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悩める”スーパールーキー”も勝負の2年目 チームを勝たせる唯一無二の存在へ

昨シーズン、早稲田大学ア式蹴球部に新たな風を吹かせたルーキー、西堂久俊と山下雄大。1年生ながらリーグ開幕戦に出場すると、前期リーグではコンスタントに出場機会を得て、早慶戦の夢の舞台にも立った。順風満帆とも言える大学サッカー1年目に見えたが、後期リーグに入ると立場が一転。試合への出場はおろか、ベンチメンバーにも入れない試合が多くなった。”スーパールーキー”とも称された2人がなぜこのような境遇に陥ってしまったのか。大学卒業後のプロ入りを目指す上で重要となる、勝負の2シーズン目に向けた彼らの心境はいかに。

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○最高のライバル関係

ーー2人の出会いが高校1年と聞きましたが、その頃のことは覚えていますか?

山下:千葉国体の選手選考会の時に顔合わせをしたんだよね。ヒサは怪我でほとんどプレーしていなかったから、プレーの印象はなくて。プレミアリーグで戦うようになってから知るようになった感じかな。

西堂:市船はレイソルにチンチンにされていて、前期リーグも勝てたけど本当にキツかった。レイソルは中盤が上手くて、全然ボールを取れなかったなっていう印象が強い。レイソルは雄大を筆頭にめちゃめちゃ上手かった(笑)。

山下:ヒサは1人で仕掛けてくるから、俺らの中では「あいつヤバくね?」なっていた。試合中に話しかけたの覚えてる?

西堂:ああ、覚えているよ。

山下:「お前ヤバくなってない?」って。レイソルには国体で一緒だったメンバーがいたから、俺らの中でもそういう話をしていたよ。

西堂:化けたっていうか、ちょうどその時期はめちゃめちゃ調子が良かったんですよ。その頃は某J1クラブからも声がかかっていて、イケイケって感じでしたね。


ーー2人は高校の時、チームの中でどんな存在でしたか?

山下:俺は結構自由にやっていたかもしれない。

西堂:俺もチームの中では自由にやらせてもらっていた方かな。

山下:俺はチームの色的に中盤がプレーに関わることが多かったから、必然的にボールに触る回数も多かった。

西堂:その中で好きなプレーもできてたってことでしょ?

山下:そうそう。だから割と中心だったのかなとは思う。高2の時はアンカーをやっていたんだけど、割と守備は頑張っていたかな。

西堂:いい感じの時に怪我をしたんでしょ?

山下:うん、高2の夏の終わりくらいかな。後期のプレミア開幕の前の週で怪我をして、8ヶ月くらいサッカーができなかった。俺的には、高2の後期はトップチーム昇格にむけて1番大事な時期だと思っていたから、やりきれない感じはあったな。

西堂:怪我をしていなかったら昇格できた手応えはあったの?

山下:俺の感覚では「もしかしたら行けるのかな」って思っていたけど。復帰してからは現実的に「厳しいな」って思ったね。

西堂:高3で「昇格できる」って言われていたら、どうしていた?

山下:(トップチームに)上がっていたとは思うけど、その時は「多分通用しないな」って思っていた。逆に、高2の時はノリノリで「通用するわ」って思っていたんだけど。その時に怪我をしちゃったから、結構悔しかったね。



○大学サッカーへの挑戦

ーー2人が大学サッカーに挑戦することになったきっかけや経緯を教えてください。高卒プロは目指していなかったんですか?

西堂:市船に入ったときは高卒プロを目指していました。でも、高校生活をしていて考え方も変わって。高3の時にプロになれる選択肢もあったけど、自分が通用する自信もなかった。

山下:それってすごいよね。プロへ行けるレールがあるのに、行かない選択肢をするって。俺だったら行っちゃうな。

ーーあの時どうしてプロに行かなかったんですか? 何が自分に足りないと思って、その選択に踏み込めなかったんですか?

西堂:3日間くらい練習参加して、声もかけてもらったんですけど。

山下:3日で決まったの?

西堂:その時は本当にイケイケだったの。市船の試合をたまたまスカウトの方が見ていて目に止まった感じ。それで、練習参加から帰るときに「オファーを出すから考えておいて」って言われたんだけど。

山下:すぐ断ったの?

