【読書記録】烏は主を選ばない（阿部智里）

【あらすじ】
人間の代わりに「八咫烏」の一族が住まう世界「山内」で、優秀な兄宮が廃嫡され、日嗣の御子の座についた若宮。世継ぎの后選びには大貴族の勢力争いが絡み、朝廷は一触即発の異常事態に陥る。そんな状況下で、若宮に仕えることになった少年・雪哉は、御身を狙う陰謀に孤立無援の宮廷で巻き込まれていく…（あらすじより）

【感想（ネタバレあり）】

数年前から追っている阿部智里さんの八咫烏シリーズの２作目を久々に再読。

時系列的には１作目と同時期、桜花宮で姫たちがあれやこれやしながら若宮を待っていたときの若宮側のストーリー。

北家の郷長の次男坊、雪哉が主人公。雪哉は郷長の前妻、北家本家の姫の子という複雑な出自で、自分の出自のせいで跡目争いが起きかけて、家族がバラバラになりそうな過去があるから、家族を守るために敢えてぼんくらを演じているけど本当は機転がきく賢い小烏。

若宮に無理な仕事を頼まれたり、理不尽な対応をされたり、借金の方に売り飛ばされたりと散々な目に遭うけど、根性があるのでなんとか切り抜けてやっている。

この若宮が結構嫌な奴に描かれてるせいか、本当はいろいろと考えて行動しているということが後々わかるんだけど、なんだか好きなキャラクター上位に食い込んでこないんだよね。

ただ八咫烏のために行動していることはわかるから、やっぱり普通の八咫烏とは違う孤高の存在という感じなのかな。

逆に若宮の兄の長束の部下の路近の方が、わかりやすく豪快で胆力があって好感が持てた。

それにしても長束派のスパイが長束本人とは、ここは本当に作者の思惑通り騙されたなぁ。毎回一回は騙されてる気がする。

最後に雪哉が若宮の近習になることを選ばなかったのは残念だな。せっかくいいコンビになってきたのにという感じ。まさに烏は主を選ばないのタイトルどおり。

雪哉は真の金烏は政治上の方便だと思ってるから、そんなもののために命をかけて跡目争いをする若宮の気持ちが理解できなかったんだろうな。

自分は跡目争いが起きないように努力して今の家族を守っているという自負があるだろうから、なおさら、なんでそんなもののためにという気持ちなんだろうと思う。

次からは猿が出てきてストーリーがどんどん展開するから楽しみ！