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2019年12月 ときがわ日帰り旅

12月18日(水)

 朝6時。休みにも関わらず、仕事のときと同じ時間に起きる。朝食代わりに野菜ジュースと牛乳を飲み、出発。日帰り旅は荷が軽くてラクチンラクチン。
 池袋まで出て、東武東上線でまずは坂戸(濃霧が発生して到着が遅れる)、高校生たちのお喋りに揉まれながら、越生(おごせ)へ。越生と言えば、梅と設楽兄弟だなぁ、とか何とか考えながらホームの陸橋を渡ると、サイレントヒルばりの霧に包まれた町並み。そしてJR八高線で、出発から一時間半、明覚(みょうかく)に到着(韻踏んだ)。
 駅を出ようと、suicaをタッチすると、ピピーとエラー。「入場の履歴がない」とかそんなメッセージ。そういや確かに越生駅で乗り換えたとき、東武線の改札は出たけど、JRの改札はなかったよなぁ、そんでもって無人駅なので駅員さんの姿もなく、改札横にあった料金箱に運賃190円を入れようとしたら、小銭は500円しかないよ。よし、あとで来ようと、一時的なキセル状態で、改札を出る。
 明覚駅は「関東の駅百選」に選ばれた、丸太で組まれた六角形の駅舎で、なかなかいい感じ、なのだけれど、早い時間帯ということもあって、やや掃除されていない印象。まぁ、無人だと仕方ない面もある。パンフレットのラックも空になったまま……、地図が欲しいのだがと見回すと、駅舎の片隅に「ぶらっと、ときがわvol.2」が。vol.1の頃から思っていたけれど、このガイドブック、かなり使えます。デザインも自治体発行といった堅苦しさが一切なくお洒落。というわけで良いセンスの地図を携えて駅からテクテク1km弱歩いて訪れたのは、今回の旅の本丸「とうふ工房わたなべ」様。えぇ、私の活動名「小説工房わたなべ」に似ているという駄洒落みたいなノリで今回の旅を思い立ちました。まぁ、以前にも原付ツーリングで何度か訪れてはいるんだけれどね。そして勝手に親近感を覚え、小生のコースター小説を寄贈しようと、コースター3種、計50枚強を自賛してお邪魔しました。アポも何も取っちゃいないが、Twitterで相互フォローはされてる。「スノーマンに会いに来て下さい」といったツイートにも「いずれ会いに行きます」とリプライはさせていただいたが、いきなり行って受け取ってくれるだろうか。忙しい時間帯はまずいだろうから、確実にお客さんが少ないだろう開店丁度の9時がベストだろうと、朝早くに出発したのはこのためでございます。朝起きて飲み物しか口にしていないのも、ここで朝食を買うためです。
 というわけで、おからドーナツと、ときがわ産のゆずジュース「柚子の贅沢」を購入し、レジの方に仁義を切る。「ちょっと変なお願いがあるのですが、私、小説工房わたなべという名で活動しておりまして~~」ここに来るまで考えていたセリフです。噛まずに言えましたよ。そうしたら店長さんを呼んでいただき「あ、Twitterの!」と話は淀みなく進み、快くコースター小説を受け取っていただきました。ほっ。工房わたなべ巡り、まずは一店目達成であります(二店目は福島県南相馬の「菓詩工房わたなべ」様です。訪ねるのは常磐線の開通する来春以降だろうか)。よかったぁ。
 そのまま店前のスノーマン君とも勝手に握手をして有言実行を果たし、店脇のテーブルで朝食をいただく。おからドーナツは出来たてで温かく、とっても優しいお味。ゆずジュースも酸味が強くもなく、薄くもなく、ちょうどよい果汁感。美味しい。お土産を買いに、また帰りに寄らせていただくことをお伝えして、とうふ工房わたなべさんをあとにします。
 さて来た道を引き返して(ドーナツのお釣りの小銭で、無賃状態も解消し)、2kmちょい歩いて、レンタサイクルを貸し出している「せせらぎホール」へ。町営のスポーツセンターみたいな感じでしょうか。駅からやや距離があるのは難だが、まぁこの程度、私にとっては距離じゃあござんせん。景色を眺めながら歩いてたら、すぐです。
(この道中に「牛くびり橋」という地名表示を見かける。橋、という割には川が見当たらないので、今は暗渠だろうか。で、牛くびり。何かと思って今調べたら「くびり」は多分「縊り」のことなので、牛が絞め殺された、という意味でしょうか。全国にも似た地名はちょこちょこあるみたいだけれど……っと、ちょっと待て! これを書いてる今思い出したが、この手前に馬頭観音ならぬ、牛頭観音みたいな石碑があったな! google mapのストリートビューで確認したら結構手前に石碑「牛頭尊」→「牛頭天王(ごずてんのう)」だ。牛じゃなくて神ですね。石碑は結構離れた位置だし、牛くびりとは無関係か……。でも、あの小学校の近くの道路で、昔に牛が殺されたんだろうか。こういうのって調べていったら、チョー面白いんだよねぇ。閑話休題!)