西堂:いや、2週間くらい考えたかな。向こうからは「急がなくていい」って言われていたけど、そんなに引きずっても仕方ないと思ったから、自分から監督に「大学を受験します」って言いに行った。

1番の理由は、プロの世界で通用する気がしなくて、やっていける自信がなかったから。2番目の理由は、人生は長いし、サッカー人生の先を見据えた上でプロと早稲田で迷って、早稲田が勝ったから。

山下:そのクラブで通用しないと思ったの? それとも、プロ自体に通用しないと思ったの?

西堂:J1の他のチームだったりJ2のチームだったとしても、それは変わらなかったと思う。

山下:プロっていう世界に対してってことでしょ。

西堂:不確定なものじゃん、プロの世界って。何も確約されていない世界が怖かったし、自信もなかったんだよね。

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ーー山下選手はどうですか?

山下:(昇格の可否を言われる前から)「レイソルに上がるのはキツイな」って思っていたし、案の定昇格できなかった。実際、他のクラブを探そうと思えば探せたのかもしれないけど、「レイソルで無理だったら他のクラブも無理だろう」とも思っていたし、トップに昇格できなかったら大学に行く流れはあったから大学進学を選んだ。でも、ずっと「プロに行きたい」っていう気持ちが強かった。

西堂:プロ寄りの気持ちが強かったんだ。俺はどちらかと言うと大学寄りだったから。

山下:だから、ヒサみたいにプロから声が掛かっていたら絶対に行っていた。活躍できるかどうかは別として、とりあえすプロになりたかったから。
めっちゃ対照的じゃない? 俺は冷静に大学進学を選ぶことはできなかったと思う。

西堂:大学サッカーに挑戦したきっかけは結局、”プロになりたいから”だよね。

山下:でも早稲田を選んだ理由としては、大学に来ている時点で(立ち位置的に)そこまでの選手じゃないってことだし、保険をかけた部分もある。


ーーその中で、早稲田大学を選んだ決め手は何だったのでしょうか?

西堂:ネームももちろんだし、学力とかサッカーじゃない面を比べた時に。

山下:社会的にね。

西堂:サッカーを除いたときに。

ーーサッカーありきだった訳ではないんですね?

山下:サッカーはほぼ見てないね。

西堂:でも、練習参加はしたでしょ?

山下:したけど2・3日だったし、あまりサッカーはできなかった。

西堂:俺も早稲田しか練習参加してないから、他と比べられないな。サッカー以外のとこで早稲田が勝ったね。

山下:「大学に行くなら(早稲田)」っていうのはあったね。


ーー実際に、授業を受けてみてどうですか?

山下:「こんな感じでいいの?」「こんな感じで単位取れちゃうの?」って感じない?(笑)

西堂:ああ、ある。もっと恐れていたんだよね。

山下:早稲田だから、めっちゃ勉強しないと追いつけないかなって思っていたんだけど。思っていたよりも窮屈ではないかな。


ーーサッカー以外の面で、早稲田大学に入って成長できそうな実感はありますか?

西堂:他力本願になっちゃうんですけど、色々問題提起されるじゃないですか。でも、僕の中では”なぜア式なのか”の答えは出ていないんですよ。だって「他の部活でいいじゃん」って言われたらなんも言えないし、「サッカーだけをやってプロになれるなら、そこでもいいかな」って思っちゃって。

山下:俺もまだしっくりきてない。

西堂:しっくりした答えもないし、まだ見つかってもないから。

山下:でも、そう考えると俺は行動が矛盾してるのかもしれない。もし”プロになりたい”だけなら、学力が高くなくてもサッカー面だけで大学を選べば良かったわけじゃない? でも、心の中で「もしプロになれなかったら…」っていうのがあるから。結局ちょっとは恐れてるのかな。


ーー実際、市船もレイソルも在校生の先輩がいなかったと思うのですが、早稲田に行く上で不安はありませんでしたか?

