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土の健康を守る海外サステナブルスタートアップ

外食中心から自炊中心へと生活が変わったことで、食への関心がこれまで以上に高くなり、さいきんでは食材の産地や農薬の有無などにも気にかけるようになりました。


日本の農地は火山灰土壌が多いため、世界の農地と比較すると生産性が低く、また温暖多雨な気候により病害虫が発生しやすいことから、他国と比較して、農薬を多く使用していると言われています。

長い間農薬や化学肥料を使用し続けたり、過度な農業生産で土地を酷使したりすると、土壌の栄養素に偏りが生まれ、土の中の生き物や微生物の多様性に大きな影響を及ぼします。土の生態系が変わることで、中期的に土壌が劣化していき、最終的には植物の生育が難しい土地になってしまいます。


こうした土壌劣化は世界中いたる所で発生しており、人口増加による食糧不足の問題に拍車をかける状況を生んでいます。我々人間の生命維持に必要不可欠な食糧の基礎となる土壌を守る取り組みが、今まさに求められているわけです。


今回は、世界を見渡し、私自身が気になった土壌の健康を守るスタートアップ3社をピックアップし、未来の事業へのヒントを探っていきます。



1. Dendra Systems, UK

2014年にイギリスのオックスフォードで創業されたスタートアップであるDendra Systemsは、ドローンを使って上空から土壌を分析し、土地を再生するためのシーディング(種まき)サービスを提供しています。

Dendra Systemsは、植物や生物の多様性が失われつつある今の状況を食い止めるため、生物学者、ソフトウェア・ハードウェア・AIエンジニア、ドローンオペレーターの力を結集してサービスを開発しています。

ドローンで空撮した映像から、検査対象の土地の状況やどのような植物が群生しているかをAIの画像解析技術をもとに特定します。

特定した土地の状況に合わせて、ドローンを使って上空から植物の種を播き分けることで、必要な植物が育ち、対象の土地の環境を改善させます。

以前木材業界を変えるスタートアップの記事でご紹介したAirSeedsに近い手法ですが、Dendra Systemsは画像診断技術やバイオテクノロジーの強みを生かし、より精密に土壌分析を行うことで、効率的に土壌改善のためのアクションを行うことができています。



2. HUSK, Cambodia

2017年にカンボジアで創業したスタートアップで、アジアの小規模農家が育てたお米の外皮から土壌の改良に役立つバイオ炭を製造し、販売しています。

バイオ炭とは、「燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下で、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物」と定義された炭素化合物のことで、木炭や竹炭もバイオ炭の一つです。

もちろん木炭や竹炭などは燃料として古くから利用されてきましたが、近年、植物の生育に有用な微生物の発育にバイオ炭が有効であるということがわかってきました。

HUSKは、これまでは焼却処理され、温室効果ガスの発生源となっていたお米の籾殻からバイオ炭を作ることに成功。温室効果ガスを減らすだけでなく、植物の育成促進にも役立つ製品を生み出し、気候変動の影響を大きく受けている小規模農家の農業生産を後押ししています。

スペイン人の社会起業家2名により創業されたHUSKは、ビジネスを通して、人々と社会に影響をもたらす社会起業の好事例と言えるでしょう。

 


3. Croptimal, Israel

2017年にイスラエルで創業されたスタートアップで、独自の小型測定器を用いて土壌の状況を計測し、土壌の状況・育てたい植物に合わせた肥料を提案するサービスを提供しています。

研究室で使われる元素分析などを行う蛍光X線分析器の開発エンジニアが創業チームを構成していて、人口増加により表面化している食糧問題を解決するべく、高効率かつ高収量の農業技術の確立を目指して創業されました。

これまで研究室など大規模な設備が必要だった土壌分析を、持ち運び可能な小型測定器の形で分析できるようにしたことで、飛躍的に分析期間を短縮しました。

検査対象の土地から、その土地の土と水、生育する植物のサンプルを採取して分析器に入れるだけで、これまで10日程度かかっていた土壌計測・分析作業をなんとわずか10分間に短縮できるようになりました。

これにより土壌改善のアクションをタイムリーに進められるようになり、より高効率・高収量の農業生産を可能にしています。



今回は、食糧生産の基盤である土に着目し、限りある地球環境の中で、我々に不可欠な食糧を安全・安心かつ安定的に育て続けるために、土壌の環境を改善するスタートアップの取り組みを紹介しました。

今回ご紹介した事例にあるように、ドローンや分光技術など先端テクノロジーを活用するのはもちろんのこと、古くから使われてきた素材や技術に再注目することで、現代の問題を解消する糸口が見えてくることもあります。


次回も引き続き、私自身の事業開発の参考にしたい意図も含め、世界のSustainability Businessについてリサーチしていきたいと思います。

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