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2022年9月 青森旅5(終)

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 居酒屋おさない。のっけから地酒でいきます。喜久泉。あとから気づいたが、青森の一番有名な地酒、田酒(でんしゅ)と同じ蔵元さんで。というか、「きくいずみ」なのに「きくせん」とオーダーしておりました。日本酒読みですねぇ。と、やりいか、ほたてひもの刺身。そりゃもう合いますわ。続いて酸ヶ湯温泉で急いで食らった生姜味噌おでん(これも青森グルメのようで)と、ほたてバター。ほたては元々好きなのだけれど、ここのほたてバターは絶品でした。口に含んで、声なき声で唸っておりました。そうして、津軽の地酒じょっぱり、を生酒で。生酒は火入れしてないからか、すっきりとした飲み口で好きです。フレッシュなお酒、という雰囲気もまた。酔いすぎないように、和らぎ水もいただいて飲み進めていきます。どのタイミングかは忘れたけれど、下の行列に痺れを切らしたのか中年女性が2階に上がってきて「お酒を飲まないで、下のと同じメニュー注文できる?」と、端で聞いていて厚かましいなぁと思える質問をしておりました(まぁ、同じメニューはいくつかある)。しかももう一人連れの女性がいて、席に着いてから「別会計にしといてね」とか言い出して、店員さんも絶句しておりました(まぁ、一人はビール頼んでたし、その後店員さんも普通に会話をしていたけれど)。何だか、こっちは客なんだから、という意識が垣間見えるようで、辟易しながら酒を飲んでおりました。一方、同じタイミングで来店した中国の一人旅女子は(他の客との会話でそうと知れた)ビールを飲んで、感じよくあれこれ注文していて、片や標準語、片やカタコトで、何だか対比せずにはおられませんでした。それと中国の旅人が他の客と青森の観光地について話してて、地元民が「十和田湖はただの湖で他はなんにも」みたいなことを言っていて、自分は十和田湖の一端にしか接していないけれど、まさにそんな感じで、でもその何もないだけの湖が嬉しいんだよなぁと、内心思っておりました。自分も席が近かったら、きっと色々話していたかも。まぁ、良いでしょう。というわけでお勘定。よい青森、よいお酒でした。そのままよい心地で夜の散歩へと出かけます。

 ライトに照らされた道よりも、薄暗い路地のほうが嬉しく。駅前の目抜き通りから一本外れるだけで、ほらこんなに静かに。犬の遠吠えもよく耳に響くことでしょう(遠吠えなんてなかったけど)。もう気の向くまま、路地をあちらへとこちらへと。駅前のビルの壁面や、工事現場の壁に描かかれていたナース姿の女の子のキャラクター。このときも自販機の側面にサッカーボールを蹴ってるイラストや、病院の玄関脇に描かれているのを見かける。このキャラクター、何なんだろう(帰宅後調べたら、青森では大きそうな医療法人のマスコットキャラクター?のようで。病院にもマスコットが!)。黒塗りの店構えの前を通れば、格子から漏れ出る明かり。これは相当に美味そうな店の面構えだけれど、どうしてコロナ対策のステッカーがガムテープで留められているのだろう……もっと軒先に似合ったのが色々あるだろうに、なんてことを思う。で、まぁ、少し酔っていたとしても、ある程度の方向は決めていて、辿り着いたは善知鳥(うとう)神社。まぁ、今さらご挨拶(思えばこの旅初の神社か)。夜闇の中、ほのかに浮かび上がる鳥居がいい感じです。二礼二拍一礼。その後、何だか有名のような気がする倉庫群でも見に行くかと思ったが、割と遠そうなので、海辺の公園まで出て、ゆったり逍遥。そうしてふと、自分のこういった旅日記なり動画なり旅先での夥しいツイートだったりはすべて「自分のしているとても面白い旅を誰かに話したくてたまらないんだ」という思いに根ざしている、ということをTwitterに書こうという心地になって、そんなことを書き、お礼を言う。本当、ありがとうございます。
 その後、アスパムという観光物産館である正三角形ビルの側面を見て、この斜面なら走ったら上れるだろうかといった意味の駄句を投稿する。阿呆。あぁ、もうホテルです。今日は大浴場ないけれど、お風呂であったまり、就寝です。おやすみなさいませ。

4日目(最終日)