西堂:雄大には航大くん(佐藤航大・新3年)がいたじゃん。俺は先輩に知り合いなんて1人もいなかった。

山下:でも、優しかったよね。

西堂:俺らは最初のランテストから参加していたので、接し始めが早かったっていうのもあると思うんですけど、そんなにツラくはなかったよね。

山下:先輩が怖い感じもなかったし。

西堂:大学を決める時に、先輩がいるかいないは関係なかったですね。


ーー2人とも同期に同じチームの出身者がいると思いますが、彼らの存在は大きいですか?(西堂選手は余合壮太選手、山下選手は大場琳平選手)

西堂:大学内で高校時代の思い出を共有できるのは楽しいかな。共有できる人がいるっていうのは悪くない。まあ、”7年間一緒にやった”っていうのは残るよね。

山下:俺は今年でもう7年目かな。

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ーー今年はレイソルから後輩2人がア式に挑戦していますが、先輩としてのやりづらさを感じることはありますか?

山下:そんなにはないです。でも、来る前は寮のことなんかは聞かれたね。

西堂:サッカー外のことか。

山下:サッカーのことはそんなに聞かれてない。サッカー外でどうしたらいいのかは、結構聞かれるね。



○大学サッカーへの適応と、見えた自分の立ち位置

ーー2人はリーグ開幕戦から出場機会を得ました。その時のことは覚えていますか?
(西堂選手は82分から、山下選手は68分から出場)

山下:多分、監督には「何かしてこい」っていう思いがあったと思うんですよ。ベンチに入った時点で、”何かを起こしてくれ要員”だったと思っていて。

西堂:開幕戦はそんな感じがしたね。

山下:「お前たちをベンチに入れたのは、何か起こしてくれそうだから」って言われた覚えはある。

西堂:賭けだよね。

山下:「出れたら何かやってやろう」って思っていたけど。良いプレーができるイメージが湧かなかった。周りも足が止まっていたし、入った時点で「キツイな」って俺は思った。

ーー自分のプレーを出せずに終わってしまった感じですか?

山下:もう1失点して、何もできずに終わってしまった。

西堂:俺は10分しか出てないから、開幕戦の印象は何にもないな。芝に足を取られてファーストタッチでラインを割っちゃったくらい(笑)。

ーー緊張はしませんでしたか?

西堂:緊張はそんなに。

山下:レイソルでは中盤の選手が途中で代わることはなかったから、早稲田だと途中から使われることが多くて最初は難しかったけど、そういうことにはちょっと強くなったかな。
まあでも、緊張はしなかったですね。開幕戦は逆に負けていたから、「途中からやれることをやろう」って感じですね。

西堂:俺も緊張はしてなかったな。

山下:基本的に「やれることやろう」っていうスタンスだから、緊張はしなかった。「ミスなく完璧にこなそう」とは思っていなくて、「ミスしてもいいや」くらいでやってるから。サッカーではあんまり緊張しないかな。

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ーー2人とも第3節の中大戦ではスタメン出場しました。

西堂:俺は前半だけでしたね。

山下:感触的に、2019シーズンで1番良かったかもしれない。

ーー初めてのスタメン出場はどうでしたか? 大学サッカーの基準というものを体感できたと思うのですが。

西堂:大学サッカーはスピード感があるよね。

山下:2月に早稲田に来た時から高校サッカーとのギャップは感じていたけど、開幕までにある程度慣れていたから、関東リーグで驚く感じはなかったかな。
でも、緊張感は練習試合にはない感じ。高校1年生の時は試合に出られなかったからかな。

西堂:「ルーキーで試合に出る」っていうのはあったんじゃない?

山下:でも、関東リーグで異様な空気を感じたことはないかな。

西堂:「おお、これが関東リーグか」とはなってない。

山下:普通の公式戦って感じだね。

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ーー実際に出てみて通用すると感じた部分と、まだまだ足りないと感じた部分があれば教えてください。

西堂:守備。

山下:守備の部分では金田くん(金田拓海・令和2年度卒)とクワくん(鍬先祐弥・新4年)の運動量がすごかったから、だいぶ助けられていたかな。

西堂:足りない部分はもちろんあるけど、確実に通用する部分はあった。「レベルアップしないといけないけど、現時点でやれないことはない」と感じました。

山下:攻撃面はかなり通用したと思います。


ーー前期リーグでの活躍が認められて、西堂選手はU-18日本代表にも選出されましたね。

西堂:率直に嬉しかったです。

山下:俺は「大学サッカーもちゃんと見ているんだな」って思った。身近にいる選手が選ばれたっていうことは自分にもチャンスがあると思うし、刺激は結構もらったな。

ーーその代表戦では2試合に出場して1ゴールの成績でしたが。

西堂:ひたすら守備について言われていました。

ーーそのメンバーの中には現在プロになって活躍している選手もいたと思います。そのような選手と一緒にいることで何かを感じることはありましたか?

