「ACLでの悔しさはACLでしか返せない」。いよいよ決勝! 松原健が募らせるアジアの頂点への想い「僕もチームのみんなに助けられて、今ここにいる」【無料記事】
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いよいよACL決勝。松原健が語った想い
決戦の日が近づいている。横浜F・マリノスは5月11日にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝の第1戦でホームにUAEのアル・アインを迎える。
2017年からマリノスでプレーする松原健にとっては三度目の正直でたどり着いた舞台だ。ACL初出場だった2020年大会、そして2022年大会はいずれもラウンド16で敗退。「2大会はベスト16で敗退してしまって、本当に悔しい思いをしたのが強い印象」だと語る背番号27は、「ACLでの悔しさはACLでしか返せないという気持ちがあって、やっとタイトルまであと一歩のところまで来た」とアジア制覇に闘志をたぎらせていた。
ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。ホームに仁川ユナイテッドを迎えたグループステージ初戦を2-4で落としたところから全てが始まっている。
「グループステージ突破をかけるにあたって、初戦は本当に大事だと思ってやった中で、ああいう負け方をしてしまって。たぶん『この先どうなるんだろう…』と思った方も多いんじゃないかなと」
意気揚々と臨んだ初戦で出鼻をくじかれ、少なからず動揺もあっただろう。だが、その後は第2節から3連勝。第5節で再び仁川ユナイテッドに敗れたものの、第6節で山東泰山に3-0と快勝し、無事にグループ首位で決勝トーナメント進出を決めた。
松原は「自分たちが目指すべきところをみんなで共有することによって崩れることはなかったですし、それが今、決勝まで行けたことにつながっているんじゃないかと感じます」と語る。シーズン終盤にかけてJリーグで優勝争いをしながら、ACLでも結果を残せたのは「優勝」という目標が明確だったからだ。
「僕もチームのみんなに助けられて、今ここにいる」
決勝トーナメントに入ってからも、ゴールがブレることはなかった。ラウンド16、準々決勝、準決勝と全てのラウンドで退場者を出しながら、勝ち上がってきた。その道筋にこそマリノスが誇る一体感や、全員で共有するフォア・ザ・チームの精神がよく表れている。
「僕もチームのみんなに助けられて、今ここにいる。誰一人見捨てなかったことが、今、決勝にいる証なのかなと思います」
松原もラウンド16の第1戦で終盤に退場処分を受けた。バンコク・ユナイテッド戦でレッドカードの原因となったタックルは「もちろんやってはいけないプレーだと、しっかり反省した」。一発退場だったため、ラウンド16第2戦と準々決勝第1戦は出場停止に。仲間たちがタイトル獲得へのチャンスをつなげてくれると信じ、背番号27は「挽回していくためには、自分も結果で見せるしかない」と決意を固めていた。
「自分の中にあったのは『もうやるしかないな』と、その思い1つですね。チームのみんなに助けてもらったから、誰かが苦しい思いをした時に、今度は自分がその支えになってあげられたらいいなという思いを持ってずっとやっていました」
ACLで出場停止だった間はリーグ戦に集中し、山東泰山と対戦した準々決勝第2戦でアジアの舞台に舞い戻ると、松原はフル出場で1-0の完封勝利に貢献。チームへの想いを力に変えて、マリノスを史上初の準決勝進出に導いた。
そして、蔚山現代FCと戦った準決勝の2試合では負傷で不在の喜田拓也に代わってキャプテンマークを巻いた。
「蔚山現代との2試合に関してはキャプテンマークを任せてもらった。より一層、責任感が出ましたし、喜田がいない中で、チームが崩れそうになった時に自分が何とかしたいという思いが特に強かった2試合だったと思います」
アウェイでの準決勝第1戦は0-1で敗れた。ホームに戻って1点ビハインドの状態からの第2戦は「プレッシャーは少なからずありましたけど、その中で自分たちのやりたいことを出せた」という手応えがある。
マリノスは3点を先行した後、前半のうちに退場者を出し、2点を返されて2戦合計スコアは3-3に。後半は蔚山現代の猛攻を受けたが、10人で踏ん張って延長戦に突入。結局、120分間の戦いになっても追加点は許さずPK戦に持ち込んだ。
松原は3人目のキッカーとしてPKを蹴り、見事に成功させた。守護神ポープ・ウィリアムが蔚山現代の5人目だったキム・ミヌのPKを止め、最後はエドゥアルドが豪快に成功させて試合終了。ギリギリの戦いを制し、アル・アインが待つ決勝への挑戦権をつかみ取った。
初のアジア制覇へ「チャンスが目の前にある。それを全力でつかみにいく」
これまでの物語があるからこそ、頂点への想いが強くなる。未だ手にしたことのないアジアのタイトルを獲得するのは、マリノスにとっても松原にとっても今まさに目の前にある最大の目標だ。
「プロ選手である以上、タイトルをいくつ獲れたかというのはすごく重要です。タイトルを獲れるチャンスは何度も転がってくるものではないし、つかめるチャンスが目の前にある。それを全力でつかみにいくのがプロだと思います」
マリノスとしての誇り、そしてプロサッカー選手としての誇りをかけて、松原はACL決勝に臨む。ここで負けたら何も残らない。「ACLでの悔しさはACLでしか返せない」のである。
ACL制覇という夢を実現するべく戦う選手たちの想いを、勝利への大きなエネルギーへと増幅させるにはファン・サポーターの力も必要だ。時間をかけて育ててきた自慢のアタッキングフットボールで、アジアの先には世界を……松原は27番の後ろにマリノスファミリーの想いも背負って横浜国際総合競技場のピッチに立つ。