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【シない二人】#11 保留

「今のどういうこと?」

寝ようとしている健次郎に
強めの口調で聞いた

「え、起きてたの?💦」
「それより寝てて良かったって何?」
「いや、眠そうだったから…」

そんな感じじゃなかった
そういう意図なら『寝てて良かった』はおかしい

あんなに楽しい気分だったのに
悲しみと苛立ちが一気に押し寄せてきて
自分でも止められない

「ねぇ何で?何がそんなに苦痛なの?
私とセックスってそんなに嫌なの?
温泉旅行からもう何か月?
これでいいと思ってるの?」

「え、いや、今話す感じじゃ…」

「それならいつ話すの?
貴方からこの話出たことある?
旅行後も私からはちょっと誘ったり
部屋の香りを変えたりそれなりに努力はしてたよ
でもあなたは?何をしたの?」

「え、うん、まあ…特には…」

「そうだよね?何で何もしないの?」

「何もって…はぁ
ずっと忙しいって伝えてるじゃん」

健次郎が面倒臭そうな口調でため息をついた
逆ギレ?何で?
喧嘩したいわけじゃない

「忙しいことは分かってる、
でももうそれとこれは別じゃない?
貴方の中ではこんな長い期間一緒なの?
それがよく分からない!」

「・・・・」

「ねえ、本当に思ってること言ってよ
私はただ毎日ずっとしんどいよ…

今日はもしかして?、…ああ、何もなかった、
忙しすぎたのかな、じゃあまた明日?
…また先に寝ちゃった、明日はどうかな…
その思考の繰り返しで何か月も過ごしてる
そんな虚しい気持ち貴方にわかる…?
正直…私が否定され続けてる気がして…」

最後泣きそうな声になってしまった
少し不快感を示していた健次郎の表情が
少し緩みつつ、ようやく重い口を開いた

「正直言って…
プレッシャーなんだよ…

…は?

「奈々の遠慮気味のアプローチが
”シなきゃいけない”って圧にすごく感じて
余計にその気にならない、っていうのが本音」

え…??
圧にならないように遠慮気味に言ってたのが
完全なる逆効果?
まさかの…プレッシャー…!😱

「じゃあもしかして…
”今日やろう!”って言った方がいいの?」

「うん、そっちの方がまだ良いかな…
常に気遣われて頑張ってくれてるの見ると
俺もプレッシャー+罪悪感でそれどころじゃなくなる」

…なんと…(゚д゚lll)ガーン

「マジか…」

軽くショック状態だ
恥を忍んで誘惑という努力までして
『全然違うよ』と言われるとはね
親友たちのアドバイスも全然あかんがな

しばらく沈黙が流れた
健次郎は私の言葉を待っている

「分かった…軽くショックだけど知れて良かった
でも…やろう!って元気に言うのは
私ちょっと無理だな…」

「元気に言う必要ないけどw」
少し笑った健次郎に安心して

「…じゃあ、うん、一旦保留にしよう
この件に関連することは
しばらく何もしないようにする」
素直にそう言えた

「うん、ありがとう」
あからさまにホッとしてる

「健次郎がプレッシャーに思わないように
私は”静”の努力をするね
その代わり貴方はこの保留期間に
”動に移る努力をしてほしい」

「分かった」


今回の話し合いは
一応平和に終わったけど…
もう何が正解か分からない

私自身も、私の周辺の人も、ネット上ですら
こんな悩みを持っている人は
そんなにいない(※15年前の話)
情報がなさすぎて戸惑う

だから迷って迷って
本当に二人で答えを導き出すしかない
この問題以外でも
夫婦ってそうやって築き上げていくもんだよね

二人で話し合って考えて
少しずつ創っていけばいい
私たちはそれができる
だからきっと大丈夫

今回の提案は
前向きな停滞だと信じてる

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