午前10時ごろ


 さて、電動自転車にまたがり、本格的なときがわ町観光スタートです。まずは木のむら物産館にお邪魔。名前からして、木工製品が所狭しと並んでいるのだろうかと想像してたら、農産物がメインでした。お土産を買うにはまだ早い。ここから少し進んだところにあった、大銀杏。おぉ銀杏、とか口に出すのも憚られるしょうもないことを無自覚に思いながら、巨木を見上げる。葉がほとんど落ち、地面は黄化粧で覆われてました。落葉を、踏みしめ歩く、秋の音。うん、どっかで聞いたような句だな。
 お次に向かったのは、やや迷いながらもたどり着いた和紙工房。少し北の小川町の和紙は何年か前、世界文化遺産にも登録されて有名になったが、ときがわにも和紙工房があろうとは。ただ、まぁ普通に考えたら分かることだけれど、いきなり行って和紙造りの案内をしてもらえるわけもなく。工房と物販の一画を覗いて、あとにしました。表の道路にも案内表示が出ていないようだったから、飛び込みで行くようなところじゃないんだろうね。
 おあと立ち寄ったのは三波渓谷。みなみ、じゃなく、さんばです。昨日の雨で濡れたままの落ち葉だらけの道を下り、渓谷といった名がぴったりの都幾川のほとりに出ます。しばしぼんやりと佇み、水面に目をただ泳がせます(目を泳がせる、は動揺したときの表現だけれど、まぁ、これでも意味は伝わる)。
 道路に戻り、ぐんぐん山深いほうへと突き進みます。途中、滝の鼻橋という、ネーミングに「そゆことか!」と頷きたくなるだろう由来がありそうな橋で立ち止まる。斜めの鉄骨で組まれたトラス橋。大正年間に架けられたそうだが、全然古びて見えないのは凄まじい。
 たまに歩道が途切れて車道を走りつつ、宿交差点を左折。下調べしてて是非訪れたいと思っていた萩日吉神社へと向かいます。思えば、旅のときは必ず神社に立ち寄ってます(まぁ、普段もたまに手を合わせに行くけれど)。理由は色々あるが、旅のときは「その土地の神様に御挨拶」という意味合いが強いです。あとは基本、自惚れの強い人間なので無条件に頭の上がらない存在というのは有り難いのです。姿形がないから、抗いようもないし。
 さて、鳥居。円柱で組まれただけの簡素な、しかしながら重厚な趣の鳥居です(個人的に大好きな鳥居の形)。まずは一礼をして、くぐる。いや、もうくぐる前から分かっちゃいたけれど、鳥居の奥がやけに暗い。参道が鬱蒼とした樹木に囲まれていて、陽が差し込んでこない。加えて、右手には児持杉(こもちすぎ)なる、二本のぶっとい杉の木が。びっしりと苔生していて、やたらに厳か。もう鳥居の向こう側の空気が、凜として重い。しびれる。誰もいない。めちゃくちゃいい雰囲気……! 古い神社好きにはたまりませんわ。したら、ぽつぽつと葉をささやかに打つ音。雨だ。鎮守の森に遮られて、ほとんど当たらないが、雨が降っている。途端に思い至ったのは、禊ぎとしての雨。