西堂:学年が1個下ということもあったけど、ピッチ外の取り組みで圧倒された感じはなかった。サッカー面に関しては、みんな特徴を持っていて、且つ最低限のことはやる。それはもう当たり前のようにやっていたね。


ーー2人とも1年生ながら、早慶戦にも出場しました。あの時はどんな感覚でしたか?

西堂:あれは素晴らしかった。

山下:すごかった。

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ーー緊張はしましたか?

西堂:いや、緊張はしなかったです。

山下:緊張はしなかったですけど、「すごいな、こんなに人が集まるんだ」って。

西堂:ひたすら気持ちよかった。プロの試合もあんな感じじゃないですか。何万人も観客が入って、応援されて、ゴールを決めたら会場が沸いて。

山下:ゴリ君(加藤拓己・新3年)が点を取った時の盛り上がりはすごかったね。関東リーグも毎試合こうあってほしいな。

西堂:ひたすら気持ちよかった。特に何もしていないけど、楽しかったな。

山下:純粋にスタメンで出たいなと思った。もう少しこの中でやりたいなって。

西堂:この中でもっとやっていたいと思ったね。

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○突如訪れた試練の時

ーー前期リーグはコンスタントに出場機会を得て、早慶戦にも出場するなど、前半戦は順調だった印象はあります。しかし、後期リーグでは2人ともほとんど試合に絡むことができませんでした。その要因は何であると自分なりに分析していますか?

山下:俺らは変わってないと思うんですよね。

西堂:俺もそう思う。チームが変わったのと、周りの選手の調子が良くなったというのもあるのかな。

山下:とりあえず、「俺らが」っていう話ではなかったと思う。

西堂:俺らが悪くなったわけではないけど、良くもなっていないから。

山下:チームが勝てていないこともあって、守備にシフトし始めた。点を取りにいくというより、まずは守備から。そこで自分たちの特徴が活かしづらくなって、逆にウィークが浮き彫りになってしまった

西堂:チーム全体で守備にフォーカスする中で、僕らのウィークが隠しきれなくなってしまった。

山下:今までごまかしていたものがね。前期リーグから出ていたことで、逆にウィークに対してアプローチできていなかった。出られちゃってる感はあった。

西堂:確かにそれはあった。

山下:ウィークに気付けてはいたけど、向き合いきれていなかった。だから、後期リーグで出られなくなってから色々考えるようになったし、個人的にはそれはそれで良かったんじゃないかなって思う。逆にチームが勝っていたら、あのまま出続けていたんじゃないかな。

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ーー西堂選手は8月末からFC(社会人リーグ参戦)登録に変わりました。あの時は率直にどうでしたか?

西堂:悲劇のFC登録でした。

ーーなぜ自分だけがFC登録になったと思いますか?

西堂:ポジティブに捉えると、ひとつはFCの攻撃力活性化。もうひとつは「今のAチームのレベルには達していないよ」という現実を突き付けられたこと。その中でだいぶ落ち込みましたよね、「あー、FCか」みたいな。関東リーグで出るのが夢というか目標の中で、FCの練習はBチームと同じじゃないですか。だから何週間か練習を適当にやってしまっていた部分はあった。Aチームにいた自分が、周りのレベルが落ちるBチームにいることを受け入れられなかったし、「自分次第」って思える自分もいなかった。

ーーAチームで活躍していた西堂選手が「Aチームのレベルに達していない」と判断された要因はどこにあると思いますか?

西堂:単純に、僕がムラのある選手なので。そのムラというか、波の整え方がまだ分からないんですよね。良い時は良いし、悪い時は悪いで。改善しようとしなくても、勝手に良くなっていることもあるし。

山下:例えば、試合序盤にミスするとその試合は死んじゃうとか?

