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詩、文章

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ススキ野原について

ススキ野原について

ススキが光に透ける瞬間が好きで、私の彼岸にはススキがあると思う。

死の匂いが強くなるとき、私は古い電車に乗っているような気になる。そういう映像が流れる。その電車の行先、それを彼岸として、「ススキ野原」に出てくるのはその彼岸に行き着くまでに私の前に現れるもの。私を引き留めるもの。

ススキ野原は私の走馬灯だった。
もうそこにはいない人のことを思い出すときの、こういう深く淡く掴みどころのない、私の喉

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ススキ野原

ススキ野原

 あのとき、寝惚けている私の隣にほんとうにあの人がいたのだとしたら、あるいは、静かな終わりもあったのかもしれない。いつか話した夢の続きに、やさしい顔をしたあなたたちがいる。

 記憶がある。それは、水辺に走る古い電車。べロアの座席に腰かけてひっそりと居眠りをしている私は、車内に自分一人きりだと決め込んでいる。そうして、やわらかい日差しの中、友人の撮った山脈のススキ野原のことばかり考えて、時刻はわか

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書き溜め

書き溜め

日常的に浮かんだ言葉をメモする習慣があるものの、結局体をなさずに溜まっていくばかりである。だから、今日で7月も終わるということに託けてこれまでに書き落とした言葉も全部ここに放ってしまうことにした。殆どが短いただの呟きのような言葉であるが、確かに私から出ていったものたちだ。

 ̄ ̄ ̄ ̄

私はあなたから遠ざかっていく
この目に一点の泡沫を残して

目の前の悲しみに静かに手を合わせている
ただの私

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北の地にて

北の地にて



2016年 2月 旭川

この頃の私は 息をするのもひどく億劫で
明日がくるのが誠に辛く
それでも
つぎはぎだらけの心を持って
口を引き結んだまま 舌を甘噛みしていれば
死に背中を預けるように
全てを投げ出すように
生きていけると思っていた
ずるくて 間抜けで 阿呆な考えだった

人間とはいかに愚かなものか
吐き気がするほど辟易していた
誰一人として信じられる気がしなかった
先に待つ別離の

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