東国三社巡りでも雨に打たれまくったから、その流れが続いているのか? 祝福されているのか? と大仰な空想を広げ、やや頬がほくほく。しながらも一歩一歩、表情を神妙にしつつ参道のやや左を歩いて行きます。灯籠もいい。摂社、末社もいい。そうして、いろはの数だけ階段を上り、社殿でお賽銭を納め、手を合わせる。何もお願いはせず……無心だったろうか、よく覚えていない。そうそう、左手に振り返るとお神籤掛けが。先月詣でた鹿島神宮で、一昨年の福島県南相馬の三嶋神社で引いたお神籤を今さら結ぼうとしたものの、雨で思うようにできず持ち帰ってきた状態だったが、ようやくこれで結べます。リュックの中には、今年4月に引いた島根県益田の高津柿本神社のお神籤が入っているが、これは年を越してから結びましょうか。その後、境内をゆっくりと散策し、神木から流れ出たご神水の井戸で再度手を清め、神妙な心地で鳥居のところまで戻ってくる。男杉と女杉。子宝に御利益があるらしいが、女杉のほうが太く、高い。世の一般的な男女のイメージの反対を行っているのが何だか嬉しいけれど、まぁそもそも神様の頂点である天照大神だって、女性だしね。それにしても、女杉の木肌にびっしりと生した苔が、鮮やかな緑色をしていて実に美しい。苔に感動したのは初めてかと。
 さぁお次は、建具会館へと向かいます。が、道を間違え手前で曲がる。なんかおかしいなと即座に気づき、スマホを取り出す。こういうとき、自分の位置を調べられるスマホの地図は本当に便利です。来た道を引き返し、小学校の脇を通る。校庭では体育の授業だろうか、ドッジボールが。一クラス、というよりも一学年なんだろうな。さっと数えてみて、15人に満たないか。だだっ広い校庭ということもあって、やや寂しさを覚えてしまうけれど、でも子供たちは元気いっぱいに声を上げてました。
 さて、道を戻って建具会館へと。今度こそ木工製品の物産館です。まぁ、特に欲しいものがあるわけじゃないけれど、木の製品て眺めているだけで、何だか嬉しくなります。木肌の温もりがそう感じさせるんだろうか。格子に組まれたコースターは200円でちょっと買ってもいいかな、と思ったけれど、やや高さがあるので、置き損なったらこぼすなぁと考えて、棚に戻す。そもそもお前がコースター作っているだろうが。ただ、そのまま退店するのは味気ないので、柚子を購入。寒い日にお風呂に浮かべましょう。Twitterで流れてきた、柚子を食用以外の目的で販売すると軽減税率対象外になって査察が入った、みたいな話をレジの方にお伝え。でもこの話、帰ってきて調べてみると、国税庁は8%で問題ないと回答してるようだし、結局何が本当なのかわからぬ(そもそもの発端が伝聞だから、確かめようがないやね。真偽不明な話をしてしまい、ごめんなさい)。そうそう、木彫りの小ぶりなカヤックに、ルーク・スカイウォーカーの人形がオールを手に乗せられていました。May the force be with you.

