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2022年9月 青森旅4

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 八甲田山。その名で真っ先に思いつくのは雪中行軍。戦時中に沢山の兵隊さんが猛吹雪の中、遭難したという事件。ロープウェイでの道中、そのあらましを係の方が淡々とマイクで語ってくれます。日露戦争、雪中行軍の訓練として行われた八甲田山行。車窓左手に見える山の中には、遭難者の銅像が建てられているのだとか。そもそも八甲田山という名称の山はなく、八甲田大岳を中心としたこの辺りの連峰の総称なのだということも教えてくれる。
 そうして山麓駅から約2.5km、10分ほどで山頂公園駅へ。標高1300mくらいです。風は冷ややかだけれど、パーカーを着込んでいるし、陽が出ているしでそこまで寒さは感じません。駅右手には、青森市の街並みというか、なんか緑じゃないところが広がっております。というわけで今日も撮影です(記憶容量が危ういので画質を落としたのだけれど、youtubeでは影響ないのかも)。山頂にはゴードラインと呼ばれる遊歩道があり(コースが、ひょうたん=ゴードの形をしているため)、30分と60分コースがあったが、もちろん60分コースへ。人はそこまで多くないけれど、一人分の幅がある程度の道なので、自然と前を行く方に追いついてしまう。どの方も毎回先を譲って下さり、そのたびに撮影をしているため挨拶が小声だったり会釈程度だったりしてしまうのだけれど、それやめようとこのとき思いました。自分の声が動画に入るデメリットよりも、道行く人がお互いに快いほうがいいじゃないか、と。
 そうして田茂萢(たもやち)湿原へ。山中にある湿原。風はけっこうある筈なのに、どうしてかその水面は澄んでいて、奥の田茂萢岳がきれいに映り込んでいます。枯れ色の草地も目に穏やかで。ただ、撮影時には展望台に人が多く落ち着けず、少し足を止めたのちに先へと。そんなわけで山頂付近をぐるりと歩いて行きます。眼下に見える陸奥湾よりも、前方に聳えるこんもりとした山々の景観に、その向こうの空に目を奪われます。こんなところを歩いているというだけで楽しい(この感じはきっと文章よりも動画のほうが伝わるかと)。途中、草だらけで「これほんとに道?」と不安を覚える箇所もあったけれど、道を誤ることもなくすいすいと進み、ときに立ち止まってあたりの景色を目に映し、60分コースを30分ちょいで歩き終えました。ただ、これで下山しても乗車予定のバスにはまだかなり時間があったので、山頂駅の売店やら(青森方言マグカップ700円を見て、キミ安いね、と思う)、駅屋上の展望台で寒風にはたかれたりしておりました(そこに向かうまでの細い通路に、映画八甲田山の写真が飾られていた)。で、山頂駅出てすぐのベンチで女性二人が茹でトウモロコシを食べているのを見て、山の上でそりゃ名案だと売店に行けば、山麓駅のほうの売店で売っているとのことで。素敵なアイディアだったが残念(昨日の宿で、昼食用のおにぎりを作っているようなので、それを利用すれば良かったなぁと)。それでもまだ時間があるので、先程の人が多くのんびり景色を味わえなかった田茂萢にもう一度赴く。今度は静かに水面のきらきらを、と思い行けば、ちょうど閑散としていて──と思ったら、30人くらいの学生の集団が流れ込んできて、にぎやかこの上なし。うるせへや、と思い、パーカーのフードを目元まで下ろし、ベンチでごろんと寝ておりました。学生さんたちは何枚か写真を撮って、なぜだか知らないけれど「ヒュィー!」みたいな奇声をあげて、列をなして去って行きました(引率の男の先生が若くて慕われている感じだったけれど、大変だろうなぁと)。というわけで、ようやく静かな湿原。年配の男性と二人残ったので「静かになりましたね」なんて話し掛ける。で、今一度、湿原をしみじみながめる。草紅葉の中の陽を浴びた水面に山が映っては、ひそやかにきらめいて。そうして誰もいなくなり、リュックを枕にしてまた寝る。いい心地です。

