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コロッケが好きじゃなかった私が、「コロッケのころっ家」のコロッケに最近ハマっている、という話。

最近、「コロッケのころっ家」というコロッケ屋さんのコロッケにハマっている。

”コロッケ”がゲシュタルト崩壊しそうだが、詳しく書くと、『ものまねスターのコロッケ氏がプロデュースする、「コロッケのころっ家」というコロッケのテイクアウト専門店のコロッケにハマっている』と、そういうことである。余計分かりにくくなっていたら申し訳ない。

一番スタンダードなビーフコロッケは1個150円で、スーパーのコロッケを基準にするとちょっと高い。が、めちゃくちゃ高いというほどでもない、絶妙な値段だ。
味はといえば、びっくりするような何かがあるわけではなく、「あー、コロッケってこういう味だったよね」感のある美味さなのだが、これがまた絶妙に中毒性がある。ふとした瞬間に「あ、コロッケ食べたい」と思いついたら最後、「スーパーのコロッケじゃなくて、”ころっ家”のコロッケが食べたい」となってしまい、予定を変更してでもわざわざ買いに行く、という事象が2週間に一度のペースで発生してしまっている。
ちょっと高いけど買えないほどではない値段で、ちょっと面倒だけど買いに行けない距離でもなくて、そういう絶妙な不便さもまた、中毒性の演出に一役買っているのかもしれない。

そもそも、私は揚げ物があまり好きではない。
好きでないので、揚げ物をするのはひたすら面倒くさく、でも揚げ物大好きな夫と息子に一切食べさせないのも罪悪感がある。なのでコロッケは長年、スーパーで1個62円(税込)のコロッケがあった時にだけ、買って食卓に並べていた。そして自分の分は「わざわざコロッケ食べるぐらいなら、残り物と海苔でいいや」とほぼ食べずに済ませていた。そのぐらい、コロッケは好きでも何でもなく、どちらかといえば避ける食べ物だった。

だが今年に入ったある日、友人が「”コロッケのころっ家”のコロッケを買ってみたら美味かった」と言うのを聞いた。
なんじゃそりゃ、と思って詳細を聞くと、ものまねスターのコロッケ氏のコロッケ屋さんだという話で、「何だそのすぐ潰れそうなコンセプト…」と思いつつググると、ド田舎の私の家からも普通に寄れる範囲に出店していることが分かった。

ついでに言えば、私は有名人プロデュースのなんちゃら、というのも好きではない。
ラーメンだろうがレトルト食品だろうが、同じような商品で似たような値段なら、迷わず有名人の顔写真が「ついていない方」を買う。なのでどちらかといえば「嫌い」寄りだ。理由は特にないのだが、強いて言うなら知らない人の顔写真がウザいとか、知り合いでもない人の言うことを信じて買う感じがするのが嫌だから、だと思う。
更に言うなら、私はものまねスターのコロッケ氏も好きではない。世代としては多分ギリギリ入るぐらいなのだが、子供の頃からものまね番組というもの自体が嫌いで、さらにあの派手メイクもなんかキモいし怖いしで、好きになる要素が全くなかったのだ。正直TVに出てきたら「他のチャンネルにしない…?」と言いたくなるぐらい、「結構嫌い」である。多分、ものまね=馬鹿にした感じがするからだと思う。そういうギャグなのはもちろん分かっているのだが、「そういうギャグ」がこの世に存在する所から不快なので、多分永遠に折り合えないだろう。

だが、私は友人の言う「美味いコロッケ」を食べてみたくなった。
わざわざ言うぐらいなのだから、少なくともある程度以上は美味いはずだ。総菜を買うことを考えれば値段も驚くほどではないし、場所も普通に行ける範囲だ。一度買って食べてみて、美味いと思えば「美味しかったよ!」と言えばいいし、そうでないなら買ったこと自体、言わなければいいだけだ。
そう思って、私は最寄りの「ころっ家」の入っている、商業施設っぽい場所に行ってみた。

