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無駄の気づきでフードロスに挑む海外サステナブルスタートアップ

昨今、何かと話題に上がることが多いフードロスですが、日本は一人当たりの食品廃棄量がアジアで1位、世界で見ても6位と、多くの食品を無駄にしているフードロス大国なのだそうです。

農水省の統計によれば年間650万トン近くの食品が廃棄されていて、これは世界全体の食糧援助の2倍に相当する量にのぼります。


私もデータを見るまでは実感がなかったのですが、ふと街を見渡せば、食料品店や飲食店が溢れんばかりに軒を連ねているわけで、これらの店でどれほど多くの食品が日々流通し、そして最終的には廃棄されているのか、と考えるだけでも、飽食ニッポンの負の側面が見えてきます。


ですが、たとえこうした問題を知ってはいたとしても、普段生活する中で我々は、なかなか改めてフードロスのことを意識することがありません。フードロスは改善すべきだけど、意識していないものを改善するのは難しい、ということで、こうした視点を持った企業やスタートアップらの手によって、どれだけ我々が日々食品を無駄にしているのかを気づかせてくれるプロダクトが生まれてきています。


今回は、世界を見渡して私自身が気になった、食品の無駄を人々に気づかせることでフードロスの解決を図ろうと取り組んでいる三社を取り上げたいと思います。


1. Kitche, UK

こちらは2018年に創業されたロンドンのスタートアップで、家庭におけるフードロスを可視化するアプリを提供しています。

買い物のレシートから食品の賞味期限を計算し、賞味期限が近くなった食材で作れるレシピを紹介することで、食材廃棄を防いでくれます。

それでも余ってしまい食材が廃棄された場合には、レシートからその食材分の金額を算出し、どれほどの金額が無駄になったかを明らかにしてくれます。

毎日少しずつ廃棄していると気づかないフードロスも、まとまった金額となって表示されると、どれほどの食材を無駄にしているのかがイメージしやすくなり、日常的な食材の買いすぎや使い忘れを防ぐことに役立っています。

"Kitche is a free app designed to save you money and food waste at home"

彼らは自分たちのアプリをこのように称してしていますが、廃棄食材の価値をお金に換算することで、なかなか変わらないフードロスに対するユーザーの意識を変えることに成功しています。

日本でもレシート管理アプリや、食材を起点にしたレシピ紹介アプリが存在していますが、それら既存のソリューションを組み合わせることでフードロスの削減を実現しているKitcheのような取り組みは、今後日本でも大きな流れになっていくことでしょう。



2. Winnow, UK

2013年に創業されたロンドンのスタートアップで、こちらはレストランなどの食材の廃棄量をゴミ箱のモニタリングデバイスによって可視化するサービスを提供しています。

ゴミ箱の上部に設置したデバイスに内蔵されたカメラが、廃棄された食材を画像解析で認識し、廃棄量、廃棄食材を特定しています。

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ホテルやレストランでの調理中に発生する食材の使い残しや、ビュッフェで余った料理など、一定期間でどれほどのフードロスが発生しているのかを、このデバイスが自動で撮影・認識し、明らかにしてくれます。

それによりホテルやレストランのオーナー、シェフ、アシスタントなど皆がフードロスの状況を理解しやすくなり、仕入れや、メニューを改善するなどの具体的なアクションを促すことに成功しています。

Winnowは既にマリオットやヒルトンなどのグローバルホテルチェーンを中心に1000社以上で利用されていて、ヨーロッパ、アフリカ、オセアニア、アジア、アメリカと5大陸でサービスを展開しています。

まだ日本にはサービス展開されていないようですが、日本のホテルやレストランに導入される日もそう遠くないと思います。



3. Leanpath, US

2004年に創業されたアメリカの企業で、こちらもレストランなどのフードロスを削減するためのデジタル測定器を提供しています。

Leanpathは廃棄される食品を計測する装置を提供していて、内蔵されたカメラと測りで廃棄物、廃棄量を記録し、フードロスの状況を明らかにしてくれます。

Winnowに似たサービスですが、こちらは調理場の現場のメンバーのアクションを促すために設計されたプロダクトで、ホテルに比べより細かく食材の管理が求められるケータリングサービスや社員食堂などで主に使われています。

社員に無料で食事を提供しているGoogleでも利用されており、11か国129箇所のGoogle Cafeでこれまで約300万ポンド(1500t)ものフードロス削減に成功しています。

LeanpathもWinnowもともに10倍以上のROIが期待できると謳っており、企業にとっても、フードロスという課題に取り組みながら、大きなコスト削減も実現できるという、一挙了得なプロダクトとなっています。



今回紹介した3社は、食品の無駄を様々な方法で計測し、ユーザーに問題点を気づかせることで、フードロスを防ぐ取り組みを推進しています。いずれも廃棄される食材をユーザーにとってわかりやすい<お金>に換算することでユーザーの意識を変え、具体的なアクションへと導いています。

サステナブルな取り組みを継続して行っていくには、課題への当事者意識を誘発することが重要になりますが、見過ごされてきたものの価値をユーザーにとって重要なものに換算して課題に気づかせるという手法は他のサービスでも使えるところがあると思います。

次回も引き続き、私自身の事業開発の参考にしたい意図も含め、世界のSustainability Businessについてリサーチしていきたいと思います。

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