西堂:そういうことではないんだよね。

山下:ずっとダメだなって感じなの?

西堂:そう。

山下:良い時は良い、みたいな?

西堂:そう。

山下:いや、それって難しいよね。俺はそんなこと絶対にないから。逆にミスをして落ち込んじゃう。

西堂:それで悪くなっていく感じ?

山下:それが大学に入ってなくなってきた。自分の70%、80%のパフォーマンスをいつも出せるようになってきたかな。

西堂:ダメな時は30%だけど、良い時は90%、100%だし。

山下:やっている時の感覚は変わっていないってことでしょ? ただボールを取られるってこと? それともメンタル的に?

西堂:メンタル的な要因はある。ボールを取られている時とパフォーマンスが悪い時は、間違いなくやる気がない。

山下:スイッチが切れちゃうの?

西堂:そう。FCの何試合かはスタメンで出ても30分くらいで切れちゃって、自分で修正できなくて。別に何かのプレーが悪いとかじゃないよ。

山下:それってサッカー関係なく、メンタル面の問題じゃない?

西堂:FCの試合の時は観客席の方を見ていたもん。モチベーションの問題なんだろうね。

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ーーFCのリーグ戦が終わって、関東リーグ登録に復帰してからもその状態は続きましたか?

西堂:関東リーグに戻ってからは精神的に安定していたのかな。

山下:関東リーグでもボールを取られる日はあるでしょ? その日はどうなの?

西堂:全然落ち込まない。だから、FCとかBチームにいることでだいぶ劣等感を感じていたと思うんですよね。

山下:すぐに受け入れられないってこと?

西堂:そう。だいぶ時間がかかる。

山下:俺は寝たら治るかな(笑)。



○大学サッカーへの適応と、見えた自分の立ち位置

ーー大学サッカーを経験したことで気付くことができた、高校生までの自分にはなかった新たな強みや弱みはありますか?

山下:ピッチ内では、途中出場含めてどんな時でも自分の特徴を発揮することができる力は付いたかなと思います。高校までは自分のプレーに波があって、ダメな時は1試合通してダメな時もありました。大学に入ってから、試合に対する考え方が変わったと思います。とりあえず、自分ができることを試合で出すように心がけたかな。

西堂:自分の強みは今までずっと縦への推進力だった。でも、大学に入ってから自分の新たな強みには気付けていないですね。
高校の時から守備が課題で、今もそこは言われ続けている。大学に入ってから気付いた新たな弱みはメンタル面の部分だと思います。自分は1回調子を落とすとダメになる期間が結構長い。どうしたら不調を抜け出せるか分からないんだよね。高いモチベーションをどう維持するかはこの1年間すごく考えさせられました。

ーーメンタルの部分はどうしたら上手くいくと思いますか?

西堂:不貞腐れたりするのは幼いとは分かっているんだけど、態度に出てしまう。何でそうなってしまうのかは、まだ自分の中で答えは出ていません。

ーーそこは今年安定させたいところです。その悩みは他の人に相談したりしますか?

西堂:部屋で話したりするぐらいだよね。

山下:部屋では意外と深い話をするね。

西堂:他の人とはあまり話さないですね。

ーー2年生は悩んでる人が多い印象があるので、学年としてアプローチできたら良いですよね。

西堂:確かに、悩みを抱えている人は多そうですよね。

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ーー今年1年間、自身の強みや弱みを理解した上で、新たに取り組もうと思っていることはありますか?

山下:ヒサが「七つの習慣」という本を読んでいて、それで自分も読もうかなと思ったんですけど…。

西堂:あれはめっちゃいいよ。俺はあの本に答えが全て詰まっていると思っている。あとは自分の可能性を広げるために、一緒に語学をやろうぜ!

山下:そうだね(笑)。

ーーサッカー面ではどうですか?

山下:しっかりと身体を作って、守備の力はもっと付けたい。フィジカルの部分を自分の強みにできれば、選手としてももう一段階上のステップに進めると思う。そこは向き合っていきたいかな。

西堂:メンタルの部分なんですかね。でも、自分でやるしかないんだよな。他の人に言われても変わらないし、やらないと思う。自分の中から変わらないといけないのかな。メンタルの部分は、自分で1年間考え続けるしかないと思います。そこが改善すれば、守備の意識にも繋がってくると思うから。


ーー去年1年間試合に出ていて”スーパールーキー”と書かれたこともありましたが、下級生として早稲田のエンブレムを背負うことに対して気負うことはありましたか?

