『囲碁殺人事件』(竹本健治)解説「かすかな悲鳴を」~タツミマサアキ・グレーテストヒッツ(1)~
《『囲碁殺人事件』をひきおこしたのは、この世の規則からいつのまにか抜け落ちてしまった人間、いわばいきながらの幽霊である》
誰が言い出したのか判然としないが、かつて〝黒い水脈〟や〝黒の水脈〟と呼ばれる一派が存在し、風の噂によればそのどす黒い血脈を受け継ぐ者が現代にもいるらしい。中には、その血筋を公然と標榜するさながら現代の天一坊のような者もおるそうで、小心者の私などは、そのうちお上から天誅が下されやしないかと他人事ながら、心配してしまう。
さて、この〝黒〟の一派の共通する