結婚おめでとうございます。誰か知らんけど。

これは、緊急事態宣言もまんぼうも、出ていなかった期間の話です。


小、中学校の同級生と久々に会うことになった。

その友達とは、昔からわりと仲が良かった方だと思う。進学した高校が違ったので、会うことは無くなってしまっていたが、SNSは一応繋がってはいたので、お互い大阪に住んでいることを知り飲みに誘ってみたら、すぐに行こう!ということになった。
フッ軽の友達は最高である。

友達は、わざわざ僕の住んでる最寄り駅まで来てくれて、飲むことになった。

話が逸れるが、僕の住む家の周辺は、若干治安が悪い。
落ち着いた街に住んでいる方々からすれば、若干どころでは無いかもしれない。

例えば、僕の家に遊びに来ていた友達が、終電で帰るため駅まで歩いていた時、どこからともなく大声で「ゲダウェイ!!(Get Away)」と叫ばれたり、(どーゆうことか理解不能)

僕が朝、眠い目をこすりながら、駅まで歩いていると、傘を持ったおばちゃんが、傘で刺すような仕草をしながらどんどん近づいてきたり。(通行人全員にやっていた)

とまあ、話出せば細かな治安悪いエピソードはいっぱいあるのだが、そんな街にわざわざその友達が来てくれることになった。


久しぶりの再会で、人見知りあるあるの「仲が良くてもしばらく会っていないと喋るのに緊張してしまう病」の発動が心配されたが、その心配は無用だった。

幼い頃からの友達との会話はやっぱり面白い。あの当時、思っていたこと、やっていたことを、お互い20歳を超えて改めて振り返ると、俺らってほんとにバカだったよなと心の底から笑い合えた。そして、友達は社会人経験が僕よりも長いので、仕事の大変なことだったりを聞いてもらったりと、とにかく良い時間だった。

夕方早めのスタートだったので、1軒目を出て、2軒目へ行ったのだが、そこがコンセプトが謎すぎる立ち飲み屋で、面白かった。ニューハーフバーというわけでもなかったのだが、注文を聞いてくれた方が、あまりにも長すぎるつけまつ毛をしていてとても良かったし、ノリも最高だったし、カシスウーロンを僕が頼むと、「カシウー!ね、カシウー!」と言っていて、そこで初めてカシスウーロンはカシウーと略すのだ、という発見もあった。

でもそこに長居するのはちょっと疲れるのでと、
個人経営の、お酒が飲める雰囲気良さげな食堂みたいなところに入り、その後は落ち着いた雰囲気のお店でしっぽり男二人でお酒を飲んでいた。

すると突然、とんでもなくうるさい、もうかなりできあがっているおっさん集団(7、8人ぐらい)がその店に入ってきた。

正直、結構いやだった。
せっかく2人でしみじみとお酒を飲んでいたのに。あのテンションで入ってこられると流石にドン引いてしまう。

さらに、不運は続く。
その集団が、僕たちを見つけるやいなや「お、一緒に飲もうや!」と言ってきたのである。

僕は咄嗟に、この店を早く出る方法を頭の中でシミュレーションした。急に体調を崩すプランA、家まで歩いて帰れるが、終電がやばいと言って店を出るプランB、プランC、プランD....とプランKぐらいまで考えた。

しかし、酔っ払った彼らにそんなことなど関係ない。一緒に飲もうと言ってくれているのに断わるのもあれなので、渋々ご一緒させていただくことにした。この時のテンションはありえないぐらい低くなっていた。

しかし、お酒の力はこわいもので、何杯か一緒に飲んでいると、さっきのプランを考えていたのが嘘のように楽しくなってきてしまった。

話を聞いていると、その人たちは全員サッカー部の同級生で、久しぶりの再会だったらしい。何件もハシゴして、たどり着いたのが若干治安が悪いこの街のこの店だったようだ。

僕は大人数の飲み会は本当に嫌いなタイプで、なおかつ知らない人もいる状況なのに、この時ばかりはなぜか普通に楽しめた。

そしてここで、
結婚式のムービーへの出演を打診された。

いったいどうゆうことなんでしょうか。

どうやら、ここに来ていないサッカー部時代のマネージャーが結婚するらしく、今この場で、結婚式で流すムービーのメッセージを撮るというのだ。
まあ、それはいい。全然かまわない。結婚おめでとうございます、だ。

でも僕たちが出演していいんですか?という率直な疑問をぶつけると、

「誰やねん!ってなっておもろいやろ?」とのこと。

ということで、僕は友達と2人で並んで、ガチガチに緊張した状態でカメラを向けられ、どこの誰かも分からない、顔を見た事もない新婚さんに向かってメッセージを送った。

「かおりさん、しんじくん、ご、ご結婚おめでとうございます!」

酔っ払っていたので名前は覚えていないので仮名ですが、本当に結婚おめでとうございます。まさかあの二人が結婚すると思わなかったなあ。しかし、あいつが俺らより早く結婚するなんてなあ。みたいな感情も芽生えてきた。まあ、誰か知らないんですけど。

あのムービーは本当に結婚式で流されたのだろうか。撮影者が帰ってからお酒の入っていない状態で見て、なんやこれ。と消しているかもしれない。いや、どうか消していてくれ。自分の知らない人の結婚式で自分が大スベリしているのを想像すると恥ずかしくなってきた。

でも、もし流されたのなら、ややウケぐらいしていますように。


その後は、お酒を何杯かおごってもらったので、お礼を行って2人で外に出て、友達と次会う約束をして別れた。

夕方から始まり、終わったのが23時ぐらい。6時間ぐらいが体感12時間ぐらいに感じる、密度の濃すぎる時間だった。

そして、僕が1番苦手な、その日に初めて会った人と話をして仲良くなるということも、悪くないなと思った日でもあった。名前も知らない、見たことも会ったこともない人の結婚式のムービーに出演したという、話のネタにもなったし。

こんな経験は稀だと思うが、今住んでいるよく分からない街のあの店で、友達とたまたま飲んでいたから出来た経験だったと思う。偶然の体験ほど面白いものはないと実感した。

そして、まだまん延防止が続く世の中だが、はやくコロナのことを考えない日が来て欲しいと切に思う。

人間には、わけがわからなくて、意味のわからない体験も時として必要なのだ。

この記事が参加している募集

#休日のすごし方

54,768件

#この街がすき

44,153件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?