親父の城
私が中学1年生のとき、親父が一世一代の大きな買い物をした。
35年ローン。大人になった私は痛感する。当時は全く感じていなかったが、
働いてみると、私と妹を育てて、良く新築のマンションを購入で来たなと・・・。
高校生まで、親父は私にとって本当にウザい存在だった。常に監視をされているようなその眼差しに、日々嫌気がさしていた。
大学入学後、父との関係は大きく変わった。高校卒業後にすぐ就職した父にとって、私を大学に行かせたいという思いが空回りしていたのかもしれない。
そんな父の城を東日本大震災は、大きく傷つけた。父は城を残して単身赴任中。母も父のもとに行っていたので、私が城を見に行った。
ひずみでドアが開かない。管理人さんにもう壊すしかないと言われ、窓を壊して中に入った。部屋は無残なものだった。「親父の城が・・・。」と考えた瞬間、涙が止まらなかった。
ありがたいことに、親父と母は無事であった。
復旧作業が進み、日常が戻った・・・。
しかし、2021年2月13日。またも大きな地震が親父の城を襲った。東日本大震災とほぼ同じ壊れ方だった。
「前にもどっちゃったね・・・。」
黙々と片付けが進んだ。ドアはまたひずみで閉まらなかった。
東日本大震災の大改修により、管理費が底をついていたため、なかなか改修が進まなかった。がようやく全改修が終了する間際・・・。
2022年3月16日。大きな震度6弱の大きな地震。また同じ光景。
母は、「もう住むのは難しいかもしれない。」といった。
親父は無言で壊れた箇所の写真を黙々と取っていた。
親父の血と汗の結晶。その城が3度も無残な姿になった。
命があるだけで、幸せ。
でももう一つわがままを言えるなら、親父と母のあの表情を見るのはもう嫌だ。
親父の大事な城を、いじめないでください。
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