 下山です。八甲田ロープウェイ。存分に堪能しました。そうして下界に降りてからお待ち兼ねのモロコシ売り場に行けば、売り切れとのこと。仕方ないので隣で売っていた豚汁を七味ぶっかけてすすります。発泡スチロールっぽい白い容器に注がれる豚汁。こりゃまるでマラソンの参加賞だなと思いつつ、はふはふ。ごちそうさまでした。というか日向に出れば暑っい。もうトイレで中に着込んでいたランニングタイツを脱ぎ、半袖姿になります。それでちょうどいいくらい。いやほんと、天気に恵まれております。そんなこんなで定刻通りバスがやってきて、さようなら八甲田山。お馴染みのバスの観光案内(録音)に耳を傾ければ、八甲田山について語られていて、雪中行軍の遭難事件のときだけラッパか何かの勇ましいBGMが流れ、何事? と思う(このあとにもう一箇所、BGMつきの観光案内が流れてたけど、どこかは忘れた)。
 さて、道は左右に蛇行して、ぐんぐんと山を下っていきます。というかバスの中で珍しく眠ってしまいました。思っているよりも、かなり疲れが溜まっていたようで。で、気づけば窓の外は、先ほど山の上から眺めた青森市。時刻は昼の2時前。少しお腹が減った状態で、何だか工事中でどこが駅なのか分からないけれど、青森駅に到着。もう、市街地は美味い店をかぎ分ける鼻が鈍るので、予め昼飯チェックしておきましたと向かえば、「夜からの貸切準備のため昼は早めに終了~」で、仕方ないから有名店に向かえば、ランチタイムはさきほど終わったばかりで。もう(観光案内所でもらった地図。ねぶたんの載った地図が分かりやすく、細かなお店も割と掲載していて良い出来です)。じゃあいつも通り探しますかと駅前を歩けば、何だか東京でも見かける店名が並んでいてげんなり。っと、屋台村っぽい感じのところにいい感じのラーメン屋を見つけ、そのまま入店。石岡喜一郎商店。何やら戦後から続く味を、お孫さんがこのたび受け継いだとかそんな記事が壁に貼られている。で、オーソドックスな煮干しラーメン。ちょこっとだけ煮干しのインパクトが強いような気もしたけれど、なかなか美味しかったです。何より自分で見つけて入ったというのが嬉しく。ごちそうさまでした。

 さぁさぁ今日はもう荷物を置いちゃいましょうと、早々にホテルにチェックイン。今日はクローゼットが扉のない剥き出しタイプなので、パーカーも掛けられます。というか、少し疲れたからと目覚ましを20分くらいでセットして寝れば、一時間も寝てました。思ってたよりもかなりお疲れのようで。まぁでもせっかくの旅先、寝てばかりいたんじゃもったいないので、青森市をお散歩することにします。
「味噌カレー牛乳ラーメン」旅に来てまで、そんなもん食べたくないなぁ、と思っていたが、この味が青森では人気のようで。とか思いつつその店前を通り、海のほうへ。じんわりと空に黒みが混ざってまいりました。海岸公園。階段前で女子高生が踊っていたり、ベンチでカップルが静かに座っていたり、太宰治のモニュメントを眺めたり。完全に公園として整備された一画だったから、橋を渡った先に砂浜があったのは驚いたり。リンゴのドデカくてオシャレな物産館には、太宰治の『津軽』がクッキーとして売られていたり。本当は来るはずだったが、寝てしまったためにすでに入場終了のねぶた祭りの資料館「ワ・ラッセ」へ。うむ、無料の部分でもけっこうねぶたの大きな山車が飾れていて存外に楽しめたけれど、ちらりと見えた中はもっと迫力があり楽しそうで。というかトレイ立ち寄ったら「洗面所に砂を流さないで。パイプが詰まります」とか書かれていて、さっきの砂浜で遊んだ人が、ここに足を洗いに来るのね、とか思ったり。むぅ。やっぱり、目が覚めきってないような。そうして青森駅前へと戻ってくる。さぁて今晩はどこで食べようか飲もうか。と、昼も繁盛してた、ホタテ料理の有名店「おさない」さんに行列が。でも、そのすぐ脇、二階の居酒屋「おさない」へと通じる薄暗い階段は、人がおらず(食堂おさないの居酒屋です、みたいな案内板があった)。夜なら別に居酒屋でも良くないか? なんでみんな食堂のほうに並ぶのだろう……と思いつつ通り過ぎるも、まぁ「おさない」なら美味しさは約束されているようなもんだし、いってみっか、と踵を返す。というわけで行列の合間をごめんなさいと抜け、二階へ。7時ラストオーダーとか書かれているけれど、早めに寝たいので問題なし。仄暗い中、メニューが表記された明かりに照らされた扉に手を掛ける。一名です。テーブル席へご案内。
(実は一階の食堂「おさない」は、もう十年以上前に一度行ったことがありました。バイク旅で東京から青森まで半日で移動し、そこから函館へフェリーで、というルート。その合間に美味そうな店だなと立ち寄ったのが、おさないさん。というわけで当時は有名店と知りませんでした)

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