 またまただいぶ晴れた。顔を洗って着替えて朝食会場へ。青森名物の揃ったバイキングです。貝の味噌焼きは優しいお味。せんべい汁は南部屋さんで食べたの違ってフニャフニャしてて、いまひとつ。ここでも生姜味噌おでんを食らう。ごちそうさまでした。そうしてチェックアウト。青空のもと青森駅前を離れ(信号機のメロディが、東海道新幹線のホームドアのメロディと同じ、乙女の祈りだった)、バラック小屋が並ぶ一画へ。横山商店。通称はるえ食堂。ここで今日のお昼を買っておきます。黒ごまたっぷりの焼きおにぎりを三つ。こちらのお店、「戦後」という言葉を連想させるような、すっごい古そうな店構えながらも人気店らしく、おにぎりもそうだけれど、ここの店主のはるえさん目当てで来る方も多いのだとか(かなりご高齢の腰の曲がられたお婆さんが一人で営んでおります)。自分が行ったときは何だか常連さんと話し込んでいるようだったので、特に話し込まず、あとでいただきますとお店をあとにしました。
 さて、昼飯を得たところで南東へ。心持ちゆっくりと歩いて、今日は寄り道を。ていうか、陽射しが暑い。コンビニでお茶を買って(旅の最中って普段はそうでもないのに、なぜだか「お~いお茶」を買うことが多い)、てくてくと。踏切を越えて行けば、久須志(くすし)神社が。立ち寄ってご挨拶をして、さっきから道の向こうに見えていた、小さなお惣菜屋「はなわらび」に立ち寄ってみることに。「帆立メンチ」の張り札だけで、もうやられました。帆立のメンチなんて初めてです。というわけでこじんまりとした店内で、帆立メンチを購入。昔ながらの母さんの味みたいなお惣菜屋で、良い雰囲気でした。さぁさぁ、まだ道を行きます。

 そういえば、昨日の夜中だか早朝だか、夢の中でだかふと目覚めてだかは覚えてないけれど、思ったことがある。必然性という意味であれば、自分が小説やアートをすることよりも、(今は)旅日記を書くことのほうが必然性を感じるよなぁ、と。だって話したくてたまらないのだもの。別に誰に言われたのでもないのに旅日記は昔から書いていたし。必然。必然。ここ最近、自分の中で良く繰り返される言葉です。まぁ、これはまた近いうちに書きます。

 自衛隊前を過ぎ、ようやっとたどり着きました、青森県立美術館(さらっと書いてますが結構歩きました)。そもそも今回の旅を思い立ったのは、十和田とここの美術館に訪れたいがためでした。早速芝生広場を抜け、大人一名。大きなリュックをロッカーに入れておきます。そして無機質なエレベーターへ。ボタンも押さずに独りでに移動するのは、村上春樹の『世界の終わり~』の序盤のようで、この先何があるんだろう感が増します。まずは企画展。服飾の方の展示でした。鑑賞してて気づいたが、アートを観たくて来ていたのだから、別に常設の展示だけでも良かったかなぁと。けどまぁ、アートも服も人間が生み出すものだし、繋がりはあるだろうから、という気持ちで臨むが、帰りのバスの時間は大丈夫だろうかという思いがあり、今一つ頭に入ってこない。というか、大きなリュックを背負って一時間以上歩いてたから、背中が汗でひやりとしていて、定期的にパンフレットで背中をぱたぱたと仰いでおりました。で、そのまま常設展のエリアへ入っても、これまた時間が押しているからなのか、どうにも十和田のときと比べて、刺激というかあれこれ思考する楽しさが少ないように感じました。一番有名だろう「あおもり犬」を観ても、視覚的なインパクトは覚えたけれど、他の観覧者さんがいっぱいいてあまり集中できず、なおかつそこに至るまでの通路が迷路のようで分かりづらく「この導線の意味は何かあるのだろうか」という方面に思考が働いてしまう。まぁ、少し気持ちが急いていたのは否めないけれど、アートと街が共存していた十和田市現代美術館のあとだったので、どこか物足りない心地に。おまけに係の方に伺い新青森駅行きのバス停に行けば、数時間に一本の発着で、すでに出発したあと。新幹線に間に合わない。

 が、ま、いっか。歩けば3km程度。新幹線出発までまだ一時間半もある。なら充分に間に合う、と美術館の見える日陰のベンチに座り、焼きおにぎりと帆立メンチをいただくことに。おにぎりは、もう少し中に味がついていたらなぁという感じ。帆立メンチは思いがけずに買って正解の代物でした。うまし。というかおにぎり二つで充分だったわ。一つは持ち帰って夕飯にしますか。さて、出発です。
 いや、まぁ、でも暑い。世界遺産に登録された三内丸山遺跡の前を過ぎ、新幹線の高架下をくぐり、墓地内へ。ルートになっているから通り掛かったが、霊園内に建つ木の電柱や、墓地の中心でもの静かに軒を連ねている商店たちが、何だか印象的でした。というわけで難なく新青森駅に到着。出発までまだ一時間もあるよ。駅内にはミニねぶたが色々と飾られていて、様々な新幹線を金魚に模したものまで。お土産屋で太宰治『津軽』クッキーを買おうかと思ってたけれど、見当たらずに残念。代わりにポテトチップスのリンゴ版みたいなアップルスナックを購入。これを車内販売のアイスと一緒にやっちまいましょう。そうしてホームのベンチで一休み。
 三泊四日。久々の長い旅でした。次旅に行くとしたら、同じ宿に連泊してのんびりしたいよなぁ、なんてことを旅も終わらぬうちに思う。やがて新幹線に乗車。車内販売で伺えば、アイスは東北新幹線ではやっていないとのこと。シンカンセンスゴイカタイアイスは東海道新幹線のみのようで。楽しみにしていたのに残念。まぁじゃあ、このアップルスナックは家に帰ってからアイスと一緒に食べますか。そんなこんなで青森旅はこれにて仕舞いでございます。長々とお付き合い、ありがとうございました。また次の旅でお目にかかりましょう。それでは。

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