お昼


 さぁ、12時過ぎ。雨雲も通り過ぎ、いい感じで腹が減ってきたので、近くの蕎麦屋「とき庵」へ。地の山菜を揚げたという「天もり蕎麦」をいただく。このお店、中が古民家風なのも落ち着くが、湯飲みからして器が無骨なのに素朴でいい感じ。肝心の蕎麦もなかなか美味かった(もうちょいつゆが濃いほうが好み)。天ぷらは色々と変わり種があり、椿の花なんてのも。花びらはいいが、雄しべの部分がややグロテスクに思えて、食べていいのやら……まぁ、えいままよと食べたけど。柿の天ぷらもトマトと思って食べてたというね。けど、天ぷら蕎麦となると、どうしても海のアレを欲してしまうのは、もはや習性だろうか。海老。しかし人気店で平日でも次から次へとお客さんがやって来るのは凄い。そうそう、お店でも見かけたが、ときがわはサイクリストの方々が多いです。都心から近い山ということで、この先の白石峠をヒルクライムする方が多いんだろうねぇ。電動自転車で町を巡ってる俺のほうが、珍しいくらいです。
 続いて訪れたのは、ときがわホースケアガーデン。お馬さんがいます。養老牧場とのこと。つまり競馬やら乗馬クラブで活躍されていた馬さんが、静かに余生を送るところ。わざわざ柵のとこまで出向いてくれた馬がいて、しばし馬の巨大な瞳と、じーっと見つめ合う。あまりの大きな目に少し圧倒されます。うーん、のどかだ。ぼんやりと馬たちの動きをながめてましたよ。
 そのまま食後の運動にと道の奥まで進み、美味しいクレープやらガレットを出すと噂の「うさぎや」へ。下調べしたとき、予約したほうがいいとのことだったので、開いているかどうか分からなかったが、もし開いてたら食後のデザートとしてクレープでも食らおうか、だったらさっきの天ぷらは余計だったか……と考え、短い橋を渡って、たどり着いてみたら、何か工事用の車両が。開店しいてる雰囲気じゃないので、そのまま引き返し「とき川の小物屋さん」へ。以前、原付ツーリングで通ったときにも気になっていた喫茶店です。何がって、芝生の上に椅子やら丸太を立てたテーブルが置かれていて、川向こうの景色を眺めながら一服できる仕様。ただ、お店そのものはやや骨董的で若干入るのに勇気がいる感じ。まぁ、旅慣れてるので何も躊躇わず戸を引きましたけどね。店内は古めかしい薪ストーブの上にやかんを置いて、しゅんしゅんとお湯をたぎらせている雰囲気(あくまでイメージなので、実際は違いますだ。でも薪ストーブはあったような……あ、トイレはぼっとん便所でした)。一番人気という水出しアイスコーヒーを注文。もちろん、外の河原で飲みます。コースター小説を勝手に敷いて、パシャパシャ。で、味は……うまいよ。コーヒーあまり好きじゃないけれど、普通に飲めました。景色もいいし、ほっと落ち着ける。ただ、昼過ぎから風がやや吹きつけてきて、存外に寒い(この日は温かくなると予報だった)。しばしキャンプ用の椅子に背を預け、これからどうしようかなー、と地図を広げる。山の向こう側のハムとパンの店に行きたいが、迂回して県道を走るのはつまらんなぁ、なら山道を行って、無茶苦茶やるか……ということを店主の親父さんに相談したら「気持ちは分かるけれど、サイクリストでも無理だから絶対無理だよ」と。なるほど。ご自身でときがわ町の地図を作られているくらいだから、きっと間違いのないアドバイスだ。だからありがとうございますと退店はしたのだけれど、電動は残80%だし、仕事でも毎日自転車漕いでるから体力に自信はあるし、無謀なこと好きだし、自分でやってみないと気が済まない性格だし、それに無茶苦茶やったほうが楽しいし、何より馬鹿だし……よし、行けるとこまで行ってやらぁ! と、せっかくの正確な忠告を袖にして、上り坂に突っ込んでみる。電動だから弱虫どころではないです。でも、いつもの旅らしくなってきた。予定調和に進むのはやっぱりどこかに抵抗を覚えてしまう(こんなこと、一人旅でしか出来ないけど)。この誰もやらないようなことを、一人でやる感じ、たまらんです。
 が、バッテリー残量が早くも70%になる。やはり坂道は減りが早い。呼吸も荒れてくるが、まぁ慣れたもんです。電動アシストがあっても、やっぱり坂は体力勝負です。そうして右手には「ときがわ景観ルート」なる分かれ道が。景観が期待できるのか……。地図ではその道を行くと、町へと下りていくことになっているが……でももっと上ったほうがいい景色に出会えるのでは……? と、既定路線をそのまま息を喘がせながら行く。そしたら60%。道のりの未だ1/4くらいか。半分近くは下り坂だろうが、微妙な感じ……。ましてや目的地にたどり着いたあとも、まだ移動はするし……。というわけで、すぱっと引き返す。つい先ほど通り過ぎた景観ルートへと変更です。そしたらすぐさまあれよあれよと坂を下っていきやがる。上り坂が恋しい……と思って木立の間を抜けていくと、何だか現代的な建築が。正面には垂れ幕がはためき、古代の神殿を思わせるような高い屋根。ものすごく景色のいいところに建っている。別荘か? 「湧雲の望楼」と案内書き。隣にも似た雰囲気の大きな建物。ポストがついてたから、やはり別荘? 御用の方はこのベルを鳴らして下さい、みたいな文言があるが、ベルは見当たらず。とりあえず誰もいなそう。中に入れないなら何もできないので、先を急ぐことにする(調べてみたら、建築作品のようです。別荘として使われているんだろうか? でも無茶をして、途中で方針転換してなかったら、この建築には出くわしてないんだから、面白いもんです)。
 っと、右手の木が消え失せ、一気に展望が開ける。眼下にときがわの町並みが広がります。ずっと遠くに見える摩天楼は、東京だろうか。いずれにせよ、いい眺望。予定調和の旅をしてたら出会えなかったから、めっけもんです。

