建するまでの歴史。

ただ、「このような歴史はすべて神が起こしたこと」と解釈するので、やっぱり宗教書でもある。

ちなみに「聖書=イエスの物語」と思う人が多いけど、イエスが出てくるのは新約聖書。旧約聖書は神とイスラエル民族の物語。


●旧約聖書は全39巻。大きくは4つに分かれる

旧約聖書を日本語で一冊に収めると、上下二段組で1502ページ(新約聖書は480ページ)だそうだ(日本聖書協会発行の「聖書 新共同訳」)

構成は大きくは4つ。「律法五書」「歴史書」「預言書」「諸書・詩書」。

わりとよく取り上げられるのは、「律法五書」「歴史書」。

「律法五書」は「モーセ五書」とも呼ばれ、天地創造からモーセの死までが書かれているもの。「創世記」と「出エジプト記」が有名。

「歴史書」は律法書以降の、イスラエル民族によるカナン侵攻、王国建国、ダビデ、ソロモンによる繁栄、バビロン捕囚、エルサレム帰還までの歴史が記されている。

ちなみに作者は不詳。モーセ五書はモーセが書いたと伝えられている。


●現存する最古の写本は「死海文書」

1947年に死海近くの洞窟周辺から次々に見つかったのが「死海文書」。現存する最古の写本で、旧約聖書を構成するほぼすべての書の断片が残されていたそうだ。

↓こんな洞窟から見つかったらしい(クムランの第四洞窟)。この洞窟どうやって入るんだろう。なんかゼルダBoWっぽいw

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↓発見時の巻物の様子の再現。よく残ってたなぁ。

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↓第一洞窟から見つかったイザヤ書の第二の写本

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●民族の呼び名は変化していく

現在と定義が違うので注意が必要。
現在のイスラエル人は「イスラエル国の国籍を持っている人」
現在のユダヤ人は「ユダヤ教を信じている人及びその子孫(つまりユダヤ教信者とは限らない)」

ただ、旧約聖書では、呼び名が変化している。

1. アブラハムのような牧羊の時代の民 → ヘブライ人
2. ヤコブの子孫で神と契約を交わした民 → イスラエル人
3. バビロン捕囚から帰還して以降、世界に離散したユダヤ教の民 → ユダヤ人

ややこしいな。
まぁでも大雑把にはイスラエル民族、ということだ。
(現代のイスラエル人とは定義が違うので注意)



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まぁくわしく追うことが目的ではなく、このあとキリスト教美術を見ていくにあたっての前提を少し整理してみた、というのが今回。

今回はこの辺で。

ちなみに、何か間違っていたり、付け加えたくなったら、その都度、訂正・追記します。

次回は、創世記の「天地創造」
この辺は有名なので、さらっと行きたいと思う。


※この旧約聖書シリーズのログはこちらにまとめてあります。

※※ 新約聖書シリーズはこちら



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