西堂:全然気負わなかったですね。

山下:逆に重みすら感じてない。

西堂:早稲田のエンブレムの重みを理解していなかった。

山下:まだ理解できていない。

西堂:部員の想いを背負っていることはもちろんあるんですけど、それで気負ったりすることはないですね。

山下:自分もそうですね。

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ーー自分がア式に来た理由や、部内での自身の存在意義を見つけられそうな実感はありますか?

西堂:今のところ、全然見つかる気がしないですね。ア式である必要がないんですよね、今の僕たちの活動量からしたら。

山下:確かにそうだね。

西堂:ア式の特徴の1つでもある社会貢献活動をやってみるのもありだと思う。だけど、他の大学との違いを見つけられていない。あるのかどうか、自分が知らないだけなのか。違いが分からないから、ア式である必要がないんですよね。

ーーまだ「早稲田に来て良かった」とは思えていない、ということでしょうか?

山下:そうですね。

西堂:確かにそうだね。でも、引退する時に「ア式で何かを培った」と明確に言えるようにはなりたいですね。

山下:自主性にかなり重きを置くア式のスタイルに戸惑うことはあったけど、そこを強みにできるかどうかだよね。「こういう活動をしているから、今の俺らがあるんだよ」っていうものが見えてくれば。

西堂:まだ見えていないよね。



○飛躍の1年へ

ーー卒業後の進路を見据えると、今年はとても大事な1年になると思います。そこで、今シーズンはどのようなシーズンにしたいですか? どのようにチームに貢献していきますか?

山下:チームにとって必要不可欠な選手になる。去年も試合には出ていたけど、今年はもっと圧倒的な存在になりたい。あとは、選抜に選ばれてDENSO CUPに出たいですね。

西堂:そうだね。DENSOは目指したい。

山下:そのためにも、まずは関東リーグで結果を出さないと。

西堂:関東リーグに出るためには安定したパフォーマンスを発揮しないといけない。そのためにも、精神面を成熟させなきゃいけない。それが全てに繋がってくると思います。


ーー個人成績の部分はどうですか?

山下:ゴールとアシストにはそんなにこだわりがなくて。ボランチでゴールを取れる選手は怖いと思うけど、そんなに自分が取りたいとは思わないかな(笑)。味方に取らせることができれば。

西堂:僕は今の立ち位置的にも、そんなことを言える立場にないんですよね。去年だったら「5アシストしたい」とか言えていたのかもしれないけど、まずは試合は出られるようになるところからですかね。そこは謙虚にいきます。

山下:まずは試合に出ないとね。試合に出ないと始まらないから、まずは試合に出ること。

ーー実際に試合に出たら、どうやってチームに貢献しますか?

西堂:アタッカーなので、もちろん結果には拘りたいです。最低限、アシストはしたい。

山下:個人的な話ではないけど、シンプルに勝ちたい。自分が出て、勝つために頑張りたいです。


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個人的な見解ではありますが、”2年生の成長が今シーズンの早稲田の成長”だと言い切れるくらい新2年生には注目していますし、彼らの実力を鑑みても、今年は”2年生のチーム”にならないといけないと思っています。しかし、ア式の組織としての難しさに直面し、どこかモヤモヤした感情を抱えたままプレーをしていて殻を破り切れていない印象があります。
今回取り上げた2人から、このインタビューを通してモヤモヤを全て出し切れたとは思っていません。2人が正解を導き出すきっかけにでもなってくれれば満足です。それでも、大学卒業時に「高校3年生の自分を超えた」「大学サッカーの世界に飛び込んで良かった」と胸を張って言えるように、勝負の2年目を楽しんでほしいと思います。

(インタビュー:林 隆生)

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西堂久俊(にしどうひさとし)
学年:新2年
学部:スポーツ科学部
前所属チーム:市立船橋高校
山下雄大(やましたゆうだい)
学年:新2年
学部:スポーツ科学部
前所属チーム:柏レイソルU-18(日本体育大学柏高校)

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