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政策ではアートをデザインの上位概念に位置づけしようとしているっぽい⁉️
経産省が示すこれからのデザイナーのあり方とこれまでの政策の歴史①からの続きで、まとめになりますが…。
経産省のサイトからデザイン政策を見ていくと、2024年前半以降活動報告が減っている感覚を受けます。
そもそも「これからのデザイン政策を考える研究会」を立ち上げていることから、デザイン政策について一区切りついた、外貨獲得の主力政策ではなくなった、デザイン政策をどうしようかと悩んでいる様子が透けて見えます。
また、その他研究会の報告を読んでいると、デザインの上位概念として「アート」という言葉に位置づけようとしている感覚も受けます。
背景には、デザインの役割が単なる産業振興から、より広範な文化的・社会的価値の創造へとシフトしていることを反映している可能性があります。
そこで「アート」の定義が気になったので、経産省の関連しそうな報告書を読んでいると、「アートを地域活性化やコミュニティ形成、経済的価値の向上に寄与するもの」として位置づけていることに気が付きました。
例えば、「アートプロジェクトが地域に多様な価値をもたらし、文化創造やアートの普及促進を図る」といった表現がされており、アートが経済社会を支える主要なエンジンであり、企業競争力の向上や地域活性化に貢献するものと捉えられています。
これはもともとデザイン政策で取り扱われていた概念ではないでしょうか?
さらに、アートよりも上位の概念として「文化創造」や「社会的価値の創造」が強調されています。
アートやデザインが単なる美的価値を超えて、経済的、社会的、文化的な影響を持つことを期待されている記述が目立ちますが、背景にはコンテンツ産業をものづくりと並ぶ主力産業として位置づける方向にシフトしていることが考えられます。
主にエンタメ・クリエイティブ産業の振興を通じて、経済的価値と文化的価値の両方を高めることを、クールジャパンやクリエイティブ産業の海外展開推進事業から読み取ることができます。
アーティストが想像するアートと、政策で使われるアートは捉え方が違っている
アーティストは個人的な表現や美的価値を追求する一方で、政策で使われるアートは社会的、経済的、文化的な価値を強調しています。
政策の文脈では、アートは地域活性化やコミュニティ形成、経済的価値の向上に寄与する手段として位置づけられますので、ここを勘違いしてしまうと間違った方向へ進みそうです。
これまでの文脈で考えると、デザイン政策の延長としてアートを考えることは理にかなっています。
つまり、境界がわかりにくくなった「デザイン」という言葉にアートまで含有させてしまい、領域で分割しようという試みです。
最終的には、基本スキルや専門知識を証明する手段として、扱える領域を認定する制度の作成につながる可能性があります。
これにより、アーティスト・デザイナーの専門性を明確にし、企業や行政が適切な人材を選定しやすくすることを期待しているのではないかと思います。呼称がどうなるか現時点では分かりませんが。
下図はデザイン政策の中で時折見ていたスキーム図。デザインがアートに変わっただけとも言えます。
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下図は「これからのデザイン政策を考える研究会」で使われている図。
共通項が多いのです。
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デザイン政策は国策から地方分権へ
「デザインがわかる、地域がかわる インタウンデザイナー活用ガイド」を読むと、1957年から国策としてスタートしたデザイン政策は、2018年の「デザイン経営」宣言で区切られ、地方へ分権されたと考えると、この内容は腑に落ちます。
今後は地域経営資源の一つとして、地方経済産業局がサポートしながら、上記のアートを含有する形で進むでしょう。
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国際競争力強化の主軸はコンテンツ産業政策へシフト⁉️
デザイン政策が国際競争力の観点からコンテンツ政策へシフトする理由を探ってみます。
市場のグローバル化に伴い、台湾・中国などのアジア企業が競争力を急速に強めている点。
クールジャパンやクリエイティブ産業の海外展開推進事業を通じて、エンタメ・クリエイティブ産業が主力産業として位置づけられた点。
インバウンド観光立国政策の調査から、アニメ・マンガコンテンツがきっかけとなり、訪日外国人旅行者の増加があった点。
アジア地域での日本文化への興味が上昇している点。
これらの要因により、日本のブランドイメージが向上し、国際的な競争力が強化されることが見込まれています。
このため、デザイン政策からコンテンツ政策へのシフトが進んでいると考えられます。
デザイン業のシフト
すべてのデザイン業というわけではありませんが、今までの経験を活かしてコンテンツ業へシフトすることについて考えてみます。
デザイン業は既に国際的な視点を持っており、コンテンツ業へのシフトはその経験を活かすことができる。
デザインに関係するスキルは、ブランド構築やユーザー体験の向上に直結し、高付加価値を生み出しやすいノウハウを持っている。
アニメやマンガなどのコンテンツが観光客を引き寄せる要因となっており、デザイン業の経験が観光資源の開発に役立つ。
従来までの経験から持つ高い技術とクリエイティビティは、日本のブランドイメージをさらに強化するための重要な要素。
シフトするための素地はすでにあると考えられます。
ただし、コンテンツ業は代理制作のビジネスモデルではスケールできないことが、アニメ制作会社のビジネスモデルを見ているとわかります。
アニメコンテンツのように連続して制作できるコンテンツが多く存在すればよいですが、そのようなコンテンツ制作のパイは大きくなく、自転車操業をするにもさらなる変化に弱い構造になります。
そうなると、独自IPを開発するモデルが現実的です。AIやWeb3、メタバース技術がこのあたりを考えるヒントになりそうで、ショート動画を駆使する方法が考えられます。
いずれにしても、デザイン業にとって大きな転換点に差し掛かっていることは間違いありません。