午後3時ごろ


 そのまま下り坂を転がっていく。道の両端が落ち葉に埋もれているので、慎重にブレーキを掛けながら、でも一気に下っていく。うーん、ツーリングを思い出すような体重移動だなぁ。そうして、迂回路としての県道に接続。そのまま北上。このへんだろうなぁ、と立ち止まり地図を見ると、すぐそこだった。手作りハムとパンの店「こぶたのしっぽ」。建物もシンプルで木の温もりに溢れてる。店構えからしていい感じ。ただ数組のご家族が買っていったあとだったので、商品棚には売り切れがちらほら。繁盛してんなぁ。さて、もちろんこの場で食べるわけじゃなく、夕飯を調達します。チーズ大好きなので、チーズバゲットと、運ばれてきたばかりの自家製コンビーフサンド、それとチョコスコーン(家に帰ってきて食べたけれど、どれもうまかった!)、あとは自家製ウインナーも。そしてお買い上げ後にも関わらず、種類の違うハムが5枚載った木のプレートを差し出され、ご試食にどうぞ、と。めっちゃ嬉しい! めっちゃお洒落! そしてもちろん美味い! お店の方々も非常に優しい。品数少ないことを恐縮してらっしゃった。また行きましょう。
 さぁ、今回気になっていた店はだいたい制覇しました。あとはお土産を買って帰りましょう。もちろん、朝行ったとうふ工房わたなべへと向かいます。同じ道を戻るのはつまらんので、今度は別のルートで町の東側へと抜けます(山道じゃなく、平坦道ですよ)。ただ、風が冷たくなってきて、やや肩が凝る(昔原付で自爆して鎖骨を折って以来懲りやすくなりました)。これ見よがしにすぐ近くの日帰り温泉の看板が現れるが、今は15時過ぎ。自転車の返却が16:30までなので、今回は温泉スルーです。そんなこんなで戻って参りました工房わたなべさん。丁度、団体さんのバスが到着して店内ごった返してたけれど、一段落してから商品を選んでいきます。まず豆腐は外せん。納豆も好きだ。お揚げを炒めて納豆と絡ませるか。てな感じで、大豆製品だらけをお買い上げ。店長さんにも今後とも宜しくお願いいたします挨拶を交わし、工房わたなべさんをあとにします。あとは自転車返却だけです。
 向こうの山に沈んでいく夕陽に目を細めながら、電動自転車を走らせる。残50%。6時間走り倒して500円なんだから、安いもんだ。というか、朝はこの道を徒歩で行った。何だか既に懐かしい。
 さて、16時あたりにせせらぎホールにて自転車を返却し、駅までの道を徒歩で引き返す。中学生の子たちが、バスの待合所で和気藹々としていて微笑ましい。明覚駅からの電車は次は16:58なので、バスを使ったところで早く駅に着くだけなので、渡辺はとことこ歩いて行きます。だいぶ陽が傾いてきてる。空にはまだ明るさがあるが、もうお山の向こうに隠れただろうか。前を歩く中学生二人。手を振り合ってお互いの家へと別れていく。この町で暮らすというのは、どんな日常が待っているんだろうなんて想像を広げてみる。今帰って行った一人。家では温かな食事が用意されているだろうか。それとも両親は仕事に出ていて自分で鍵を開けるんだろうか。ときがわ町だけでなく、日本の各地で、世界各地で、色んな人間が自分の視点を持って、さまざまな感情を受け止めて生きている。途方もないなぁ、とか何とか柄にもなく思いながら歩く。でもだからこそ、人との会話は楽しい。
 無人の明覚駅に30分前に到着。町役場から16:30を知らせる放送。「元気に遊んでいる良い子の皆さん、車に気をつけて遅くならないよう帰りましょう」町が広いから、地域ごとに順々に流しているよう。近づいて、響いて、遠ざかって。この町の日常の風景なんだろうね。そうしたら、猫が繰り返しニャーと鳴きながらホーム側から駅舎を通り抜け、入口で立ち止まる。声をかけると、こっちを見て、そして立ち去っていった。いやはや。
 電車が近づいてくる。向こうのホームだ。あたりはもう真っ暗。駅にも外灯が点々と灯っている。陸橋を渡って、階段を下りながら視界に映った光景は、黒々とした山並みの向こうの光と、一群の大きな雲。よっぽど、美しかった。
 ありがとう、さようなら、ときがわ町。日帰りにも関わらず、とっても濃い旅ができました。それでは、また逢う日まで。

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