「改装のため休業中」だった。

ヒクリ、と頬が引きつった。

たかがコロッケの分際で、随分といい度胸だ。
私は温厚な平和主義者だが、売られた喧嘩は買う方である。「ふふふ、初めてですよ……ここまで私をコケにしたお惣菜さんは……」とフリーザのごとく怒りをたぎらせ、じりじりしながら営業が再開するらしい2か月後まで待ち、今度こそリベンジを果たしに、「ころっ家」へ行った。

今度は、きちんと営業中だった。

レジに近づくと、コロッケ氏の歌うテーマソング?が大音量で鳴っていた。好きでない人間にとっては結構ウザい。コロッケを買う目的がなければ、まず近寄りたくない音量と鬱陶しさである。が、2か月越しの無念を晴らすために、ここは不問にしてやることにする。私は寛大なのだ。
そして初心者らしく「ビーフコロッケ3個+メンチカツ2個入りのセット」がおススメらしいので買った。すらっとしたお姉さんから「美味しい温め方」の紙も貰った。お値段1000円弱、まぁまぁ、スーパーでトンカツを人数分買ったと思えばこんなものだろう。

そして夕食の時間になり、私はきちんと手順に従い、買ったコロッケを温め直した。元システムエンジニアとして、実行した手順が正しくなければ、正しい結果もまた保証されないことはよく分かっている。店の想定する「美味さ」を正しく再現した上でなければ、「美味いか不味いか」を公正にジャッジすることなど出来ない。
さぁ、2か月にわたり私を焦らした罪深きコロッケよ。貴様のその全力を、今こそ見せてもらおうではないか!

さくっ。

あ。美味い。
これは美味いわ。

ほほー、と私は感心して、くるっと手のひらをひっくり返し、結構溜まっていたマイナスポイントを全部チャラにした。

何というか、「美味いコロッケ」である。それ以上でも、それ以下でもない。
「コロッケなのに○○だ!」とか、「コロッケと思えない美味さ!」みたいな種類の驚きは皆無な、単純に純粋に「コロッケってこうだよね」という味だ。でも美味い。それも、結構美味い。私、実はコロッケ好きだったんじゃね?と思うぐらいに。
そして、スーパーのコロッケと比較すると、値段が高いだけあって大きい。家族3人で合計5個はちょっと多くて、1個余った。(翌日、夫や息子に取られない昼間にこっそり食べた。)「夕飯一回分の総菜」として見るなら、スーパーと比較しても、そこまで気にするほどコスパ悪くないか、と思わせるボリュームと価格、そして味だ。味の方で大分、判断が引っ張られた可能性は否定しない。

そういうわけで、元々コロッケがそんなに好きでもないし、有名人プロデュースものも苦手だし、ものまねのコロッケ氏のことも嫌いな私は、「コロッケのころっ家」のコロッケにハマってしまって、昨日も買ってきたところである。

昨日はちょっと贅沢に、夕飯用のビーフコロッケ以外に「かぼちゃのドーナツコロッケ」なるものも一個買って、買った直後に車で食べた。手順通りとはいえ「温め直す」より、購入直後の方が美味いのでは?と思っての行動だったのだが、ボロボロと衣を車のシートにこぼしつつ、やっば、うっま!!と素手で貪る私の姿は客観的にはどう見えていただろう。完食してから我に返って若干反省したものの、とても美味しかったので、次回は車から降りて、駐車場の隅の方で立ち食いしようと思う。今度はウェットティッシュも忘れずに持参して。

レジ付近の大音量の歌はやっぱりうるさいし鬱陶しいし、注文を聞き取るお姉さんも苦労してそうだったし、妙に耳に残って軽く殺意が湧いてくるので、何とかして欲しいところだけれど。
またコロッケが食べたくなったら、買いに行きます。美味いね、コロッケ。

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