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白湯

温かい飲み物は、深呼吸を思い出させる。
正確には、温かいよりも熱めなくらいが、わたしにとっては丁度良い。

沸かしている時の水面のぐらつきも、カップに注ぐ時に立ち昇る蒸気も、眺めているだけでコリ固まった心身をほぐしてくれる。
お湯が沸き立ったら大きめのマグカップにたっぷり注ぎ、一口啜ればお腹の底まで蒸されるような感覚に満たされて、もっと隅々まで届くようにと呼吸が深まっていく。

1日を始める最初の1杯に、熱い白湯を口にする。
寝起きのコリ固まった体に染み渡り、浅くなっていた呼吸が深まって、カップが空になる頃には脳みそもしっかり目を覚ましている。
そうなれば、鈍くなっていた手元もいつものテンポを取り戻して、朝食の準備にも拍車がかかる。

夜、眠りにつく前にも白湯を一杯嗜む。
1日の疲れを熱々の白湯に溶かし込んで、ぼんやり薄れゆくその蒸気を傍らに、頑張った自分を労る。
あっという間に飲み干して指の先まで温まったのを感じると、もう瞼が重くなって体が休もうと言う。
読んでいた本を閉じて布団に横になったなら、いつの間にか深い眠りに落ちていってしまう。

夜が明けて、また湯を沸かす。

いつから飲み始めたのかはもう覚えていないけれど、わたしのリズムを整えてくれる白湯は、いつしか離れられない相棒になっていた。




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